2019年10月5日~14日は「熊本城大天守外観復旧記念週間」
2016年4月に起こった熊本地震。熊本城復興を象徴するのは何といっても天守です。とりわけ白と黒が鮮やかな大天守は、空気が澄んだ冬に一層まばゆく存在感を示しています。
■2019年1月撮影 復旧が進み、堂々とした姿を取り戻しつつある大小天守
復旧が進み、堂々とした姿を取り戻しつつある大小天守
大天守の石垣はすでに約790個の石垣が積みなおされ、復旧が完了しています。前回取材時(2018年10月上旬)には鉄骨で覆われていた石垣や1階部分が姿を現し、足場も解体されています。小天守も今年1月から石垣復旧工事が始まっています。
■2018年10月上旬撮影 上層部の工事用足場が解体された大天守と、足場が組まれた小天守
■2018年4月上旬撮影 まだ大天守には鯱が載っていない
大天守の外観復旧に伴い、2019年10月5日からの大天守外観復旧に伴い、日曜・祝日限定で二の丸エリアや広場から天守閣前広場までの一部のエリアなどが公開されます(公開時間9~17時 天守閣前広場まで)。さらに、10月5日~14日には「熊本城大天守外観復旧記念週間」として、平日にも公開予定(公開時間13~17時 平左衛門丸エリアまで)となっています。2020年1月以降は日曜・祝日限定公開されることになっています。
「熊本城復旧基本計画」に基づいて最優先される熊本城天守の復旧
今年10月には大天守の外観が特別公開されるように、熊本城大小天守の復旧が最優先に進められています。というのも、2018年3月に策定された「熊本城復旧基本計画」に基づいて復旧がおこなわれており、計画の中に「復興のシンボル『天守閣』の早期復旧」という項目があるためです。
西南戦争直前に熊本城大小天守は焼失。二の丸広場には昭和35年の再建工事中の写真が掲示されている
「熊本城復旧基本計画」の中には、「復興のシンボル『天守閣』の早期復旧」以外にも、「100年先を見据えた復元の礎づくり」という項目もあります。熊本城は明治10年(1877)の西南戦争開戦直前に焼失した大小天守と本丸御殿のほか、多くの建物が陸軍による解体などで失われています。また、明治22年(1889)に起きた金峰山(きんぽうざん)地震でも熊本城は大きな被害を受けています。現在進められている復旧工事は、「熊本地震の直前」に戻す中で、復旧の機会を契機とした熊本城の更なる調査研究に取り組んでいます。
熊本城の復旧過程を分かりやすく解説してくれる頼もしいガイド
加藤神社では大小天守を前にガイドさんの熱のこもった説明が飛び交っている
大小天守の復旧が進んでいる様子は見る者を勇気づけてくれます。さらに、復旧の経緯や歴史の解説を聞きながら、ますます熊本城にのめり込んでいく見学者の姿が目立つのも熊本城ならではです。日々変化する熊本城の姿を詳しく解説しながら案内してくれるのが、「くまもとよかとこ案内人の会」です。
熊本地震発生の2ヵ月後から、二の丸広場から加藤清正を祀る加藤神社を結ぶコースを設定し、無料ガイドを開始。現在の熊本城の様子を、熊本地震前と比較して詳しく案内してくれます。ガイドさんの個性を生かした案内が魅力です。
四季折々の花や祭事も楽しみな加藤神社。取材時には節分用のお豆が並んでいた
前述した「熊本城復旧基本計画」の中には「復旧過程の段階的公開と活用」という項目もあります。地震後、立入可能な区域に「復興見学ルート」と呼ばれる見学順路が設定されており、この復興見学コースを中心に「くまもとよかとこ案内人の会」のガイドさんによる案内があります。
二の丸御門跡の立ち入り規制解除
2018年11月より通れるようになった二の丸御門跡。通路には安全対策のために、ぐり石(石垣の裏側に詰められた小さい石)を詰めたかごが設置されている
大小天守と並行して様々な箇所で復旧が進められています。その中でも特に注目は、2018年11月23日に立ち入り規制が解除された二の丸御門跡。二の丸広場などを含む「二の丸地区」と、熊本博物館や旧細川刑部邸などが立地する「三の丸地区」を結ぶルートが復旧しています。
