お城めぐりに大事なのは「知識」ではなく「視点」! 久保井朝美さんがお城天気本を刊行

久保井朝美

お城を愛する気象予報士として各方面で活躍し、またお城をさまざまな角度から楽しむ「城ラボ by 城びと」の主任研究員としてもおなじみの久保井朝美さんが、このたび「天気」の視点からお城を紐解く本『城好き気象予報士とめぐる名城37 天気が変えた戦国・近世の城』を書き上げました! 今回は久保井さん自ら、本書の内容と執筆に込めた思いをご紹介します。

お城めぐりに物足りなさを感じているみなさん!
もっと楽しみたいとお城の高みを目指しているみなさん!
こんにちは。お城が大好きで全国をめぐっている、お城好き気象予報士の久保井朝美です。
このたび、「視点を増やして、お城をより広く深く味わえるようになる本」を書きました。
『城好き気象予報士とめぐる名城37 天気が変えた戦国・近世の城』(PHP研究所)です!

久保井朝美、城好き気象予報士とめぐる名城37 天気が変えた戦国・近世の城

本書は、私の体験がベースになっています。
私が生まれたのは、かつての名古屋城内。三の丸跡にある病院です。
徳川家康が生まれた愛知県の岡崎城の城下町で育ち、自然とお城に惹かれていきました。
次第に日本史も好きになり、学生時代から歴史的背景も含めて様々なお城を味わっていましたが、どこか物足りなさも感じていました。

お城の見方が変わったのは27歳、気象予報士になった頃からです。

「寒冷地の屋根には、赤や緑など特徴的な色が多い」
「美しい壁は、台風への備えかもしれない」
「徳川家康は天気を巧みに使って、短時間で関ヶ原の戦いに勝利したのではないか?」

ずっと好きだったお城や歴史に、今まで抱いたことがなかった疑問や仮説が浮かんできたのです。
気象予報士ならではの知識や気づきをお城と掛け合わせたら、同じ景色がまた違ったように見えてきました。
その経験から、お城めぐりに大事なのは、“知識”ではなく、“視点”だと気づきました
独自の視点があるからこそ、新しい発見につながり、生きた知識になります。
天気という新しい視点を得てからは、お城めぐりが一層楽しくなっています。

久保井朝美、城好き気象予報士とめぐる名城37 天気が変えた戦国・近世の城
名古屋城にて(本書「はじめに」より)

本書は、4つの章で構成されています。
第1章「気象と築城技術」では、北日本から西日本、日本海側と太平洋側で異なる気候に合わせたお城づくりをご紹介します。お城の工夫は、瓦、外壁、石垣など色々なところに施されています。あの美しい特徴は、なんと天気への備えだった!と知ると、一層尊く見えるでしょう。

久保井朝美、城好き気象予報士とめぐる名城37 天気が変えた戦国・近世の城
会津若松城(会津若松城は、第1章「気象と築城技術」に登場します)

久保井朝美、城好き気象予報士とめぐる名城37 天気が変えた戦国・近世の城
鹿児島城にて(鹿児島城は、第1章「気象と築城技術」に登場)

第2章「美しきかな! 城で楽しむ絶景」は、お城と自然の競演を取り上げています。霧による天空の城、お城で味わう月、雨で色が変わる石など、季節や天気によってお城は様々な表情を見せてくれます。行ったことがあるお城も、また別の顔を持っているのです。
天気が分かると、「雨の日にこそ行きたいお城」「風の日を体感したいお城」があると思うようになりました。視点が増えたら気づきが増えて、広く深く味わえる、この感動をみなさんと分かち合いたいです。

久保井朝美、城好き気象予報士とめぐる名城37 天気が変えた戦国・近世の城
松本城にて(松本城は、第2章「美しきかな! 城で楽しむ絶景」に登場)

久保井朝美、城好き気象予報士とめぐる名城37 天気が変えた戦国・近世の城
徳島城にて(徳島城は、第2章「美しきかな! 城で楽しむ絶景」に登場)

