【インタビュー】体が続く限り続けたい─第1回日本城郭文化振興賞「番場の歴史を知り明日を考える会」

日本城郭協会の公益財団法人移行10周年を記念して創設された、日本城郭協会大賞、日本城郭文化振興賞、日本城郭文化特別賞。城郭文化の振興に貢献した団体及び個人を顕彰する目的の賞です。受賞された団体へのインタビュー2回目は、日本城郭文化振興賞を受賞した、「番場の歴史を知り明日を考える会」の取り組みをご紹介します。

城郭文化の振興に貢献した団体・個人を顕彰するため日本城郭協会が創設した日本城郭協会大賞。その第1回で日本城郭文化振興賞を受賞した「番場の歴史を知り明日を考える会」の取り組みをご紹介します。

今回は授賞式にも参加した、日本城郭文化振興賞を受賞した、「番場の歴史を知り明日を考える会」の泉さん、酒井さん、宮川さんにお話を伺いました。最初は「鎌刃城というお城を知らなかった」というみなさん。そこからどのように保全・普及活動に携わってきたのでしょうか。

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【鎌刃城(滋賀県)の概要】
浅井氏・京極氏と六角氏の攻防の舞台となった山城、鎌刃城(滋賀県米原市)。築城時期などは未だわかっておらず、発掘調査なども進められています。現在は調査はされていません。そんな鎌刃城の啓発・普及・保存活動に取り組んでいるのが、民間管理組織「番場の歴史を知り明日を考える会」(滋賀県)。平成4年に発足し、地元番場の歴史を伝えるべく講演会や鎌刃祭りなど様々な企画も継続的に行い、今年で30周年という記念すべき年に城郭文化振興賞の受賞に至りました。

▶【続日本100名城・鎌刃城(滋賀県)】大発見!当時の水の手遺構が見られる、戦国時代の「境目の城」

地元の小学生の印象に残る取り組みを続けていきたい

日本城郭文化振興賞、番場の歴史を知り明日を考える会
左から酒井さん、小和田先生、泉さん、宮川さん

(編)この度は受賞おめでとうございます。今回の受賞の喜びや、取り組みについてお聞かせください。
(泉さん)大変ありがとうございます。5年前に続日本100名城に制定されてから、それ以降たくさんの人が全国から訪れてくれて、地域が活性化してきて喜んでいたんです。また、今回の受賞も、特に第1回の文化振興賞というのにも意味があると感じています。
中井均先生とは、会ができる30年以上前からのお付き合い。ほとんどの方が鎌刃城を知らない頃から、先生には城跡の勉強会や発掘調査、町・県・国史跡指定とお世話になってきました。

(編)そんな前からのお付き合いなんですね。
(泉さん)鎌刃城は、我々も長年住んでいても名前を知らない存在だったんです。
今は毎年地元の小学6年生に鎌刃城登山ということで、歴史の勉強や森林体験をしてもらっています。少しは印象に残る取り組みを続けていきたいですね。

(編)今回の表彰でも小学生へのアプローチが評価されていましたよね。ほかにどのような取り組みをされているんでしょうか。
(泉さん)毎年5月に鎌刃城まつりを開いています。午前中は現地見学会で、午後には歴史の講演会を行っています。今年で16回目になりますね。

(編)16回! 地元のお祭りとして定着して、毎年いらっしゃる方もいるのではないでしょうか。
(泉さん)毎年来られる方ももちろんいます。あとは、これまでは地元の「ふるさと味の会」の皆さんに「石垣団子」と称した手作り団子を作ってふるまっていました。
ほかの取り組みでは、琵琶湖一周のろし駅伝があります。40か所くらいの城跡がのろしをあげるんですね。11月23日にやっていて、年1回の総会や情報交換をしています。20年続いていますね。これもうちからはじめたんです。

誰も知らなかった鎌刃城でも城跡が残っているんですよね。ということは、どこの地域にでも城跡があるのですよと仲間を誘っています。そして、伝える活動としても、やはり継続が大事だと感じています。

(編)ちなみに、最初に「住んでいたけど鎌刃城を知らなかった」とおっしゃっていましたが、知るきっかけはなんだったんでしょうか?
(泉さん)「番場の歴史を知り明日を考える会」がきっかけですね。「少子高齢化の進む番場のまちづくりをしていこう」というときに、やはりこの地は歴史のまちのため歴史をふまえてまちづくりに取り組まないといけないと思い、勉強をしてきました。そこで、行政を通じて中井先生に講演をしていただいたりする中「こんなお城があったのか」という発見につながりました。

