熊本城の「いま」 第13回 熊本城特別公開第2弾!地上約6mから観覧する「令和の築城」

平成28年熊本地震から4年あまり経った2020年6月1日(月)、復旧が進む熊本城特別公開第2弾として、高さ約6mの特別見学通路が開通しました。特別見学通路をたどりながら、熊本城の「いま」を記憶に刻んでみませんか。



平成28年熊本地震から4年あまり

熊本城、天守閣
特別見学通路から一望する大天守(左)と本丸御殿(右)

熊本城は周囲5.3㎞にもおよぶ広大な城郭で、往時には櫓が49、櫓門が18、城門が29あったとされます。平成28年熊本地震では、50箇所の石垣が崩落し、国指定重要文化財建造物13棟すべてが被災するなど、甚大な被害を受けました。

完全復旧までの道のりは長く、全体では約20年かかるとのこと。しかし、ただ復旧を待つだけではなく、復旧する様子を見学できるように工夫されています。2019年10月5日(土)には特別公開第1弾として、立入規制されていた区域の一部に入城し、宇土櫓や天守閣の姿をより近くから観覧できるようになりました。

熊本城、特別見学通路、本丸御殿
特別見学通路を使って本丸御殿に向かう

そして2020年6月1日(月)には、地上からの高さ約6m、長さ約350mの空中回廊「特別見学通路」が公開されました。熊本地震後に近づけなかった崩壊した石垣や、被災した建造物、熊本城の石垣でも特に有名な「二様(によう)の石垣」や本丸御殿の地下通路「闇(くらが)り通路」を間近から見学できるようになりました。

“新たな視点”から見る遺構と震災の跡

熊本城、飯田丸五階櫓
石垣復旧工事にともない解体された飯田丸五階櫓

特別見学通路の入口(特別公開南口)は、現在解体中の飯田丸五階櫓(いいだまるごかいやぐら)の北側。特別見学通路に入ると、進行方向左手には、地震によって一部の石垣が崩落した数寄屋丸二階御広間(すきやまるにかいおんひろま)、右手にはあったはずの飯田丸五階櫓は解体され、現在その姿を見ることはできません。築城前よりもはるかに古く、樹齢約800年といわれる大きなクスノキは健在です。

熊本城、特別見学通路、二様の石垣
2つの時期の石垣が並ぶ二様の石垣

左手には復旧が進む天守閣の姿がだんだん大きくなり、まさに大天守の正面あたりで特別見学通路は右に折れます。

目の前には熊本城の代表的な遺構のひとつ二様の石垣。加藤清正が築いた初期の石垣と、清正より新しい時代の石垣が並び、石垣の変遷がよく分かります。空中回廊の様々な角度から、二様の石垣を堪能してみてください。

空中から連続外桝形を越え東竹の丸へ

熊本城、特別見学通路、連続外桝形
熊本地震の被害が残る連続外桝形

二様の石垣を左手にして反対の右手を見ると、驚くべき光景に出会います。なんと連続する桝形が足元に広がっているのです。飯田丸と竹の丸を結ぶ、6回にわたり折れ曲る通路は、熊本城を代表する防御機能。地震によって石垣が崩落しており、被災当時のままの姿が残されています。

空中から桝形を眺めながら進むと、熊本城の東の防衛を担う東竹の丸にさしかかります。東竹の丸には、10棟の国指定重要文化財の櫓群が高石垣の上に建ち並んでいます。そのすべての櫓や櫓門が倒壊や一部破損の被害を受けました。

熊本城、闇り通路
本丸御殿への地下通路である闇り通路

櫓群に目を奪われながら特別見学通路を進むうちに本丸御殿へと到着。本丸御殿は、熊本城築城400年を記念して2008年に完成。絵図・古写真や古文書、発掘調査の成果をもとに、築城当時の技術が研究され、できる限り地元の材料で、地元の職人たちの手で復元が実現されました。平成28年熊本地震では、各広間の壁が剥がれ落ちるなどの被害があり、狩野派の絵師によって中国前漢の元帝の時代の悲劇の美女が描かれた障壁画を再現していた、「昭君之間(しょうくんのま)」の床も沈下しました。

内部には入れませんが、全国的に珍しい地下通路、闇(くらが)り通路は見学可能。石垣で造られ、日本全国の御殿建築のなかでも異例のもので、御殿への正式な入口も地下にあったのです。