また、天気は戦にも密接に関わっています。
第3章「天気を読んだ名将」では、有名な戦国武将たちが天気の微妙な変化を捉え、勝利に導いた戦をご紹介しています。徳川家康、毛利元就、豊臣秀吉、伊達政宗、織田信長ーー名将といわれる彼らは、普通なら見逃してしまいそうな天気の“サイン”に気づいていたようです。
何気ない“サイン”に気づけるかどうかは、変化の激しい現代を生き抜くうえでも大切で、歴史から学べることも多いと思います。

第4章は、「対談 千田嘉博×久保井朝美 『天気』が分かれば、城あるきはもっと面白い!」です。
城郭考古学者が発掘調査の際に利用する「雨の跡」や、姫路城の火縄掛けの高さと湿気の関係、気候変動と歴史的文化財の保全についてなど、熱いお城トークを繰り広げています。お城のプロと天気のプロの掛け合いによって新たな発見もあり、興奮を覚えました
千田嘉博先生からは、「気象予報士の久保井さんなら、歴史の研究者では気がつかない視点をお持ちです。そこから分かる、歴史やお城の姿があると実感しています」という、大変ありがたいお言葉をいただきました。

最後に、読んでくださった方のご感想とともに、私が本書に込めた気持ちをもう少し書かせてください。(感想は一部抜粋です)

「これまでにない新たなお城鑑賞の視点がユニーク」「目の付け所が今までの研究者と違う」「気象予報士×城好き×防災士の視点を掛け合わせると、これまでにない仮説も成り立ち、今までの定説も科学的根拠をもって論ずることができる」「武将の戦を気象予報士の視点から考察するのが魅力的」

新たな視点で見るお城、歴史というのは、本書の根幹です。実は、独自の見解を執筆できることはウキウキと同時にドキドキと緊張していましたが、みなさんに新たな楽しみを感じていただけたら嬉しいです。

「歴史は苦手だけど、身近な天気に絡めてもらえると急に読みやすくなる」「文字ばかりの本は苦手ですが、読みやすいので一気に読めた」「一般的なお城の本は専門家向けが多いが、柔らかい文章で初心者にも読みやすい」

歴史やお城は縁遠く感じていても、天気という身近な話題から入ると興味を持っていただけるのではないかと期待していたので、光栄です。地図や写真、イラストを効果的に使うことで、イメージが膨らむように工夫しています。

「読むとお城に行きたくなる」「旅行前に一読すると、旅行先での楽しみ方がまた違ってくると思う」「お城見学の前とお供に。本のサイズが携帯するのに良い」

初めてのお城はもちろん、行ったことがあるお城も一層楽しくなる見方を詰め込みました。本書を持ってお城に出かけて欲しいので、持ち運びやすい大きさの本になっています。一緒にお城をめぐりましょう。

他にも、AmazonやSNSに多くのご感想をいただいております。どうもありがとうございます。

本書ではお城をより楽しむために天気という視点で見ることを提案していますが、視点が増えることで得られる楽しみが増えるのは、お城に限ったことではないと思います。同じ景色を見ても、100人いれば100通りの感想があります。たくさんの視点があることを意識すれば、少し誰かを思いやったり、理解したりすることにも繫がるのではないでしょうか。
「視点が増えれば、人生が豊かになる」大げさかもしれませんが、執筆を通して感じました。
この本が、あなたの視点を増やすきっかけになれば幸いです。

【書籍情報】
[書名]『城好き気象予報士とめぐる名城37 天気が変えた戦国・近世の城』
[著者]久保井朝美
[版元]PHP研究所
[刊行]2024年2月20日

執筆・写真:久保井朝美(くぼいあさみ)
久保井朝美
城ガール&気象キャスター(気象予報士・防災士)。愛知県岡崎市出身。徳川家康が生まれた岡崎城のすぐ近くで育ち、お城に愛着を抱く。長野県の松本城に感動して一層お城への愛が増した。日本100名城スタンプラリーでお城めぐりの楽しさを感じ、日本100名城や続日本100名城ほか、北海道から沖縄まで全国のお城をめぐっている。日本城郭検定2級、気象予報士、防災士、漢字検定1級、チョークアートの資格などをもつ。NHK総合「サタデーウオッチ9」や「ニュースウオッチ9(祝日)」の気象キャスターを務め、全国各地で講演会を行なっている。NHK総合「日本最強の城スペシャル」にも出演。