訪城数日本一の夫婦ウモ&ちえぞーに聞く城旅のコツ ①お城めぐりのプランニング法

1日に回れるお城の数や、1城見学するのにかかる時間など、初心者には意外と難しい城めぐりのプランニング。そこで、夫婦二人で6000近くの城を訪れている、ウモ&ちえぞーさんに城めぐりのアドバイスをしていただきました!第1回はウモさんが“城好きになったきっかけ”と、“プランニングのコツ”を紹介します!(2018/09/06公開)


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ウモ&ちえぞーはこれまでに訪れた城の歩き方や見どころをWebサイトで紹介している。左はウモのサイト「埋もれた古城」、右がちえぞーの「ちえぞー!城行こまい」

お城好きに火がついたきっかけは『関ヶ原』

皆さんがお城に興味を持ったきっかけは何だろうか。好きな小説を読んで、テレビやネットを見て、本屋でお城の本を見て、あるいは最近はゲームから入る層など、きっかけは様々だと思う。私は司馬遼太郎が亡くなった時に「一冊くらい読んでみよう」と思い『関ヶ原』という本を手にとったのがきっかけだった。そこに出てくるお城や地名を見て、一度現地に足を運んでみたいと思いお城の世界への興味がわいてきた。

当時は今ほどネットも充実していなかったので、本屋の歴史コーナーに行って色々と本を見てみると、思いのほか城跡や古戦場というものが各地に残っているということを知った。経験も知識もまったくない中、どうにか現地に行ってみると、山城というものの険しさに驚いたり、そこに広がる景色にロマンを感じたり、ことのほか感動してしまった。以来、すっかりお城めぐりにハマってしまい、20年間で6000城前後のお城に行った。そして、お城好きが縁で家内と知り合い結婚、夫婦で全国のお城を回って楽しんでいる。今では2人で年間に500城前後訪れている。

ウモ、ちえぞー、津和野城
城めぐりを通じて出会い、現在も夫婦で城めぐりを満喫している。2人で訪れた城は6000城近くにもなる(写真は島根県の津和野城

城めぐりのコツその①まずは参考書を買ってみよう

私たち夫婦は1日あたり10城前後行くことが多い。ときには20城前後行くこともある。もちろんこれを真似をする必要はまったくない。自分のペースで回ればいいのである。

まずはどこのお城に行くか。行きたいお城を見つけるには、ネットの情報が役に立つ。城名や地域名で検索してみると、多くの情報が集まる。その中から有用な情報を選べば良い。最初は自分の住んでいる近場のお城を選んでみるのもおすすめ。

ただしネットは情報量が多すぎて戸惑うこともある。そんな時に役に立つのがガイドブックである。私は最初に『日本の城ポケット図鑑』(西ケ谷恭弘・角川)という本を買い、どこにどんなお城があるのかを覚えた。この本は今も大切に持っている。

最近はお城の本もたくさん出ているが、重宝するのは縄張図が掲載されている本である。縄張図を事前に見ておくと、どれくらいの広さのお城で、どこにどんな遺構があるかをあらかじめ知ることができる。県別に見応えのある城が50城セレクトされた、サンライズ出版の『ベスト50シリーズ』は、全部縄張図が掲載されているので、予習するには大変役立つ。また、イカロス出版の『廃城をゆくシリーズ』は、縄張図や鳥瞰図だけでなく写真も豊富で、読んでいるだけでも楽しい。縄張図をコピーして持ち歩けば、遺構の見どころもしっかり押さえることができるし、遺構を見る目も養われる。

最近は『日本100名城』『続日本100名城など、初心者でも分かりやすいガイドブックが充実しているので、そういった本を参考に行き先を選んでみるのも良いだろう。そのほか、お城めぐりに有用な本としては定番の『日本城郭大系』や、各県の分布調査報告書なども役に立つ。これらの本は一般には入手が難しいので、少し大きめの図書館などで探してみるとよい。

廃城をゆく、愛知の山城、日本の城
ウモおすすめのガイドブックたち。城に行く前の予習はもちろん、当日の案内図としても役立つ

城めぐりのコツその②行きたい城を地図に落とし込んでいく

それでは早速、城めぐりの計画を立ててみよう。私たち夫婦は普段、以下のような手順で城めぐりのプランを立てている。まずは行きたいお城の場所を調べる必要がある。ガイドブックやネットの情報には、登り口や本丸までの所要時間が丁寧に記されているものもあり重宝する。