(酒井さん)知っていくにつれ、「このお城は伝えていかなくては」という思いが強くなりました。(豊臣)秀吉が助けに行ったとか、(織田)信長が壊したとか…歴史がわかってくるとすごさがよりわかってくるな、と。
(宮川さん)中山道など、この地方にはさまざまな魅力があります。基本はまちづくりからスタートしました。最初はお城…ということは知らなかったけれど、今はお城を核としたまちづくりができればいいなと思っています。

こまめに現地に通っているからこそ素早く整備ができる

鎌刃城、物見櫓
北曲輪の物見櫓。こうした整備も会が行ってくださっている(読者投稿:イオさん)

(編)鎌刃城は山城の中でも堀切なども多く、整備が大変ではないでしょうか?
(泉さん)今でも山ヒルにくわれることはあります。(笑) 
(酒井さん)山城ですし滑り落ちることもあって、ここが危ないな、と思ったら登山道整備も我々でやっていますね。たとえば鎌刃城の西曲輪の堀切をこえていく方は(急斜面のため)ほぼいないかもしれませんが、ロープをずっと張ってます。これも鎌刃城の魅力の一つですので。

(編)整備作業は自治体がされるのだと思っていました。
(酒井さん)我々は週1回~月に何回か見に行くので、壊れた階段もこまめに直せますし。
(宮川さん)危ないところは早く対応したほうがいいですから、ロープで止めたり、我々がやったりします。
(泉さん)高低差があるので危ない面もあるのですが、それだけ興味深いことも多い。(北曲輪の)水の手は今でも水も流れていますしね。井戸もないし溜池もない城での生活用水の確保のための水の手で、碁石等が出てきてるから生活はしていたんでしょうね。資料も元々そこまでなかったからわからなかったけど…。

後継者不足はどこも課題。けれどもできる限りのことはしていきたい

(編)あまり資料などは残っていないけれども、人が住んでいたということがわかる、というのは興味深いですね! そういった遺構を守るための取り組みを、地元の方でここれだけ長く続けているところも珍しいと思いますが、今後の展望などがあれば教えてください。
(泉さん)30年続けているところはあまりないと思いますね。行政は仕組みとして担当者がすぐ変わってしまうこともありますし。

(編)確かに、長期的に同じ方が取り組めるということが有志の団体ならではですね。
(泉さん)小学校でお話した子には、保全活動の呼びかけをしていくつもりです。
やはり、どこの団体も後継者は課題ですので我々「番場の歴史を知り明日を考える会」でもできるだけやっていこうと思っています。

鎌刃城、番場資料館
番場資料館。令和3年度米原市景観形成建造物に指定されている(鎌刃城ホームページより)

(編)そういえば、「番場資料館」も一昨年オープンされましたよね。
(酒井さん)実は番場資料館の家賃は、御城印の売り上げで賄っているところもあるんです。
(編)北曲輪でも御城印も販売されていますよね。運営において、お金の問題は現実的にはシビアな問題です。
(泉さん)今はおかげさまで御城印の収益がありますが、継続にはどうやって資金や協力金を得ていくのか(課題としてはあります)。ただ、鎌刃城の魅力が伝わるよう、体が続く限りはこの活動を続けていきたいですね。

今は当たり前に感じている「地元」のお城の存在を知ったときの感想、そしてそのお城を保全・継承していく活動について、熱くお話をしてくださいました。
鎌刃城まつりなど、「番場の歴史を知り明日を考える会」の活動は「鎌刃城ホームページ」(http://blog.livedoor.jp/kamahajyo/)でも掲載されていますので、ぜひチェックしてみてください。過去の活動記録も掲載されています。

2つの自治体で連携して調査に取り組んでいる大東市・四條畷市さん。そして市民の方々が連携して保全や普及に取り組んでいる「番場の歴史を知り明日を考える会」さん。まったく違う組織・背景があるからこそのお話が伺えました。

調査、保全、整備。どれが欠けてもいけないもの。活動してくださっている方に感謝と敬意を持ってお城を楽しんでいきたいですね。

執筆・写真/城びと編集部
協力/公益財団法人日本城郭協会

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