雲海の城を見に行こう!発生条件や必要な準備は?

「天空の城」と聞いて、雲海に浮かぶお城の姿を思い浮かべる方も多いかと思いますが、実はあの幻想的な姿はごく限られたシーズン・条件でしか見られないことをご存知でしょうか? 今回は、秋にベストシーズンを迎える「雲海の城」を見に行く前に知っておきたい準備や持ち物を、竹田城(兵庫県)をはじめ代表的な城の美麗な雲海写真とともに紹介します。

長かった夏が終わり、もうすぐ秋本番。涼しく、さわやかな気候が多いこの時期はお城めぐりのベストシーズンです。紅葉と城の組み合わせを楽しみに、今から予定を立てている人も多いのではないでしょうか?

赤や黄色に染まった紅葉もいいですが、これからの時期の城の楽しみ方はまだまだあります。その一つが「雲海」。一面に広がる雲海に浮かぶ城は、城ファンなら一度は見たい幻想的な絶景です。

しかし、雲海はいつでも見られるわけではなく、見に行くにはそれなりの準備も必要です。今年こそ雲海の城を見に行きたい!という人のための、準備の方法や代表的な雲海の城のフォトスポットを紹介します。

竹田城、立雲峡、展望台
立雲峡の第一展望台から撮影した竹田城

秋がベストシーズン!でも見られるかは運しだい

そもそも、雲海とは一体どうやってできるのでしょう? 雲海の正体は、山間部の空気中の水分が瞬間冷却され、発生した霧が一面に広がったものです。

まず、放射冷却によって地面が冷やされ、あわせて地面付近の水蒸気を含んだ空気が冷えます。空気の温度が低下することで水分が飽和状態を通り越し、霧になります。この時、風が強いと空気が流れていってしまうので、無風状態に近い時ほど発生しやすくなります。

具体的には、
1 日中と夜の気温差が10度以上と大きいこと
2 大気が安定し、風が少ないこと
3 湿度が高いこと
4 良く晴れていること
以上の条件を満たしていると、発生率が高くなります。

城によっても前後しますが、気象条件が揃いやすいのは9月下旬から12月上旬。4月ごろまで見られる城もありますが、冬は積雪により危険なことも多く、ベストシーズンはやはり秋だといえそうです。時間帯は夜明けから8〜9時頃までがピークになります。

雲海を見るためには、まだ暗いうちから山を登っていく必要があります。アクシデントがないように、しっかり準備をして行くことが大切です。

まず、霧が発生すると視界が悪くなるうえ、シーズン中は道が渋滞したり、駐車場が満車になる可能性があります。肌寒い季節の夜明け前、一分でも長く布団で寝ていたいところですが、安全のため必ず時間に余裕を持って出発しましょう。

タクシーを利用する場合は、必ず前日までに予約をしておきましょう。積雪時には道路状況を確認することも大切です。また、撮影スポットにトイレがない場合もあるので、ホテルや駐車場などで必ず済ませておきましょう。

駐車場から撮影スポットまでは暗く、視界の悪い山道を歩くので、懐中電灯やヘッドライトは必須。付近に電灯がない場合もあるので、忘れずに持っていきましょう。

服装はふだん山城に行くのと同様、歩きやすいトレッキングシューズに長袖・長ズボンで。ただし、雲海は水蒸気の固まりなので、歩いていると全身が濡れてくることに注意。雨合羽などのレインウェアを着用して、撮影をする場合はカメラの防水対策も念入りにしておきましょう。朝方の冷え込んだ野外で過ごすため、防寒対策もしっかりと準備することが大切です。

「天空の城」竹田城は、鑑賞スポットも豊富

「雲海の城」の代名詞と言えば、兵庫県の竹田城。「天空の城」としてテレビで取り上げられ、一躍有名になりました。

中世に築かれた城を戦国時代に豊臣秀吉が押さえ、天正13年(1585)に赤松広英が総石垣の近世城郭に改修しました。山頂に石垣が連なる様子は「日本のマチュピチュ」とも評され、異国的な情緒を漂わせています。

立雲峡、竹田城、石垣、
雲海がない時に立雲峡から見た竹田城。切り立った山上に石垣が連なっていることがわかり、これだけでも圧巻の光景

竹田城の雲海が見られるスポットは、全部で3つ。1つ目は、竹田城の東南に位置する朝来山の中腹にある「立雲峡」。複数ある展望台のうち最高所の第一展望台からは城の全景が撮影できます。

第一展望台は駐車場から徒歩で40〜60分ほどかかります。暗い霧の中を歩くことになるので、それなりの準備は必須。ただ、それだけの手間をかけても行く価値がある絶景スポットです。

竹田城、二の丸、立雲峡
竹田城二の丸から見た眺望。正面に城下町があり、右側の山に立雲峡がある

2つ目は、竹田城を挟んで朝来山と反対側にある「藤和峠」。明け方の時間は逆光のため、石垣のシルエットが霧の中に浮かび上がる神秘的な光景が見られます。

鑑賞スポットのすぐそばに数台の駐車スペースがあり、車から降りてすぐに鑑賞できます。体力に自信がない人は、ここから見るのもおすすめです。

竹田城、藤和峠、立雲峡
藤和峠から撮影した竹田城。逆光の中に浮かび上がるシルエットは、立雲峡から見るのとはまた違った雰囲気

藤和峠、駐車場
藤和峠の駐車場。4〜5台ほどが駐車できるスペースがある

3つ目は「竹田城天守台」。城内から雲海を見る方法です。累々と連なる石垣と、その先に雲海が広がる南千畳方面がベストアングル。他の2か所では望遠カメラが必須ですが、ここではスマートフォンや普通のカメラでも綺麗に雲海の城を撮影できるのもポイントです。

