【日本100名城・春日山城(新潟)】山まるごと城にしちゃった!上杉謙信の巨大すぎる居城

越後の武将といえば、上杉謙信! 謙信の居城は、新潟県にある春日山城です。全国の山城のなかでもトップクラスの広さを誇る春日山城には、謙信が信仰した仏神や、養子や家臣の屋敷跡などかつての面影を残す遺構があります。謙信が生まれ過ごした春日山城は一体どのような城なのでしょうか。

どこから攻める? 見どころ満載の春日山城

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春日山城の登り口にある看板を撮影したもの
 
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手の指す先には三ノ丸や二の丸、山頂には本丸が見える。平成28年(2016)に発生した土砂崩れのため一部立ち入り禁止だ

南北朝時代、越後の守護・上杉家が築城したと伝わる春日山城。15世紀には、越後の覇者・上杉謙信の本拠地として今の姿に改修されました。南に頸城(くびき)平野を一望する標高182mの鉢ヶ峰に築かれた春日山城は、山全体にたくさんの曲輪が配置され、約2km四方にも及ぶその城域の広さに圧倒されます。

城主・上杉家も色々あったのです…!

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春日山城にある上杉謙信の銅像

上杉謙信は、越後守護代・長尾為景の末っ子として春日山城で誕生しました。14歳で元服した時の名前は長尾景虎。31歳の時に関東管領・上杉氏の家督と職を相続し、上杉政虎(同じ年に輝虎へと改める)を名乗ります。さらに名を改めたのは出家した40歳の頃。乱世を駆抜けた「謙信」公が生まれたのです。

天正6年(1578)に謙信が亡くなると、2人の養子の間で後継者争いが勃発しました。一人は長尾政景の子で、謙信の甥にあたる上杉景勝。もう一人はイケメン武将だったという北条氏康の子の上杉三郎景虎です。景勝や三郎景虎の名前は春日山城内の曲輪名としても残されています。実際にそこに屋敷をかまえていたかはわかりませんが「もしかしたらココに彼らの暮らしがあったのかも」と感じるだけで、心にグッとくるものがありますね。

この景勝・三郎景虎の家督争いを「御館の乱」といい、三郎景虎が鮫ヶ尾城にて自害したことで、景勝勝利で決着がつきました。

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いざ登城!春日山神社側から登る謙信の信仰ルート

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直江屋敷跡

春日山神社をスタートし、千貫門(せんがんもん)や堀切を通過すると直江屋敷跡にでます。直江家は、代々上杉家に仕えた重臣! なかでも、上杉景勝の代で家老となり大河ドラマ「天地人」で主人公だった直江兼続が有名です。

屋敷跡は本丸よりも北に位置するため風が直撃します。特に晩秋や冬季は北風が身にしみるほど痛く感じ、本当にこんな風の強い山頂部に暮らしていたのかな…?と、疑問に感じるような立地です。

 
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毘沙門堂のある曲輪の切岸(きりぎし)。土塁を築く必要がないくらい急な斜面だ!
 
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毘沙門堂。上杉家の国替えと共に移ったが、幕末に火災被害にあう。昭和5年(1930)に修復がおこなわれ、その際に作られたご分身が春日山城内に奉案された。ご分身の体内には、ご尊像の欠け損じが収められている

直江屋敷を進むとお花畑曲輪にでます。その上が謙信の信仰がうかがえる城の中枢エリアです。まず最初に出会うのは「毘沙門天(びしゃもんてん)」。尊像が祀られている毘沙門堂がおかれています。武神・毘沙門天は、悪魔を降ろす神。謙信は自身や自身の軍を降魔の軍とみなして生涯で70以上もの戦をこなしてきました。上杉家専用のお堂を、本丸のすぐ下の曲輪に設けていることからも信仰の強さがうかがえます。

毘沙門堂を抜けると、不識院、諏訪堂、護摩堂といった信仰エリアを抜けていよいよ本丸に到着です!

銅像側から登る最短本丸到着ルート

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三の丸。米蔵を守るように土塁が囲われていた。中央には御成街道が通り、街道を挟んで三郎景虎の屋敷があった

謙信公の銅像や売店のある道を進んでいくと三の丸にでます。三の丸にはかつて、米蔵と三郎景虎の屋敷がありました。春日山城の曲輪は多くが土塁で囲まれていないのが特徴ですが、米蔵の部分は立派な土塁を見ることができます。
 
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二の丸は本丸を帯状に囲むように築かれている

二の丸では、井戸の遺構が確認できます。上越市文化行政課で所有する古絵図(年不詳)によると「二段目」や「台所」といった文字が記されているため、もしかしたらここで侍女たちが調理していたのかもしれないと妄想に花が咲きますね! また、春日山城の歴史を見守ってきた“生き証人”の松は樹齢500年にもなり、二の丸の南に植わっています。

春日山城の本丸に到着!