次に、行きたいお城の位置を地図で確認する。利用する地図は、本になっている地図でもWEB上の地図でも自分の使いやすい方でOK。本になっている地図では、昭文社の『県別マップル』シリーズが等高線も入っていておすすめ。目的の城の場所に赤丸などをつけておくと、あとから探しやすい。WEBであればGoogleマップの「マイマップ機能」などは、行きたい城の場所にピンを立てることができるので、位置関係が分かりやすいし、ナビとしても使える。あとからスマホなどでも見ることができる。この時に山城と平城で色を変えたり、行きたい城の優先順位にあわせて色やマークを変えておいたりするとあとから視認しやすい。いずれにせよ、最初にマーキングする際には、とりあえず行きたい城やその近隣のお城を手当たり次第に地図に落とし込むのがポイントだ。

マップル、
ウモ&ちえぞー愛用の『県別マップル』。地図中に城名と城域が書き込まれており、どの地域にどれだけの城があるかが一目でわかるようになっている(出典 旺文社『県別マップル長野県広域・詳細道路地図』)

Googleマイマップ、アイコン
ウモの「Googleマイマップ」。城の種類ごとにアイコンの色を変えて、どこにどのような城があるかわかりやすくしている(出典 Google Map

城めぐりのコツその③1つの城にかかる所要時間を調べる

次に、実際に行く城を絞り込んでいく。この時に考えなくてはいけないのが、1つの城の見学にどれくらい時間がかかるか、ということである。遺構のない、石碑一本だけの城であれば数分あれば終わるが、広い城や自力で登り降りしなければならない山城などでは、相当時間がかかることを考慮しなければならない。

山城の場合、登城にどれほどの時間がかかるかは比高(山麓から頂上までの標高差)が大きな目安となる。私の場合、おおむね比高100mあたり10〜15分くらいのペースで歩くので、比高200mであれば登り降りでそれぞれ20〜30分くらいは見ておくようにしている。ただしこれは登山道などがしっかり整備されている場合であり、道のないような場所では、およそ倍の時間がかかる。初心者の方はいくつか山城を経験してみて、自分がどれくらいのペースで登り下りできるかを知っておくと良い。山城の場合、一日あたりで歩ける城は4、5城くらいが限界である。私の場合は、1日あたり累計比高800m前後を目安としている。特に山城最適シーズンの秋から春にかけては日が短いので、遅くとも16時くらいには下山できるように行程を組む必要がある。

実際にどれくらい時間をかけて見学するかは、そのお城の広さや地形などにより様々だが、大きな山城などでは2〜3時間かかるケースも珍しくない。事前に縄張図が見られる場合は、どこまで見るか、どれくらい体力を使うかなどをある程度考えて、少し長めに見学時間を予定しておく。とくに尾根が何本ものびている山城では、何度もアップダウンを繰り返すため、時間も体力も多めに必要なことを覚えておこう。平城や平山城などでは、山城ほど体力は使わないが、遺構が広大な範囲に広がっていることも珍しくないので、どれくらいの広さがあるか事前にチェックを。とくに近世城郭は中世城郭と比べ物にならないくらい広い場合が多く、現存建物などがある場合もあるので、見学時間を考慮して計画を立てる。

天空の城、有子山城、比高300m
もう一つの天空の城としてマニアに人気の有子山城(兵庫県)。比高300mの険しい山道を50分ほどかけて登る

こうして、自分がセレクトして地図に落としたお城から、実際に1日で回れそうなお城を選び出し、そこに移動時間などを考慮して大まかな計画を立てていく。初心者は欲張らずに2城程度を無理なく見て回れる行程を組んでみることをおすすめしたい。

次回は実際の計画への落とし方についてご紹介します。

▼「訪城数日本一の夫婦ウモ&ちえぞーに聞く城旅のコツ」つぎの記事はこちら

執筆/ウモ
新潟県出身。Webサイト「埋もれた古城」管理人。城めぐりを趣味としており、ちえぞーさんと一緒に年間約500城(再訪含む)をめぐり、これまでに約6000城に訪城している。主な執筆協力に『図説 茨城の城郭』(国書刊行会)、『廃城をゆく』シリーズ(イカロス出版)、『完全詳解 山城ガイド』(学研)など。

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