南千畳方面、竹田城、雲海
城内最高所の天守台に登れば、360度を雲海に囲まれる。写真は南千畳方面を見たところ。

[雲海ベストシーズン]9月〜11月
[アクセス]
立雲峡:JR竹田駅から車で約10分で駐車場。第一展望台へはそこから徒歩約60分
藤和峠:JR竹田駅から車で約15分。付近に数台の駐車スペースあり
竹田城天守台:JR竹田駅から徒歩約40分で城入口(表米神社登山道)。タクシー利用(車は不可)の場合、JR竹田駅からタクシーで約10分で中腹駐車場、そこから徒歩約20分で城入口

雲海に浮かぶ現存天守を見る備中松山城

備中松山城、紅葉、雲海
備中松山城は紅葉の名所としても知られる。現存天守、雲海、紅葉の共演は、ここでしか見られない

現存12天守唯一の山城である備中松山城(岡山県)も、雲海が見られるお城です。天和3年(1683)に藩主・水谷勝宗が修築した現存天守は、小ぶりながら大きな唐破風が格式高い趣き。天守が雲海に浮かぶ姿は、竹田城とはまた違う幻想的な雰囲気を漂わせています。

備中松山城、展望台
雲海が発生していなくても、展望台からは山の上にそびえ立つ備中松山城の姿を見ることができる

備中松山城、天守、五の平櫓、
備中松山城には山城唯一の現存天守(奥)が残る。手前の五の平櫓をはじめ復元建造物も多く、かつての城の姿がよみがえっている

雲海の鑑賞スポットは、標高697mの大松山展望台。2基の展望デッキがありますが、どちらも大きくないため混雑時は譲り合って使いましょう。展望台付近には駐車場やトイレもあります。

12月から2月頃までは雪が積もることがあるため、運転には細心の注意を。雲海のシーズンにはJR備中高梁駅前から「天空の山城 備中松山城観光乗合雲海タクシー」も運行されるので、車がない人、運転に自信がない人はこちらを利用できます。

[雲海ベストシーズン]10月下旬〜12月上旬
[アクセス]
大松山展望台:JR備中高梁駅から車で約20分。付近に数台の駐車スペースあり。「天空の山城 備中松山城観光乗合雲海タクシー」は2018年10月1日から2019年3月31日まで運行。早朝2便、前日17時までに要予約

一年に10日しか見られないレアな雲海の城、越前大野城

越前大野城、犬山、南出丸下
犬山の南出丸下から撮影した越前大野城。雲海が街を覆っていく様子が幻想的なので、ぜひともあわせて鑑賞したい

越前大野城、天守、資料館、野面積み、天守台
越前大野城の復興天守は現在資料館として使われている。野面積みの天守台は現存のもの。

天正4年(1576)に金森長近が標高249mの亀山に築城した越前大野城(福井県)も、雲海で有名な城の一つです。JR越前大野城から徒歩30分ほどの好立地にあり、亀山のすぐ下が城下町。雲海の発生時は、次第に町並みが雲海に隠れていき、まるで異世界に迷い込んだような幻想的な時間を過ごすことができます。

さらに越前大野城の価値を高めているのが、その雲海発生率の低さ。竹田城や備中松山城が月に10回ほど発生するのに対し、越前大野城では一年に10回程度しか見ることができません。確率が低い分、過度な期待は禁物ですが、見られた時の喜びは大きいでしょう。

鑑賞・撮影スポットは、城から1kmほど西へ行った犬山にあります。3つのルートがありますが、どのルートも山道を徒歩で登ることになります。見通しが悪い中、急斜面や幅の狭い道を20〜30分ほど歩くことになるため、万全の装備で行きたいところです。

大野は豪雪地帯で、雲海シーズンは雪に覆われてルートが見えなくなることも。さらに、クマやイノシシに遭遇する場合もあります。身の危険を感じたら、すぐに引き返す勇気を持つことも大切です。

一番行きやすいルートは「天空への小径」と名付けられた鍬掛コース。それでも道幅の狭い山道を20分ほど歩くことになるので、無理はしないようにしてくださいね。

越前大野城、大野盆地、雲海
越前大野城は四方を山に囲まれた大野盆地の中心部に位置する。盆地内で突出して高い越前大野城が、雲海発生時に顔を出す仕組みだ

[雲海ベストシーズン]10月〜4月
[アクセス]
犬山 南出丸下:JR越前大野駅から車で約10分で鍬掛コース入口。そこから徒歩約20分

行けば必ず見られるわけではないけれど、だからこそ貴重な「雲海の城」。今秋はぜひ、しっかり準備して挑戦してみてはいかがでしょうか。

撮影スポットをチェック!


執筆/かみゆ歴史編集部(小沼理)
書籍や雑誌、ウェブ媒体の編集・執筆・制作を行う歴史コンテンツメーカー。日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなどを中心に、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける。城関連の最近の編集制作物に、『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』『完全詳解 山城ガイド』(ともに学研プラス)、『日本の山城100名城』『山城を歩く』(ともに洋泉社)、『カラー図解 城の攻め方・つくり方』(宝島社)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、「廃城をゆく」シリーズ(イカロス出版)など。

関連書籍・商品など