金沢城下町は歩きやすい!城下町まるっと散策コースをご紹介(前編)

2015年に北陸新幹線の長野ー金沢間が開業したことで、観光客数が倍増した石川県金沢市。百万石の石高を誇る加賀藩前田家の居城「金沢城」は、県内随一の観光名所です! 二重の惣構をもつ総延長8kmの城下町には、今もなお文化と歴史の香りが残ります。整備が行き届いた金沢城下町は、散策にはもってこいのスポットです。(※2018年7月6日初回公開)




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進化し続ける金沢城

橋爪門続櫓、五十間長屋、菱櫓、金沢城

橋爪門続櫓・五十間長屋・菱櫓

寺内町を前身とする金沢の町に、金沢城が誕生したのは天正8年(1580)のこと。佐久間盛政がこの地を攻略し築城しました。天正11年(1583)には、石高100万石の藩に発展させた前田家が入城。以降、廃城まで約300年にわたり前田家が治めてきました。

金沢城、鼠多門
2020年完成予定の鼠多門。現在は工事中(※2020年7月に完成しています)

そんな金沢城は、近年復元のラッシュです! 2000年からは金沢城の顔となった菱櫓や、五十間長屋、河北門、橋爪門、橋爪門続櫓などの建物がぞくぞくと復元。さらには、いもり堀や玉泉院丸庭園なども再現されています。訪れる度に景色が変わる金沢城は「進化する城」といえるでしょう。

この復元事業は、金沢城公園内だけではなく町の中へも進出していますよ。

<基本情報>
金沢城公園
住所:石川県金沢市丸の内1番1号
電話番号: 076-234-3800 (石川県金沢城・兼六園管理事務所)
開園時間:3/1~10/15   7:00~18:00(退園時間)、10/16~2月末 8:00~17:00(退園時間)ただし、菱櫓などの施設は、9:00~16:30 (最終入館16:00)
入園料:無料 ※菱櫓などは大人320円、小人(6~17歳)100円
定休日:無休

2018年4月、

西外惣構の升形が復元された

惣構、金沢城、防衛ライン、二重構造

金沢城に築かれた延長約8kmの惣構(城下町全体を堀と土塁で囲んだ防衛ライン)は内側と外側にめぐる二重構造でした。東西で区別し、内側にあるのが「西内惣構」と「東内惣構」。そして、外側にあるのが「西外惣構」と「東外惣構」です。

2018年4月に、西外惣構の升形(門と城壁で囲まれた四角い空間)の一部が復元。町中に、高さ5m超の土塁が出現しました。発掘調査によると、17世紀初頭に設けられた升形は、平和な世になりその役割を終えたようです。17世紀末頃には規模が縮小し、埋め立てられた場所には惣構の管理人の家があったのだとか。惣構の復元は全国的にも珍しいので、金沢城下町散策の際には是非見学したいですね。

<基本情報>
住所:石川県金沢市本町1丁目1  安江町交差点付近
電話番号:復元工事について  076-220-2208(歴史都市推進課)
                  史跡について 076-220-2469(文化財保護課)

整備された惣構跡を歩いてみよう!

金沢市指定史跡の惣構は、整備も行き届き、見学者がわかりやすいように解説板が設置されています。歴史の香りを辿って散策してみましょう!

枯木橋南遺構、金沢城、東内惣構、枯木橋、石垣
 
東内惣構にある「枯木橋南遺構(かれきばしみなみいこう)は、北国街道に繋がる枯木橋が架けられていた場所で、橋の番人が立ち、人の出入りを管理していました。発掘調査によってわかった点は、17世紀から明治にかけて、徐々に堀が狭まるよう石垣が築かれていたことです! 

写真にある現在の幅は、明治になってからのもの。ベンチ横にある丸型のマークは、17世紀の石垣の位置を表現しています。徐々に備えを緩和していくなんて、なんだか甲冑をだんだんとはずす武士みたい! もしや、 堀幅の変動は平和のバロメーターなのかも……と妄想できるポイントです。

枯木橋詰遺構、金沢城

枯木橋南遺構より50mほど北には「枯木橋詰遺構(かれきはしづめいこう)があります。ここも同様に、18世紀から明治にかけて堀幅が徐々に狭められていました。

注目すべきは、石垣! 川辺に転がっているような丸石を積み上げています。写真にある石垣の左上部は復元ですが、右側は19世紀前半のものです! 残念ながら、木が元気よく生えているので写真には写りませんでした。現物は、現地で確認してくださいね。

西外惣構跡、金沢城、土塁、名残

香林坊2丁目には、西外惣構跡の名残といえる段差が確認できます。掘った土は土塁として盛られ、また土塁に木を植えることで城内を見えにくくするブラインド効果があります。この高低差は土塁があった名残です!

<基本情報>
住所
・枯木橋南遺構:石川県金沢市尾張町1丁目7−13
・枯木橋詰遺構:石川県金沢市尾張町2丁目13
・香林坊2丁目付近の西外惣構跡:石川県金沢市香林坊2丁目11−10
電話番号: 076-220-2469(文化財保護課)

かつての雰囲気そのままの長町武家屋敷

西外惣構、武家屋敷、長屋門、土塀

西外惣構の外側には、平士級の武家屋敷がありました。武士の邸宅は、土塀で囲われるのが一般的。さらに、禄の高い家は長屋門を構えることができました。冬季には、「薦(こも)掛け」と呼ばれる冬支度がはじまります。高さ95cmほどの稲藁(いねわら)で編んだ薦(こも)を土塀につるします。雪から土塀を守るための知恵! 冬の金沢の風物詩です。

今も住民が暮らす家もありますが、なかには、野村家のように見学施設になっている邸宅跡もありますよ。

武家屋敷、水路、大野庄用水、金沢城、宮腰

また、武家屋敷に流れる水路は、全長約10kmに及ぶ「大野庄用水」です。雪が多い国では、融雪のために水路が設けることがありますが、この水路が完成したのは金沢城築城よりも前のこと! 金沢城を築城する時には、宮腰(現在の金石)から木材を運ぶ際に役立ったそうです。

<基本情報>
長町武家屋敷
住所:石川県金沢市長町
電話番号:長町武家屋敷  076-220-2364(景観政策課)
                  大野庄用水  076-220-2208 (歴史都市推進課)

後半へつづく!
金沢城公園の周辺にも、歴史の残り香が漂うスポットがたくさんあります! 後半では、金沢グルメについても触れながら、ちょっとディープな金沢城を探してみましょう。

▼後編はこちら

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 いなもと かおり
 お城マニア&観光ライター
 年間120城を巡る城マニア。國學院大學文学部史学科古代史専攻卒。19歳の時に、会津若松城に一目惚れしてから城の虜となる。訪城数は600ほど。国内旅行業務取扱管理者、日本城郭検定準1級、温泉ソムリエ、夜景鑑賞士2級の資格をもつ。城めぐりの楽しみ方を伝えるべく、テレビやラジオにも出演中。※2021年9月プロフィール更新
※歴史的事実や城郭情報などは、各市町村など、自治体や城郭が発信している情報(パンフレット、自治体のWEBサイト等)を参考にしています

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