2020/03/12
PR 岡城が好きで移住した城ガイドが厳選!岡城5大キャッスルビュー
大分県竹田市にヨーロッパの古城を思わせるデザインと、独特のキャッスルビューが楽しめるお城があるのをご存知でしょうか? お城の名は、岡城。今回は、岡城とその城下町竹田の魅力に惹かれ、竹田市に移住し、約3年間岡城のPRやガイドを務めた藪内さんが、雨の日も風の日も、自身の夜討ち朝駆けに基づいた経験をもとに厳選した5つのキャッスルビューをご紹介します。一期一会のライブ感を求めて、いざ出陣!
「天空の城」岡城とは?
雨上がりの早朝に城内が霧に覆われる幻想的な姿から「天空の城」とも呼ばれる岡城は、熊本県と宮崎県と接する自然豊かな大分県竹田市にあります。昔であれば“国境”に面した要衝の地です。平安時代末期に源頼朝と仲違いをした弟・義経を迎え入れるために、緒方三郎惟栄(これよし)によって築城されたのが起源。戦国時代にはキリシタン大名・大友宗麟(そうりん)の家臣、志賀親次(しがちかよし/ちかつぐ)が、薩摩の島津軍を退けました。文禄3年(1594年)、播磨国(現在の兵庫県)から入部した中川秀成(ひでしげ)が現在の城郭や城下町を整備。作曲家の瀧廉太郎が少年時代に何度も登城し、『荒城の月』の着想を得たと考えられています。
キャッスルビュー1
深呼吸と陽光から妄想する岡城ライフ
桜の季節に本丸跡から阿蘇山方面を望む。左上にうっすらと阿蘇山の輪郭が見える
城は防御施設ですので、守りを意識して見晴らしの良い場所にあります。現代風にいえば、絶好の「展望スポット」ですが、開発等によりほとんどが姿を変えてしまいました。けれども、岡城のまわりには阿蘇山によって育まれた、昔とほとんど変わらない景観が広がります。新鮮な空気で深呼吸しながら、往時に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。
早朝の大手門跡では、太陽の向きを生かした「光の射撃」が体感できる
素晴らしい眺望を目指して、まずは朝の登城がおすすめです。「夜討ち朝駆け」と呼ばれるように、戦は朝に行われるのがセオリー。攻める側の気持ちで城の玄関に当たる「大手門跡」へ。石垣の合間から朝日が昇り、「光の射撃」ともういうべき太陽光に目がくらみます。立ち往生しているうちに、周囲から一斉射撃。恐ろしい造りを体験できるのです。
断崖絶壁に積み上げられた三の丸跡の高石垣は、岡城を代表するみどころのひとつ
さらに進むと三の丸跡の高石垣に圧倒されます。夕方に近づくにつれて、石垣が陽光に照らし出され赤みを帯びてきます。
阿蘇山に沈む夕日を西の丸跡から望む。「日本100名山」の祖母山、くじゅう連山を見渡す大パノラマが広がる
岡城を守る人々はロマンチックに夕日を眺めていたのでしょうか? それとも、夜討ちに備えて息苦しい思いをしていたのでしょうか? 妄想が膨らみますね。
キャッスルビュー2
大自然に育まれた四季の彩
石垣の合間からのびるモミジ。緑から紅へ、生命力が満ちあふれるよう
岡城は2本の川で囲まれた標高325mの岩山全体を要塞化した城。自然豊かな土地で、四季折々の木々や草花が彩を添えます。春には桜、秋には紅葉。寒暖差が大きいため、紅葉の色づきがよいといわれています。
本丸跡の高石垣に咲くヤマユリ。7~8月頃に見ごろを迎える
夏には石垣から可憐な白い花が顔をのぞかせます。ヤマユリ(竹田ユリ)です。第4代岡藩主、中川久恒が参勤交代の際に箱根(神奈川県)から持ち帰り岡城周辺に移植したのがはじまり。イノシシが近づけないような本丸の高石垣などで見られます。
写真で見ると少し肩身が狭そうに見えますが、実際には断崖の石垣に陣取り、吹きつける風に全身を震わせながら耐える姿は力強く、勇気を与えてくれます。
黒みがかった石垣を背景にして、ピンク色のヒガンバナがよく映える
ほかにも、ロウバイやナノハナ、ツバキ、フジ、ツツジ、アジサイ、ヒガンバナなどが咲き誇ります。少し黒みがきいた石垣と、引き立て合い、なんとも美しい姿を見せてくれます。
西の丸跡ではナノハナとサクラの競演が楽しめる
キャッスルビュー3
表情を変える瀧廉太郎像
朝日を浴びる瀧廉太郎像。朝倉文夫の瀧廉太郎に対する熱いメッセージが彫られている
岡城の記念撮影スポットと言えば二の丸の瀧廉太郎(たきれんたろう)像。唱歌『荒城の月』で知られる作曲家・瀧廉太郎は、少年時代を竹田で過ごしました。当時の記録によると、瀧廉太郎は岡城にたびたび登城するほど活発な少年でした。
