城の自由研究コンテスト 子どもたちの好奇心が最高の作品に!第21回「城の自由研究コンテスト」小学生の部・中学生の部 レポート

毎年、小学生・中学生を対象に(公財)日本城郭協会が募集している「城の自由研究コンテスト」。その年の優秀作品は年末に開催される「お城EXPO」で展示され、大人顔負けのハイレベルな作品の数々をご覧になった方も多いはず。今回は、2022年度に募集された第21回「城の自由研究コンテスト」小学生の部・中学生の部の審査結果をレポート。また併せて、審査委員長の加藤理文先生による講評もご紹介します。

「城の自由研究コンテスト」とは?

毎年小学生・中学生を対象に、お城をテーマにした夏休みの自由研究を募集しているコンテスト(個人でも団体でも応募可)。12月に入賞作品を発表し、表彰式を行っています。2016年から優秀作品が「お城EXPO」で展示されるようになり、お城ファンの間での認知度も注目度も一気にアップしました。応募作品は小学生の部と中学生の部に分けて1次審査から最終審査まで3回の審査を経て、文部科学大臣賞、日本城郭協会賞、ワン・パブリッシング賞、優秀賞、佳作を選出。審査員の先生方によると、応募作品の完成度は年を追うごとにアップしているそうです!

第21回「城の自由研究コンテスト」 小学生の部・中学生の部 審査結果を発表!

2022年に募集された第21回のコンテストは、小学生の部が個人応募81作品・団体応募10団体25作品の計106作品、中学生の部が個人応募31作品・団体応募12団体61作品の計92作品の応募がありました。2022年も募集期間に新型コロナウイルスの感染が拡大した影響から応募数は前年を下回りましたが、前年度に続いて住まいの近所にある城郭跡を研究テーマにしたものや、文献などで入念に調べた上で自らの考察を食わるなど、城郭訪問が難しい時期ならではの工夫も多く見られたそうです。

そんな中、小学生の部・中学生いずれも20作品が1次審査を通過し、さらに10作品が2次審査を通過。そして最終審査で各審査員の採点と評価で最高得点を集めた作品に文部科学大臣賞、続く高得点の作品に日本城郭協会賞とワン・パブリッシング賞を選出。さらに優秀賞に4作品、佳作に8作品が選ばれました。

 城の自由研究コンテスト
過去のお城EXPOでの展示の様子

では各部門の受賞作品を、審査委員長を務めた日本城郭協会理事・加藤理文先生による一部講評と併せてご紹介しましょう。

■文部科学大臣賞(小学生の部)

「道庭城の謎が謎を呼ぶ」(足立晴音さん/小6)
第21回「城の自由研究コンテスト 小学生の部・中学生の部」、文部科学大臣賞

道庭城を特定するために、あらゆる角度から探究していこうとする姿勢に執念を感じました。道庭城の研究3年目になりますが、手法を変えて、字名、宗教、寺院、氏族に調査を広げ、追究していったのは、実に見事であると同時に、郷土史研究、歴史地理学研究のお手本ともなります。調べて分かったことから新たな疑問が生まれ、さらに追究していくのは難しい作業ですが、見事にまとめ上げています。満場一致による受賞決定でした。(加藤理文先生による講評、以下同)

■文部科学大臣賞(中学生の部)

「城館なき城主~廃城後の城は本当に使えなくなってしまったのか~」(永山勘太さん/中2)
城の自由研究コンテスト

今までにない着眼点で、土豪・地侍クラスの城館にスポットを当てただけでなく、切り口も独創的であり、現地調査もしっかり行い、城だけでなく歴史学への広がりを感じた作品です。研究の途中で仮説を新たに立て直したり、訂正したりして、そこから結論づけていくことで、研究を深めることに成功していると感じました。しっかりとした聞き取り調査をしたことも評価されます。失われた城跡の研究という、新たな視点の取り組みに対し満場一致で受賞が決定しました。

■日本城郭協会賞(小学生の部)

「文化財 名古屋城」(鵜飼壮さん/小5)
第21回「城の自由研究コンテスト 小学生の部・中学生の部」、日本城郭協会賞

調査項目がしっかりしており、課題まで含めて良くまとめ上げています。文化財を守るという視点に絞って、他の城と比較して徹底的に調べた点が評価されました。アンケートも形だけに終わらず、その内容も意義深く、極めて効果的でした。

■日本城郭協会賞(中学生の部)

「新説石垣山城~石垣山城の定説の課題~」(伊藤拓生さん/中2)

石垣山城の一夜城伝説から天守の考察、さらに笠懸山城の存在なども含め、独自の考察でまとめたのは良かったと思います。本当の姿を探るための比較調査、分かったことからさらに研究を深めた点は評価されます。最後のまとめ方を工夫すれば、さらに良い作品に仕上がると感じました。

■ワン・パブリッシング賞(小学生の部)

「石垣の強さの秘密に迫る」(内田智也さん/小6)
城の自由研究コンテスト

崩れてしまう石垣と崩れない石垣に疑問を持ち、実験を行い、データをもとに調査した点が、審査員の先生方から高い評価を得ました。実際に積み上げて調べたのは、小学生らしく、まとめ方も伝わりやすく良かったと思います。

