【イベントレポート】「第24回 全国山城サミット in 佐野」[後編](栃木県佐野市/唐沢山城)

唐沢山城、全国山城サミット in 佐野
多くの来城者を紅葉が迎えてくれた

特別見学会では普段は見られない境内の石垣を見学

「第24回 全国山城サミット in 佐野」の2日目、今日も青空が広がる晴天となった。2日目の会場は唐沢山城。山頂の駐車場は数に限りがあるため、駅とインターチェンジのそばに特設駐車場が設けられ、城までのシャトルバスが運行された。

朝9時、山域一帯に響きわたる秀郷太鼓の演奏でオープニングを迎えると、城はすぐにお祭り騒ぎとなった。グルメコーナーでは佐野名物の「いもフライ」や「佐野ラーメン」のブースが並び、物販コーナーではゆかりの土産品や地酒が次々と売られていく。イケメン武将隊やゆるキャラの「さのまる」も登場し、あちこちで撮影会が開かれていた。

唐沢山城、全国山城サミット in 佐野、さのまる
特別仕様の足軽スタイルで城のあちこちに登場した「さのまる」。撮影の合図は「い・も・フ・ラ・イ!」

もちろん、主役はお城である。午前中には前日の講演にも出演した千田嘉博先生と宮武正登先生が見どころを案内する、特別見学会が開催。予約者限定のイベントだが、予約はわずか数日で定員に達したという。それでも参加者多数となったため、急遽グループ分けして見学会を行うことになった。

唐沢山城、全国山城サミット in 佐野、高石垣、宮武先生
高石垣を前にその見どころを説明する宮武先生

唐沢山城、全国山城サミット in 佐野、本殿背後、石垣
普段は絶対に入れない本殿背後の石垣を見学。貴重な機会だった

唐沢山城最大の見どころである高石垣からはじまり、二の丸・本丸・武者詰めへと先生方の生の解説を聞きながら、実際の遺構を見ることができるというのはたいへんぜいたくな時間だ。さらに見学会参加者は、普段は立ち入り禁止の唐沢山神社の境内にも入ることができた。神社は本丸に建てられているのだが、境内のため通常は見ることができない本丸石垣と搦手側の虎口を見学することができたのだ。今年の山城サミットのために、主要な曲輪は木々の伐採が行われ、遺構が見やすく整備されていた。唐沢山神社の関係者は「木々が切られて、綺麗な紅葉が見られるようになりました。これも山城サミットのおかげですね」と話す。

唐沢山城、全国山城サミット in 佐野
2日合わせて5000人と予想されていた来城者は、倍の1万人を超えたという

中世の城と近世の城が融合している

この日は二の丸、三の丸、升形にも特設ステージとブースが設置されて、多彩なイベントや子ども向けの体験会などが開かれた。

二の丸の特設ステージでは、郷土芸能やダイアモンド☆ユカイさんのミニライブなどのほかに、千田先生と宮武先生の座談会が開催。座談会の冒頭で、「これは絶景ですねぇ。この場所なら3時間は話せる(笑)」と2人が驚いていたとおり、特設ステージは本丸の虎口や石垣と向かい合う絶好の位置に設置された。参加者は遺構を目の当たりにし、時にペンライトで照射された石垣を確認しながら座談会が進められたのである。

唐沢山城、全国山城サミット in 佐野、トークショー
あふれるほど人が集まった千田先生と宮武先生のトークショー。先生に促されるままに、左の石垣をみたり、背後の鏡石を見たり・・・

唐沢山城、全国山城サミット in 佐野、二の丸、郷土芸能
二の丸の特設会場で行われた地元高校生による郷土芸能

唐沢山城といえば関東の山城では屈指の高石垣が見どころだが、本丸の大手の方向に高石垣と大きな鏡石が設置されている一方で、本丸の裏手にあたる武者詰側は中世から続く土の遺構が残されている。「佐野氏は豊臣政権に従い、最新の築城技術を導入して石垣の山城へと変貌を遂げたが、一方で在来の国衆としての意地と自負があった。その意地と自負が、土の遺構が残されている理由なのではないか」という宮武先生の解説は示唆に富んでいる。唐沢山城が史跡として貴重なのは、土の城から石垣の城へと「変貌」したという点だけではなく、土の城と石垣の城が「融合」しているという点にある。そこにどれほど佐野氏の矜恃が介在したのか——城好きならずとも歴史ロマンが膨らむところであろう。

さて、「全国山城サミット in 佐野」のメイン会場は佐野市文化会館と唐沢山城だったが、市内のさまざまな会場や城跡で催しが行われ、ボランティアによるガイドがされていた。

佐野市内にある阿曽沼城跡(浅沼町)を訪ねてみた。かつては東西約180m、南北約230mの平城だったが、城跡は浅沼八幡宮と住宅地に変わっており、わずか一辺の横堀と土塁が残存しているのみである。ただし、この横堀と土塁が素晴らしい。木々が伐採されている上に、綺麗に草刈りがされている。パネルディスカッションでの昇太師匠の発言ではないが、山城ファンであればこの横堀だけで「悶絶」するほどだ。

浅沼八幡宮、阿曽沼城、全国山城サミット in 佐野
浅沼八幡宮として残る阿曽沼城跡。築城は源平合戦の時代までさかのぼる

阿曽沼城跡、全国山城サミット in 佐野
草刈りされた横堀。このように大切に保存されているというだけで、城ファンには嬉しい

現地でガイドをしてくれたボランティアに話を聞くと、神社の氏子会の面々が定期的に横堀の整備を行っているのだという。さらに説明チラシに掲載されていた家系図を手に、城と土地の歴史をこと細かに説明してくれた。「城を築いた阿曽沼氏は藤原秀郷を始祖とする由緒ある佐野氏の一族。しかも阿曽沼城は『吾妻鏡』にも記されています。それが、この地域の自慢なんですよ!」。山城サミットの2日間で、阿曽沼城跡にはおよそ100人の来城者があったという。

地域の誇りが山城とともに残されている。こうした小さな城で出会いがあるのも、サミットの魅力だろう。2018年の山城サミットは、9月22〜24日、月山富田城を抱く島根県朝来市で開催される。今から楽しみだ。

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執筆・写真/かみゆ歴史編集部(滝沢弘康)
「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。手がける主なジャンルは日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなど歴史全般。主な城関連の編集制作物に『日本の山城100名城』『超入門「山城」の見方・歩き方』(ともに洋泉社)、『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』『完全詳解 山城ガイド』(ともに学研プラス)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、『カラー図解 城の攻め方・つくり方』(宝島社)、「廃城をゆく」シリーズ(イカロス出版)など。

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