江戸城のすべて(萩原さちこ) 2018年12月新連載スタート!「江戸城のすべて」|萩原さちこ

12月から城びと会員の特典として、会員限定記事の掲載が始まりました。第2弾は、萩原さちこさんによる新連載です。テーマは「江戸城」。今回は連載「江戸城のすべて」を始めるにあたって、どのような内容の連載になるのか、萩原さんにご紹介いただきます!





2つとして同じ城は存在しない! 

城の魅力は、それぞれに個性があること。つくられた時代によって、姿や形、築かれる場所、規模や構造、役割が異なります。築城者の社会的地位や財力、センスやクセも反映されますし、地勢や地質の違いによって地域性も生じます。私たちを虜にするのは、そのひとつひとつにきちんと意味が見出せるからではないでしょうか。そして、時を経ても変わらない日本人の美意識や知恵を共感できるからだと思います。

鉄道ファンが車体のフォルムや色、エンジン音の違いに一喜一憂し心ときめかせるように、城にも豊かな個性と奥深いサイドストーリーがあります。もちろん、そのすべてに熱狂したり共感する必要はありませんが、ほかの城との違いや特徴を知り意識して歩くと、城歩きがぐっと楽しくなるはずです。

江戸城、巽櫓
巽櫓(たつみやぐら)。皇居ランナーも駆け抜ける内堀通り沿いに、江戸時代から現存する櫓だ。


江戸城こそ、大都市・東京の土台

1,000人以上の方に江戸城を案内してきましたが、ほとんどの方が口にするのが「東京でこんなにおもしろい城を見られるとは思わなかった!」という感想です。そう感じるのは、誰もが大都市・東京に城の片鱗を発見でき、日本屈指の城を連想することができるからです。

高速道路が網目のように走り、高層ビルが建ち並ぶ東京には、城の姿など跡形も残っていないように思えます。しかし、少し目を凝らせば、現在も江戸時代最大の城が息づき、共存しているのがわかります。なぜなら、東京の土台は江戸城だから。江戸城を中心として江戸の町はつくられ、東京へと変化し、発展してきました。

どんな城も現在進行形で地域に息づいているものです。東京のあちこちに残る江戸城の欠片をつなぎ合わせることで、誰でも江戸時代にワープでき、江戸時代最大かつ最高峰の城を歩けます。江戸城を知れば知るほど、東京という現代の都市が江戸城を中心に発展してきたこと、江戸城なくしては現在の東京はないことも実感できるでしょう。

江戸城、赤坂御門の石垣
東京ガーデンテラス紀尾井町「テラスの小径」からのぞむ赤坂御門の石垣。石垣は外堀通り沿いに残り、頭上には首都高速道路も走る

江戸城を知って、江戸時代にワープしよう

江戸城ってどこにある?  はじめての江戸城見学」では、皇居東御苑を中心に江戸城中心部の特徴と見どころを、「太田道灌・徳川幕府・そして皇居へ  江戸城の歴史」では、江戸城の歴史を簡単にご紹介しました。この連載では、江戸城の築城にまつわるストーリーを中心に、見どころや歴史をさらに深くお話ししていきます。築城時の時代背景、立地や地形、設計などの特徴はもちろん、城の変遷、天守や御殿の構造や装飾、石垣の積み方や石材の採石法、さらには江戸の町づくりや幕府のしくみまで、さまざまな視点から江戸城の全貌と魅力に迫ります。実際の江戸城散策に役立つ、内郭および外郭の見どころもお届けします。

この連載が、あなたを江戸城の世界に誘う招待状になりますように。


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執筆・写真/萩原さちこ
城郭ライター、編集者。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演など行う。著書に「わくわく城めぐり」(山と渓谷社)、「お城へ行こう!」(岩波書店)、「日本100名城めぐりの旅」(学研プラス)、「戦う城の科学」(SBクリエイティブ)、「江戸城の全貌」(さくら舎)、「城の科学〜個性豊かな天守の「超」技術〜」(講談社)など。「地形と立地から読み解く戦国の城」(マイナビ出版)2018年9月14日発売、「続日本100名城めぐりの旅」(学研プラス)2018年9月18日発売。ほか、新聞や雑誌、WEBサイトでの連載多数。公益財団法人日本城郭協会理事兼学術委員会学術委員。

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