熊本城の「いま」 第12回 いよいよ10月5日にお披露目! 熊本城特別公開(第1弾)は復興の大きな一歩

2019年10月5日(土)、熊本地震発生後、着々と復旧が進められてきた熊本城の特別公開が始まりました。「特別公開(第1弾)」によってこれまで立入規制されていた区域の一部に入城し、天守閣の姿をより近くから観覧できるようになります。復旧に向かう熊本城の今の姿を、目に焼き付けてみてはいかがでしょうか。(※2019年10月4日初回公開)



熊本城復旧の状況(2019年9月現在)

2016年4月14日に熊本地震の前震、16日に本震に襲われた熊本城。重要文化財建造物や復元櫓が被災、文化財である石垣については約520面が膨らみ・緩み・崩落しました。2018年3月に策定された「熊本城復旧基本計画」に基づいて復旧工事が進められ、いよいよ2019年10月5日(土)から特別公開(第1弾)が始まります。まず、熊本城はどれくらい復旧が進んでいるのか見てみましょう。

熊本城、大天守、小天守
復旧が進む大天守(写右)と小天守(左)。2019年6月には小天守最上階に仮設屋根が設けられた 2019年9月撮影(熊本城総合事務所提供)

熊本城、大天守、鯱
大天守には鯱(しゃちほこ)が載り、工事用の足場が取り外されている  2019年1月撮影

熊本城、工事
大天守は工事用の足場ですっぽりと覆われており、鯱はまだ載っていない  2018年4月撮影

整備された「特別公開第1弾ルート」から天守閣を望む

10月5日(土)からは特別公開第1弾ルートを通って入城できるようになり、天守閣の復興状況を間近に見学できます。天守閣内部へ入れるようになるのはまだ先ですが、復興に向けた大きな第一歩といえます。

熊本城、西大手門、特別公開
特別公開ルートの出発点。奥に進むと左に西大手門 2019年9月撮影(熊本城総合事務所提供)

特別公開ルートは二の丸広場が起点となり、まず西大手門を通ります。大きく石垣が崩れていた西大手門は、現在解体保存され、土台石垣には安全対策が施されています。西大手門から西出丸を抜け、工事用スロープを通って平左衛門丸、天守閣前広場の一部に至る、本丸を東に横断するルートです。

熊本城、宇土櫓
「三の天守」とも呼ばれる宇土櫓が左手に見える 2019年6月撮影(熊本城総合事務所提供)

西大手門を抜けると左手に宇土櫓が見えてきます。宇土櫓は石垣の高さが約21m、櫓の高さが約19mもあり、他の城郭であれば天守級の規模。江戸時代に起こった大地震を経て、西南戦争でも燃えず、熊本地震でも南側の続櫓は倒壊したものの、五階櫓の倒壊は免れました。

熊本城、復旧工事
天守閣の復旧工事が臨場感たっぷりに観覧できる  2019年8月撮影(熊本城総合事務所提供)

さらに特別公開ルートを進み、天守閣広場まで行くと、天守閣が大きな姿を現します。大天守は2018年4月に鯱(しゃちほこ)の設置が完了しました。鯱は高さ119cm、重さ約100kg。新しい鯱が見られるのも、復旧が進む熊本城ならではです。

「スクラム」を組む大天守・小天守と宇土櫓

特別公開ルートの出入口に近い二の丸広場からも、熊本城の雄姿をお見逃しなく。堀に添って北側(三の丸方向)に移動すると、大天守・小天守と宇土櫓が重なり、まるでスクラムを組んでいるかのように力強い姿を見せているのです。

熊本城宇土櫓
熊本地震で倒壊しなかった宇土櫓を中心に、大天守(右)と小天守(左) 2019年9月撮影(熊本城総合事務所提供)

熊本城、小天守
小天守は、2018年9月中旬から始まった4階部分の解体が10月下旬に完了した   2018年10月撮影

熊本城、宇土櫓
大天守は復旧作業のため足場で覆われている 2018年4月撮影

さらに堀に沿って移動し、加藤神社も訪ねてみましょう。加藤神社は、熊本城の築城者・加藤清正(かとうきよまさ)を祀る神社。特別公開ルートとはまた違った角度から、大天守・小天守と宇土櫓を見学できます。

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加藤神社から望む大天守・小天守   2019年9月撮影

熊本城の歴史や復興状況について深く知りながら散策したい場合は、「くまもとよかとこ案内人」のガイドがおすすめです。現在の熊本城の様子を、地震前と比較して詳しく案内してくれます。詳細は下記リンクをご参照ください。


特別公開(第1弾)は原則として日曜・祝日限定

今回の熊本城特別公開(第1弾)では、原則として復旧工事を行わない日曜・祝日のみの公開となりますが、10月5日〜14日までは「熊本城大天守外観復旧記念週間」として、10月7日〜11日の平日午後も公開されます。(※公開スケジュール詳細は、下記データ欄の公式ホームページよりご参照ください。)

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平左衛門丸から見える天守閣(大天守) 2019年9月撮影 (熊本城総合事務所提供)

2020年春には、特別公開(第2弾)として、立入規制区域内に平日の観覧が可能となる「特別見学通路」が完成予定。さらに、2021年春には、特別公開(第3弾)として、天守閣の完全復旧・内部公開が予定されています。

熊本城、熊本市役所、展望フロア
熊本城に隣接する熊本市役所14階展望フロアから一望。天守閣以外にも、復旧に向かっている様子がよく見える 2019年9月撮影 (熊本城総合事務所提供) ※シートを掛けた石垣(写真中央)は、飯田丸五階櫓の石垣

完成に向けて日々姿を変える熊本城。天守閣復旧の完成もとても待ち遠しいですが、復旧の途中経過もぜひ目に焼き付けたいですね。ぜひ熊本城特別公開に足を運び、復興への大きな一歩を体感してみてください。


<基本情報>
熊本城特別公開(第1弾)
期間:2019年10月5日~(原則日曜・祝日限定)
TEL:096-352-5900(熊本城総合事務所)
入園時間:9:00~17:00
入園料:大人500円、小人200円※入園事前予約はなし。
※10/5~14は熊本城復旧記念週間として平日・土曜も公開(公開初日および平日の公開時間は13:00~17:00)。
※ラグビーワールドカップ熊本開催中(10/5~12)および女子ハンドボール世界選手権開催期間中(11/30~12/15)は土曜も公開。
※天守閣内部の入場は不可。

※公開日は熊本城周辺や周辺駐車場等が大変混雑することが予想されますので、余裕をもった観覧時間の設定と公共交通機関でのご来城がおすすめ。
※混雑状況によっては公開エリアへの入城制限あり。

執筆・写真/藪内成基(やぶうちしげき)
奈良県出身。国内・海外で年間100以上の城を訪ね、「城と旅」をテーマに執筆・撮影。異業種とコラボした城を楽しむ体験プログラムを実施。旅行雑誌『ノジュール』(JTBパブリッシング)などを編集。

※歴史的事実や城郭情報などは、各市町村など、自治体や城郭が発信している情報(パンフレット、自治体のWEBサイト等)を参考にしています。

※熊本城では、昭和35年(1960)に再建した天守を「天守閣」、明治10年(1877)に焼失する前のオリジナルの天守を「天守」として、表記を区別しています。

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