■ワン・パブリッシング賞(中学生の部)

「正保城絵図から読み説く 掛川城の真の姿Ⅱ~山内一豊が張り巡らせた掛川城の防御の仕組みを探る~」(中脇光翼さん/中1)
第21回「城の自由研究コンテスト 小学生の部・中学生の部」、ワン・パブリッシング賞

昨年から引き続き、絵図から見た素朴な疑問を課題として、江戸時代の正保城絵図を現地調査や地形、地質を調べるという地道な作業をして、今と比べたことが良かったと思います。また、簡潔な文と絵だけでなく、模造紙を使ったまとめ方が上手で、とても分かりやすいと審査員の先生方からの評価を得ました。

■優秀賞(小学生の部)

「姫路城の歴史とひみつ」(長谷川太一さん/小4)
「なぜ再建したのか?高知城 天守と本丸御殿再建のナゾ」(横山陽仁さん/小5)
「直江兼続の頭脳を想像して~幻の神指城~」(賀田琥祐さん/小6)

いずれの作品も、しっかりとしたテーマ設定をして観察調査を実施し、結果をまとめることができていました。もう一工夫あれば、上位3賞受賞に食い込む作品として評価しました。

■優秀賞(中学生の部)

「宇喜多直家・秀家の城跡からみる城の変遷~中世の山城から近世の平山城へ~」(川上結輝さん/中1)
「岩槻城の大構はどこ行った」(浅井俊宇さん/中3)
「徳川軍はなぜ負けた?~武田氏から迫る~」(池崎朝飛さん・保坂累維さん/中3)

いずれの作品も、課題に対しても丁寧に調べまとめ上げた点が評価されました。

■佳作

「沖縄・中北部のグスク~古琉球の按司たちの居城~」(足立旺亮さん/小2)
「なんこう不落の名城とおそれられた小田原城そうがまえの弱点!!」(各務日乃さん/小2)
「ぼくの石垣ひみつ図鑑」(中村勇斗さん/小3)
「元寇と古代山城~600年の眠りから覚めた最強の城たち~」(外林海生さん/小5)
「小田原合戦~勝負のゆくえ~」(原田和弦さん/中1)
「日本一の賢い城『上田城』~真田昌幸の生涯から紐解く、驚くべき真田の戦略~」(大塚俊太朗さん/中1)
「落城から難攻不落へ~諏訪原城~」(篠宮颯介さん/中2)
「江戸城と富士山~その関係性を3つの観点から探る~」(髙井柊輔さん/中3、佐々木友愛さん/中2、鞠夏希さん/中2)

佳作の小学生の4点、中学生の4点も、丁寧に調べ上げた作品となっており、大変良かったと思います。

■団体賞

残念ながら今回は該当がありませんでした

“ほんの一工夫”が独自性のあるお城の研究を生み出す!

第21回「城の自由研究コンテスト 小学生の部・中学生の部」、表彰式
お城EXPO 2022のイベントステージで行われた表彰式。写真は「文部科学大臣賞・小学生の部」を受賞した足立晴音さん

入賞20作品は今回も「お城EXPO」で特別展示され、さらにイベントステージで表彰式を実施。受賞者全員とその家族・関係者などを招き、お城EXPO一般来場者が見守る中、賞状が授与されました。ちなみに足立晴音さんは「三郷市が有名になってほしい」という地元愛から3年続けて道庭城を研究テーマとし、なんと2年連続で文部科学大臣賞を受賞! まさに継続は力なり!

第21回「城の自由研究コンテスト 小学生の部・中学生の部」、表彰式
「文部科学大臣賞・中学生の部」を受賞した永山勘太さん

2022年は新型コロナウイルス感染症の行動制限がなくなったこともあり、今回文部科学大臣賞に選ばれた2作品は、いずれも現地調査をしっかり行った上で自分なりの考えを持って結論を導き出した、まさに研究のお手本というべき力作でした。それでも加藤先生によると「上位と下位の差はそれほど大きくありませんでした」とのこと。探究段階の掘り下げ方など、ほんの一工夫、一ひねりが差を分けたそうです。

今回応募して「もっと上を目指したい」と意欲を燃やしている方も、応募できなかったけど「面白そうだな」と興味を持った方も、身近な地域に目を向けた独自性のあるテーマを設定し、自分にしかできない自由研究にぜひチャレンジしましょう!

「城の自由研究コンテスト 小学生の部・中学生の部」

主催 公益財団法人日本城郭協会
共催 株式会社ワン・パブリッシング
後援 文部科学省/教育新聞社/読売KODOMO新聞/読売中高生新聞/城びと
協力 童友社

城の自由研究コンテストについては、日本城郭協会のサイトをチェック!

▼第18回コンテストの表彰式レポートの詳細

▼第19回コンテストの表彰式レポートの詳細

第20回コンテストの表彰式レポートはこちら

執筆:城びと編集部、写真:お城EXPO実行委員会・城びと編集部