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本丸は長さ36m、幅24mとそれほど広くないが、眺めが抜群に素晴らしい

いよいよ春日山城の最頂部に到着です! 本丸は、堀切によって2つの区画に分断されています。南の曲輪は天守台と伝わりますが、天守の存在はなかったであろうと考えられています。

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本丸では頸城平野や直江津、日本海が一望できる絶景が待っています。この景色を見られただけでも、大満足! この地域・環境が戦国時代最強の武将と称される上杉謙信をつくりあげたのですね。

城内を走る御成街道と大井戸

広大な春日山城には見るべきポイントもたくさん! 本丸の南西には、謙信の跡目を相続した景勝の屋敷もあり、その下には家臣・柿崎景家の屋敷……さらにその下には段々と曲輪が設けられ屋敷跡が続きます。

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左の曲輪にあるのが景勝屋敷跡、中央が鐘楼、右が大井戸のある曲輪になる。その下を通る道が御成街道だ

城は街道を城内に取り入れて築かれる例が多いですが、戦国時代の山城の中枢部付近を通過するとなると珍しいような気もします。春日山城内には御成街道が通っていて、謙信と交流のあった関白・近衛前嗣(さきつぐ)が通ったことが由来です。街道は、大手門から南三の丸を抜け、景勝屋敷の下を通過して二の丸、三の丸へと走っています。

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越後の自然の中で「サイフォンの原理」が働いているため、大井戸の水は山の上でも枯渇することがない

本丸の西の曲輪には、春日山城随一の大きさ! 直径10mの大井戸が残っています。しかも、標高150mの場所にあるにも関わらず今もなお水が湧き出ているのです。戦の時の水の確保は最重要事項! とくに籠城戦では、大井戸の存在は力みなぎる存在だったでしょうね。

見どころはまだまだ!2020年3月までの企画展も

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「監物堀」が一部復元された場所は春日山城史跡広場として整備されている。隣接する「ものがたり館」もオススメだ

慶長3年(1598)に上杉家が会津へ転封となると、代わりに豊臣家の家臣・堀秀治(ほりひではる)が入りました。春日山城の麓には家臣たちの屋敷が置かれ、城の一番外側の防御ラインとして約1.2kmにも及ぶ監物堀(けんもつぼり)が築かれました。現在は、一部復元した姿を見ることができますが、山城で総構(そうがまえ)がある例はとても珍しいです。

昭和55年(1980)の発掘調査でわかった土塁の断面には、基底部に御館の乱で焼けた跡と推測できる焼土層が見られ、その上に土塁が積まれていたことがわかりました。しかし、秀治は春日山城入城すぐとなる2年後には福島城の築城に着手していることから、秀治による大規模な普請は考えにくいという説もあるようです。では、一体誰が監物堀を築いたのか気になりますが、真相は過去の中。わからないことがあるのも、歴史の面白いところです!

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上越市埋蔵文化財センターは日本100名城スタンプ設置場所でもある

春日山城を訪れた際には上越市埋蔵文化財センターにも立ち寄ってみてください。春日山城のある頸城地区の遺跡からでた出土品や、縄文〜江戸時代の人々の交流や暮らしを紐解く展示が並んでいます。

また、2019年4月1日~2020年3月31日までの一年間は、企画展「越後上越謙信公と春日山城展・戦国時代と今をつなぐもの」を開催中です。春日山城を中心に謙信の生涯を紹介。タッチパネルやVRを使ったわかりやすい展示が面白いですよ。そして、ここは越後上越 上杉おもてなし武将隊の本陣でもあります。400年以上の時を越えて蘇った彼らにもぜひ会いにきてください!

春日山城を歩く時の服装や時期

春日山城のある上越市は、冬季は雪に閉ざされる地域です。積雪時の訪問はとても危険! 安全が確保できる天候の時に訪問してくださいね。服装は、山登りに最適なトレッキングシューズやスニーカーを。散策時間は、全体を見学すると丸1日。三の丸〜本丸周辺の中枢部だと2〜3時間をみておくとよいですよ。


<基本情報>
住所:新潟県上越市大字中屋敷ほか
電話番号:025-545-9269(上越市教育委員会文化行政課)
アクセス:えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン「春日山駅」より徒歩40分。えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン「直江津駅」より頸城バス春日山・佐内線に乗車、「中屋敷」バス停下車徒歩20分、または「春日山荘前」バス停下車徒歩15分

・上越市埋蔵文化財センター
住所:新潟県上越市春日山町1丁目2-8
電話番号:025-521-6280
開館時間:9:00〜17:00(最終入館は16:30まで)
休館日:火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
アクセス:えちごトキめき鉄道「春日山駅」より徒歩20分。または、えちごトキめき鉄道「直江津駅」より頸城バス春日山・佐内線に乗車「春日山荘前」バス停下車徒歩15分



いなもとかおり
 執筆/いなもと かおり
 お城マニア&観光ライター
 30歳になる城マニア。國學院大學文学部史学科古代史専攻卒。19歳の時に、会津若松城に一目惚れしてから城の虜となる。訪城数は500ほど。国内旅行業務取扱管理者、日本城郭検定1級、温泉ソムリエ、夜景鑑賞士2級の資格をもつ。城めぐりの楽しみ方を伝えるべく、テレビやラジオにも出演中。

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