2018/10/11
【城下町ヒストリー・柳川編】柳川城に代わり立花家の暮らしが残る柳川藩主立花邸 御花
城下町柳川のシンボルといえば「柳川藩主立花邸 御花」。江戸時代に柳川を治めていた大名・立花家の邸宅、立花家史料館には豊富な収蔵品が展示されています。歴代藩主たちが、家族と癒しのひと時を過ごした名勝。心静かに見事な庭園や洋館を眺めてみてはいかがでしょうか。
西洋館2階の「控室(小部屋)」
「柳川藩主立花邸 御花」でぜひ見学したい4つのポイント
西洋館は木造2階建ての洋風建築
「柳川藩主立花邸 御花」は、元文3年(1738)、柳川藩5代藩主・立花貞俶(さだよし)が設けた御屋敷。柳川城の南西隅に二ノ丸座敷を移築、奥の機能が移され「御花畑」と呼ばれるようになりました。終戦後、旧華族たちが困窮する中、当主であった立花和雄と夫人文子は、旧伯爵邸を利用して「料亭旅館 御花」を営むことになりました。手探りの状態から始まった料亭業ですが、柳川の観光拠点として、また、大名文化を伝える場として徐々に親しまれるようになりました。
みどころは主に、立花家の迎賓館として建てられた「西洋館」、西洋館に続く日本建築の「大広間」、常緑の松の緑が美しい池庭「松濤園」、そして立花家に伝わる史料を展示する「立花家史料館」の4カ所です。宿泊施設や結婚式場も併設され、敷地全体が「立花氏庭園」として、国の名勝に指定されています。
立花家史料館で柳川城主の暮らしを知る!
伊予札縫延栗色革包仏丸胴具足(左手前)など藩主の生活を彷彿とさせる収蔵品が並ぶ
まずは、柳川城に思いを馳せるために立花家史料館へ。武具甲冑など約5000点もの大名道具や、近代伯爵家資料などが、収蔵されています。特に目を見張るのが、柳川藩初代藩主・立花宗茂が着用した甲冑「伊予札縫延栗色革包仏丸胴具足(いよざねぬいのべくりいろかわつつみほとけまるどうぐそく)」。胴の栗色革、草摺(くさずり)の朱漆といった大胆で華やかな色彩の組み合わせに、立花宗茂の好みを感じとれます。この甲冑の隣に並ぶのは金色の兜。西洋甲冑の影響を受けて作られたとされる「金箔押桃形兜(きんぱくおしももなりかぶと)」で、桃山時代から江戸時代初期まで実際に使われていたそうです。
明治時代の流行を取り入れた大広間と大庭園
畳を取り除くと、能舞台として使えるようになっている大広間(画像:柳川藩主立花邸 御花)
立花家史料館で柳川城主立花家について予習した後は立花伯爵邸へ。柳川藩主立花邸 御花・企画広報の北原もとさんと合流し、館内を詳しくご案内していただきました。「大広間は当時の宮家、富豪たちの間で流行った“西洋館の正面玄関に続く日本建築の大広間”という形式を採用しています。柳川藩主立花邸 御花の中で、私が一番のお気に入りの場所です。和モダンの披露宴会場としても人気ですよ」(北原さん)。
大広間と居間に面した「松濤園」は明治に入り整えられた近代庭園
「大広間からは日本庭園・松濤園の景色も圧巻です。松濤園は明治43年(1910)に14代・立花寛治(ともはる)伯爵によって整えられ、クロマツに囲まれた池庭であることから名付けられました。クロマツの数は約280本にものぼります。沓脱石(くつぬぎいし)の巨石は、かつての柳川城天守閣の台石を移したといわれています。冬場にはたくさんの野鴨が群れ遊ぶ、見事な景観をご覧いただけますよ」(北原さん)。
現在も200以上残る金箔押桃形兜
大広間の入口に戻りふと頭上に目をやると見覚えのある兜。立花家史料館で目にした「金箔押桃形兜」が多数展示されていますのでお見逃しなく。
西洋館は撮影スポット&ロケ地としても有名!
西洋館1階では柳川の春の風物詩「さげもん」を背景に記念撮影ができる
最後は大広間から廊下でつながる西洋館へ。立花家の迎賓館として明治43年(1910)に建築、鹿鳴館様式の流れをくむ木造2階建ての建物です。漆喰で真っ白な壁と木製の柱やドア、廊下に広がる赤い絨毯が印象的。装飾の美しい階段を上がると2階には約81㎡もの大広間。天井の中央部には漆喰で装飾が施されています。
西洋館2階に再現されている食卓
「2階には現在もシャンデリアなどの器具が、当時のままに残されています。当時から先駆けて自家発電所を設け、輸入品のシャンデリアや電気器具を使っていました」(北原さん)。
喫煙室として使われていた「控室(小部屋)」は、映画『坂道のアポロン』(2018年 東宝=アスミック・エース)のロケ地としても知られます。
絵図を元に復元された柳川城の模型が受付付近にあるのでお見逃しなく
芸術の秋にぴったり!3日間限定の特別イベントに注目!
柳川では、今年の10月に特別なイベントも企画されています。現在城下町柳川で開催中の「柳川OUTING!」。その一環として10月12日(金)~14日(日)に、御花沿いの掘割周辺で「音楽と映画に酔いしれる3日間 森と水辺のワンダーランド OUTING GARDEN」が開催されます。会場全体をガーデンに見立てた美しい自然と水辺のそばで、音楽や映画、ピクニックを楽しめる3日間限定のアウトドアイベントです。(※2018年のイベントは終了しております。最新の情報は事前にご確認ください)
もうすぐ芸術の秋。立花家の時代に思いを馳せながら、掘割で音楽や映画に親しんでみるのはいかがでしょうか?
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<基本情報>
柳川藩主立花邸 御花
住所:福岡県柳川市新外町1
電話番号:0944-73-2189
営業時間:9~18時(立花家史料館への入館は~17時30分、飲食店は店舗により異なる)
入園料:大人500円(松濤園、大広間、西洋館、立花家史料館共通)
アクセス:西鉄柳川駅から西鉄バス「早津江」方面行きで20分、「御花前」下車、徒歩すぐ
執筆・写真/藪内成基(やぶうちしげき)
奈良県出身。30代の城愛好家。国内旅行業務取扱管理者。出版社にて旅行雑誌『ノジュール』などを編集。退職し九州の城下町に移住。観光PRやガイドの傍ら、「城と暮らし」をテーマに執筆・撮影。『地域人』(大正大学出版会)など。海外含め訪問城は500以上。知識ゼロで楽しめる城の情報発信を目指す。
※歴史的事実や城郭情報などは、各市町村など、自治体や城郭が発信している情報(パンフレット、自治体のWEBサイト等)を参考にしています