日本城郭協会大賞 【インタビュー】日本城郭文化振興賞:山名氏城跡保存会~山名氏関連城郭の維持・整備~

日本城郭協会大賞
城郭文化の振興に貢献した団体及び個人を顕彰する「日本城郭協会大賞」。第3回日本城郭協会大賞の「日本城郭文化振興賞」に選定された山名氏城跡保存会(兵庫県豊岡市)にお話を伺いました。

<山名氏城跡保存会~山名氏関連城郭の維持・整備~>

山名氏城跡保存会は、但馬地方の山名氏関連の城郭や城下町、周辺の史跡破壊防止に尽力、保存や調査・研究に取り組み、啓発活動を継続して行っています。遺跡の維持のみならず景観整備にも大きく貢献していることを評価されて、「日本城郭文化振興賞」に選ばれました。

山名氏城跡保存会
有子山城(兵庫県豊岡市)のドローン撮影
 
―お城やお城周りの整備や調査、啓発活動と多岐にわたって活動なさっていますね。保存会に所属されているのは地元の方が多いのでしょうか? 
 事務局がある兵庫県豊岡市内が会員の半数を占めており、残りの半分は、豊岡以外の但馬で1/6、兵庫県内で1/6、兵庫県以外の近畿地方などで1/6といったところです。会員数は現在66名で24歳から82歳までと幅広いのですが、割合としては20代から50代が16名、60代20名、70代以上32名と、実は70代以上が半数近くを占めています。

山名氏城跡保存会
此隅山城(兵庫県豊岡市)草刈り終了後の様子。主郭から南第2曲輪にいる参加者を撮影

―70を超える方が半数近くも! でも地元の方が多いのは素晴らしいですね。会員の方々のお気持ちが続くような工夫は何かなさっているのでしょうか? 
 会員の「声」を届ける「会員広場」なるものも、会報の発行と共に会員に届けています。高齢者が多いので、企画する城郭探訪会に参加される方は限られますが、「歴史講演会が楽しみ」、「国史跡の城で草刈りができるのが嬉しい」、「個人では行かれないところをバスで連れて行ってくれて、その土地の専門家の話が聞けるのが貴重」など、様々な思いを持った人たちの集まりです。イベントの折には役員だけでなく、会員さんの自発的なご協力をお願いしております。

山名氏城跡保存会
有子山城第二曲輪にて。有子山城跡草刈り終了後、主郭南石垣・虎口をバックに

―保存会は、1985年の「但馬出石此隅山城の保存を進める会」から何度か名称を変えながら現在の形になっていると伺いました。当初と比べて会の目的や思いに変わりはございますか?
 当初は「此隅山城(このすみやまじょう)」「有子山城」の史跡公園化構想の具体化のため、「国史跡指定」を目標として他団体と協同して活動していました。活動が実を結び、両城が「山名氏城跡」として1995年国史跡指定になったことで、初期の目標は達成されました。

 ところが、いざ国史跡指定になってみると、具体的に両城の保存・保護活動を進められる受け皿がなかったのです。そこで会を解散させず、両城の見学会、但馬内の山城調査、調査報告を兼ねた地域探訪会、歴史講演会などを企画するようになり、活動内容と共に活動範囲が広がってきました。活動する中で、両城が雑木、雑草で覆われ、見学に値する環境になっていないことに気付き、両城の草刈り活動にも取り組むようになりました。

山名氏城跡保存会
此隅山城主郭の斜面の草刈り

―保存状態というハード面と、歴史的重要性や地域の誇りといったソフト面、両方の観点から両城を良好な状態で未来へ残すべく、会が受け皿となったのですね。
 民間団体なので新聞等では「歴史愛好会」と書かれますが、会は今年で16年目になります。両城だけでなく広い視野で歴史に触れてもらえるように、但馬を中心に身近な歴史、山城を中心とした歴史的文化財についても関心が持たれるように願い、県内外の特別展や地域の歴史研究者による案内などの「バスによる歴史探訪会」を行っています。

山名氏城跡保存会
2024年5月19日に開催された城郭探訪のチラシ

―これまでの活動の中で印象深いエピソードを1つ教えていただけますか?
 国史跡指定に至るまでのさまざまなことです。現在、執筆などで活躍されておられる方々が、但馬地方にまで足を運んでは講演会をはじめ現地説明会を繰り返し行い、此隅山城の素晴らしさや歴史的評価を伝えることで、大きな話題を作ってくださいました。「此隅山(このすみやま)は子盗み山」という嬉しくないイメージで語られる程度の理解から、誇り得る山城と分かり地元の方々増えるにつれ、講演会が開かれる度に、どんどんと地元参加者が増えていった光景は忘れられません。

山名氏城跡保存会
このすみ・ありこ歴史講演会(2024年3月24日開催)

―成果が形として目に見えますし、思いが確実に広がっている証でもあり、伺っているだけでも胸が熱くなる光景です。今後の保存会の目標を教えていただけますか?
 会員の高齢化が進み、役員も動ける人が少なくなり、これまでの活動を続けるには厳しいものがあります。時代によりメンバーにより、活動内容は変化します。ただ、大切な「文化財」を残していこうという活動がきっかけとなって発足した会なので、掘り起こされた事実や新たな研究成果を記録し、歴史文化財として、ひとつひとつ丁寧に創意工夫し人々に伝えていくという目標は変わりません。
 今と同じく、歴史研究者(機関)の助けを借りながら、たとえば水生城見学における池上自治協議会や山名氏九日市守護所見学における八条地区コミュニテイといった地元の方々のご協力をいただくことは、この先ますます重要になっていきます。

山名氏城跡保存会
春の城郭探訪「水生城」東第二曲輪で説明 

 歴史の面白さ、知ること、触れることの喜びを大切にすることを忘れることなく、微力ながら文化遺産の保存・調査・研究・出版などに取り組み、改めて地元の歴史素材への評価を再認識、再発見し、地元が元気になればと考えています。

―お城ファン・城びと読者へメッセージをお願いします。
 名門・山名家の最期の殿様「山名祐豊(すけとよ)」が築いた有子山城が今年450年を迎えました。なぜ、有子山に城を築いたのか、ぜひ訪れて、考えてみて下さい。続日本100名城の中でも、有子山城登頂の厳しさは最高レベル。しかし山頂からは、麓に広がる「但馬の小京都」と言われ「伝統的建造物群保存地区」がある出石城下町が見渡せます。
近く(北2km)にある土の城「此隅山城跡」へもぜひどうぞ!


ーありがとうございました。

【日本城郭協会大賞とは】

公益財団法人移行10周年を記念し、日本城郭協会が2022年に開始した城郭文化の振興に貢献した団体及び個人を顕彰する事業です。小和田哲男理事長を審査員長とする審査会にて「日本城郭協会大賞」を選定します。ほかにも、城郭城址の維持・整備を自主的に行うボランティア団体等を賞する「日本城郭文化振興賞」、城郭文化の普及に寄与した個人・団体を賞する「日本城郭文化特別賞」、2023年から城郭管理者として特筆すべき成果を挙げた自治体等を「調査・整備・活用賞」として顕彰しています。

これまでの受賞者インタビュー等の記事はこちらをご覧ください。

執筆/城びと 取材協力・画像提供/山名氏城跡保存会