ルートの復旧までには石垣の崩落状況の記録や石材回収、残存した石垣の保全措置が行われました。現場にはその様子の写真が備え付けられています。崩れた膨大な数の石材が、二の丸広場の北側に所せましと並ぶ光景は圧巻です。
崩落した石材ひとつひとつにつけられた番号。二の丸御門跡だけでも約3000個の石材を回収して保管している
熊本城東側に並ぶ櫓群(国指定重要文化財)の復旧状況
北十八間櫓(きたじゅうはちけんやぐら)や東十八間櫓(ひがしじゅうはちけんやぐら)など、大小天守東側にそびえる高石垣の櫓群(国指定重要文化財)のうち、平櫓(ひらやぐら)に構台が組まれ、復旧工事に向けた準備が進められていました。
石垣倒壊防止用の構台が組まれた平櫓。熊本地震によって土台石垣が膨らみ、建物も損傷した
「復興城主」による寄付は20億円を突破
2019年に入り、熊本地震で被災した熊本城の復旧費用に充てる「復興城主」制度による寄付が、20億円を突破したというニュースが駆けめぐりました。「復興城主」制度は、1万円以上を寄付すると「城主手形」と「城主証」が発行され、さらに「熊本城ミュージアムわくわく座」2階のデジタル芳名板に登録される制度です。国内はもちろん海外の方もたくさん復興城主になられているそうです。
熊本城の現状を目の当たりにすると、復興城主への想いも強くなる
復興城主になるには、専用振込用紙による振込み、熊本城総合事務所または「桜の馬場 城彩苑」内「わくわく座」での現金申込み、そしてふるさと納税サイトを通じたクレジット決済の3パターンがあります。
詳細は、熊本城公式ホームページ内
「復興城主」をご参照ください。
2018年12月22~24日に開催された「お城EXPO2018」でも、熊本城復興支援コーナーでは、熊本城の復興に思いを寄せる城ファンの姿がたくさん見かけられ、熊本城に対する強い想いが感じられました。
「お城EXPO2018」に設けられた熊本城復興支援コーナーには、多くの城ファンが足を運んだ
以上、熊本城の復旧状況についてご紹介させていただきました。今年10月5日~14日に予定されている「熊本城大天守外観復旧記念週間」が待ち遠しいですね。3月中~下旬には「春のお城まつり」も予定されています。今年4月で熊本地震から3年を迎えますが、この3年間で熊本城の復旧は着々と進んでいます。
日々復旧する熊本城の姿を毎日のように見届けている「くまもとよかとこ案内人の会」のガイドを聞けば、熊本城の歴史を知るだけでなく、熊本市民に愛されている理由が伝わってきます。熊本城を散策される際には、お気軽に声をかけてみてはいかがでしょうか。
「くまもとよかとこ案内人の会」と同様、熊本城の復興を見届けながら日々活動している「熊本城おもてなし武将隊」のステージも必見。桜の馬場 城彩苑の親水空間にて、毎日11時30分と14時30分からの2回、約15分間のおもてなし演舞(殺陣をまじえたパフォーマンス)が行われます。「熊本城おもてなし武将隊」について、詳しくは
第5回 夏限定でガイドも!?「熊本城おもてなし武将隊」をご覧ください。
また、2019年3月9日(土) 、10日(日)には、「熊本城おもてなし武将隊」を筆頭に、全国のおもてなし武将隊が集結する、「戦国パーク2019」が開催されますので、この機会を見逃す手はないですよ。
(2019年1月17日取材)
<基本情報>
●くまもとよかとこ案内人の会
住所:熊本県熊本市中央区二の丸1-1-1(桜の馬場 城彩苑 総合観光事務所)
電話番号:096-356-2333 ※対応時間9~17時(土・日曜、祝日は~16時)
受付時間:9~15時
料金:無料(予約不可)※時間指定でガイド希望の場合は、現地までの交通費2000円が必要(黄シャツ着用)。60分、90分、120分のコースがあり、3日前までに公式ホームページより申込み
<基本情報>
●戦国パーク2019
開催日:2019年3月9日(土) 10日(日)10~17時
会場:熊本城 二の丸芝生広場
URL:http://kumamoto-bushoutai.com/sp/