この瀧廉太郎像を造ったのは「東洋のロダン」こと朝倉文夫(あさくらふみお)。現在の竹田市を中心とした旧岡藩領に生まれました。早稲田大学の大隈重信象など、数々の名作を生み出しています。竹田高等小学校で瀧廉太郎と同時期に学んでいたのです。
夕暮れの瀧廉太郎像。くじゅう連山を背景に、憂愁ただよう表情をみせる
瀧廉太郎像の背後には、くじゅう連山の美しい稜線がのびています。朝日が昇るにつれて瀧廉太郎像の顔を照らし出し、夕暮れには瀧廉太郎像の背後に沈んでいきます。陽光の向きによって瀧廉太郎像の雰囲気は一変しますので、ぜひお気に入りの瀧廉太郎の表情を探してみてください。
二の丸の花や紅葉を愛でながら、四季を歌った『荒城の月』に思いを馳せたい
二の丸は紅葉の名所として知られますが、ツツジやヒガンバナなども咲きますので、季節の花と瀧廉太郎のコラボも楽しんでみてください。
キャッスルビュー4
ヨーロッパの古城のような曲線デザイン
石垣自慢の城は日本全国にたくさんありますが、岡城は石垣の美しさやスケールの大きさに加えて、「曲線美」というユニークな特徴をもっています。ヨーロッパの古城を思わせる理由のひとつです。
登城口からのびるカマボコ石。かつてはカマボコ石を土台にして塀が並んでいた
例えば、登城口でいきなり「カマボコ石」とよばれる半円型に加工された石が現れたり、登城道がクネクネと曲線を描いていたり、曲線に積まれたバルコニーのような階段が登場したりと、曲線デザインの波状攻撃。少しずつ曲線デザインに慣れてくると、石垣の中にも曲線が浮かび上がってくるはず。至るところで曲線が活用されているのです。
太鼓櫓跡の石垣。六角形を中心として円を描くように積まれている。じっと石垣を見ると、各所で曲線が浮かび上がってくる
曲線デザインが多用された理由は分かっていませんが、曲線美を可能にした秘密は石の存在にあります。阿蘇山の噴火によって生み出された「阿蘇溶結凝灰岩(あそようけつぎょうかいがん)」とよばれる黒い石。やわらかく加工しやすいため、曲線を表現しやすかったのです。
大手門近くの家老(中川但見)屋敷跡には、バルコニーのような曲線に積まれた石垣が残る
阿蘇溶結凝灰岩は、国の天然記念物にも指定されています。そもそも岡城全体が、阿蘇溶結凝灰岩の岩山。阿蘇山の恵みともいえる、阿蘇溶結凝灰岩を最大限に生かした城なのです。
キャッスルビュー5
一期一会のライブ感
陽光や自然、瀧廉太郎像、曲線美など、様々な視点から岡城の楽しみ方を紹介してきました。バリエーション豊富な楽しみ方が組み合わさり、訪ねる度に異なる景色に出会えるのが、何よりも岡城の魅力。ライブ感が味わえる城なのです。
雨上がりに、まるで雲海のようにのびる霧。岡城では雨すらも楽しみたい
岡城には雨がよく降りますが、阿蘇溶結凝灰岩が雨に濡れると石が一層黒くなり、岡城全体の色が変わったように見えます。また、雨上がりには霧が発生し、岡城が幻想的な姿をみせることもあります。
落葉した紅葉の絨毯(じゅうたん)と石垣の組合せも美しい
晩秋には落葉した紅葉が霜で覆われることもあり、寒いからと言って見逃すわけにはいきません。雪はあまり積もりませんので、雪景色に遭遇できれば幸運です。岡城といえば石垣が注目されがちですが、雪が積もると土塁の膨らみが強調され、存在感を主張しているようです。
雪をうっすら被った中休所跡。張り出した土の膨らみが強調され、土塁の存在に気づかされる
以前、岡城をご案内した城ファンの方は、1日に5回、岡城に登城されましたが、それでもまだ登り足りない様子でした。日本を代表するアーティスト、瀧廉太郎も足しげく通いました。一期一会のライブ感を楽しみに、何度でも岡城を訪ねてみることをおすすめします。きっと新たなキャッスルビューに胸躍るはずです。
【基本情報】
住所:大分県竹田市大字竹田2889
電話:0974-63-1541(観覧料徴収所)
アクセス:JR豊肥本線「豊後竹田」駅から徒歩約30分(タクシー約5分 ※約2km)
▼岡城のことをもっと知るなら
2020年3月リニューアル!
岡城跡公式サイト https://okajou.jp/
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案内人/藪内成基(やぶうちしげき)
奈良県出身。国内・海外で年間100以上の城を訪ね、「城と旅」をテーマに執筆・撮影・ガイド。『JCB THE PREMIUM』(JTBパブリッシング)や『サライ.jp』(小学館)など。岡城(大分県竹田市)で修業後、各地を転戦している。