【日本100名城・根城編】北東北の名門が駿馬で駆けた南北朝時代以来300年の城

古くから名馬の産地として名を馳せた北東北の南部地方。その名の由来となった南部氏が築いた根城(ねじょう:青森県八戸市)は、南北朝時代から約300年間も存続しました。根城には堀や柵のほか、当時の生活を再現した主殿や工房、そして多数の馬屋が復元。散策の見どころと南部氏の歴史をご紹介します。

東北における南朝の拠点

根城、木橋
臨場感たっぷりに復元された、中館から本丸へと渡す木橋

根城の歴史は南北朝時代にさかのぼり、南朝の有力武将・北畠顕家が「奥州を平定する根本の城である」と根城の築城を祝ったという伝説が残っています。

築城者・南部師行(なんぶもろゆき)は南朝方として根城を中心に勢力を誇り、その後も寛永4年 (1627)に南部氏が遠野(岩手県遠野市)へ所領替えになるまで、根城は約300年間も存続しました。

根城、旧八戸城東門
八戸城から移築された旧八戸城東門

根城は発掘調査をもとに本丸の主殿や工房、納屋、馬屋などの建物を復元し、「史跡根城の広場」として整備されています。東端にある八戸市博物館から西に東善寺館(とうぜんじだて)、岡前館(おかまえだて)、中館(なかだて)、本丸が配置されています。

ちなみに、八戸市博物館の近くに立つ旧八戸城東門(八戸市指定文化財)は、江戸時代に修築された八戸城(青森県八戸市)にあった東門を移築したもので、根城のものではありません。

南部馬に関する施設が充実

根城、上馬屋
主殿に沿って造られた上馬屋では城主の馬を繋いでいた

旧八戸城東門をくぐり、復元された堀や通路をたどりながら本丸に到着すると、馬屋の復元展示の多さに驚きます。実際に馬が繋がれているかのように復元された上馬屋(かみのうまや)は、城主の馬を繋いでいた場所。古くから駿馬の産地として知られる南部地方の中でも、選りすぐりの馬が、城主の馬に選ばれていたと考えられます。

根城、中馬屋
上馬屋の北側に建てられた中馬屋

中馬屋(なかのうまや)は来客の馬が繋がれていた場所で、板張りの馬屋は古い絵巻物によく描かれています。多数の柱跡が残る下馬屋(しものうまや)は、主に夜間や冬の間、馬を飼っていた場所で馬屋と倉庫を兼ねており、鞍や鐙などの馬具のほかに、馬のエサとなる飼い葉も貯蔵されていました。

復元された根城の生活空間

根城、主殿
正月十一日の儀式を表した主殿の広間

本丸にはほかにも、城主が来客との接見や儀式をとり行ったとされる主殿が復元され、城主の生活や仕事の空間であった常御殿(つねごてん)の平面展示など、当時の姿が目の前に浮かぶようです。

根城、工房
工房の内部。職人達が合戦や儀式に備え、鎧や弓などの修理をしていた

地面を長方形に掘りくぼめて床にした竪穴式建物の工房は、東北地方北部や北海道南部の城や館跡でよく見られる構造です。

また、工房付近に復元された鍛冶工房では、フイゴと炉を備えた鍛冶場で職人が鎧や刀の部品の他に釘などを作ったと考えられます。鍛冶道具や不要になった鉄、銅銭、炭などが置かれ、大切にされた金属は壊れた破片でも再利用されていました。

名門・南部氏のなかの根城南部氏

鎌倉時代初期、甲斐国(山梨県)の武将・南部光行(なんぶみつゆき)は奥州藤原氏を破った手柄により、源頼朝から北東北一帯を賜ったと南部氏に伝わります(実際には領地としていない)。 

根城、南部師行像
八戸市博物館前に立つ、根城を築いた南部師行像

東北地方における南部氏には大きく2つの系統があり、本家とされる三戸南部(さんのへなんぶ)氏と、根城を本拠とした根城南部氏です。南北朝時代に北朝についた三戸南部氏に対し、根城南部氏は南朝につきましたが、実際に両南部氏が戦うことはなかったようです。南北朝時代以降は三戸南部氏を本家として行動をともにするようになります。

天正18年(1590)、天下を統一した豊臣秀吉から三戸南部氏の南部信直(のぶなお)が南部氏領全体の所領安堵の朱印状を得たことで、信直は領内全体の支配を認められ、根城南部氏はその配下と見なされます。さらに秀吉の命に従って、南部氏は三戸城を除く領内の城の大半を破却したため、根城は城としての機能を失いました。

江戸時代に入ると、寛永4年(1627)に根城南部氏は遠野(岩手県遠野市)へと領地替えとなり、根城は歴史的役割を終えることになります。一方で、三戸南部氏は寛永10年(1633)に盛岡城(岩手県盛岡市)へと移り盛岡南部氏となった後、後継ぎ問題から盛岡藩と八戸藩の2つに分かれました。
根城、主殿と常御殿
中世の城郭の特徴をよく残す、本丸に復元された主殿と常御殿の平面展示

青森県や岩手県には南部氏ゆかりの城が多数ありますので、根城をきっかけに南部氏の歴史を知れば、東北地方の城めぐりがますます面白くなるはずです。


住所:青森県八戸市大字根城字根城47
電話番号:0178-41-1726(史跡根城の広場)
アクセス:JR八戸駅から南部バス司法センター方面行きで15分、博物館前下車、徒歩5分 

執筆・写真/藪内成基(やぶうちしげき)
国内・海外で年間100以上の城を訪ね、「城と旅」をテーマに執筆・撮影。『地図で旅する! 日本の名城』(JTBパブリッシング)や『親子でめぐる!御城印さんぽ』(青春出版社)などを執筆。城めぐりツアー(クラブツーリズム)の監修・ガイドを務める。

※歴史的事実や城郭情報などは、各市町村など、自治体や城郭が発信している情報(パンフレット、自治体のWEBサイト等)を参考にしています

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