目近に望む天守閣の復旧現場

熊本城、天守閣前広場
工事が行われない日曜・祝日は、二の丸広場を通じて天守閣前広場まで移動できる

闇り通路を抜けると、いよいよ天守閣前広場に到着。復旧工事が進む天守閣を間近に見学できます。屋根瓦の目地や破風に塗られた新しい漆喰の白と、下見板の黒が鮮やかに映えています。

大天守と小天守が並び建つ現在の天守閣は、昭和35年(1960)に外観復元されたもの。大天守は外観3重、内部は地上6階地下1階建て。現在は伝統技法と地震に備えた最新技術を融合させ、震災復興のシンボルとして復旧作業が進められています。

 熊本城、御城印、御城印帳
天守閣前広場のお休み処で販売されている熊本城御城印と御城印帳(写真提供:熊本国際観光コンベンション協会)

天守閣前広場に設けられているお休み処にも立ち寄ってみましょう。御城印や熊本城御城印帳などの限定熊本城グッズが販売されています。天守閣の目前で城グッズが買えるのは珍しく、登城記念におすすめです。

特別見学通路以外でも熊本城を楽しむ!

熊本城、宇土櫓、大小天守
二の丸広場から望む宇土櫓と大小天守

特別見学通路を満喫した後は、二の丸広場を経由して、加藤清正を祀る加藤神社へ参拝しましょう。

二の丸広場からは「第三の天守」とよばれる宇土櫓とともに大・小天守が並び、3棟の建物がまるでスクラムを組んでいるかのように力強い姿を見せています。

熊本城、加藤神社、天守閣
加藤神社からは、天守閣とともに堀と高石垣の規模を体感できる

加藤神社からは、大きな堀越しに大・小天守と宇土櫓が迫力ある姿で望めます。境内は清正にふれられる場所でもあり、熊本城築城の際に清正がお手植えされたと伝わる清正公お手植えの銀杏や、清正公が文禄の役の記念として持ち帰ったとされる太鼓橋なども見逃せません。

熊本城、熊本城ミュージアムわくわく座、熊本城VR
熊本城特別見学通路の見どころを臨場感たっぷりに伝える、スタッフのライブ解説(写真提供:熊本城ミュージアムわくわく座)

江戸時代の城下町を思わせる観光施設が並ぶ「桜の馬場 城彩苑」も立ち寄りたいスポット。桜の小路では、お食事からお土産まで熊本県内の選りすぐりをお楽しみいただけます。また、併設されている「熊本城ミュージアム わくわく座」では、江戸時代から熊本地震被災前の熊本城の姿を大迫力のVRで再現。時代を行き来しながら、熊本城の歴史や城郭の迫力を体験できます。特別公開通路の見どころを、最新のVR映像とスタッフのライブ解説で学べます。

■熊本城ミュージアムわくわく座の詳細はこちら

2021年春には天守閣完全復旧・内部公開!

熊本城、特別公開第3弾
特別公開第3弾では、天守閣の内部まで入れるようになる予定(写真はCGイメージ)

熊本城特別公開第2弾から利用できるようになった特別見学通路(南ルート)は全日公開、第1弾から公開されている北ルートは原則として日曜・祝日のみの公開です。(※公開スケジュール詳細は、下記データ欄の公式ホームページよりご参照ください。)

2021年春には、天守閣全体の復旧が完了し、天守閣の内部まで入れるようになる予定です。完成を待つだけではなく、日々復旧が進む熊本城の「いま」も目に焼き付けてみてください。


<基本情報>
熊本城特別公開
期間:2020年6月1日~※特別見学通路(南ルート)は全日公開、北ルートは日曜・祝日のみ公開
TEL:096-223-5011(熊本城運営センター)
入園時間:9:00~17:00(最終入園16:30)
入園料:大人500円、小人200円、未就学児無料
※天守閣内部の入場は不可。
熊本城特別公開公式HP

熊本城ミュージアム わくわく座
住所:熊本県熊本市中央区二の丸1-1-1
電話番号:096-288-5600
開園時間:9:00~17:00
入館料:300円、小・中学生100円(熊本城との2館共通券:高校生以上600円、小・中学生200円)
定休日:12月29~31日

写真/熊本城総合事務所(御城印帳と熊本城VRの写真を除く)
執筆/城びと編集部

※歴史的事実や城郭情報などは、各市町村など、自治体や城郭が発信している情報(パンフレット、自治体のWEBサイト等)を参考にしています。
※熊本城では、昭和35年(1960)に再建した天守を「天守閣」、明治10年(1877)に焼失する前のオリジナルの天守を「天守」として、表記を区別しています。

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