2017/12/19
城びとインタビュー 春風亭昇太師匠インタビュー[後編] | 山城ブームを一過性にしないために、ぜひ木々の伐採を!
お城好きの著名人に、城を好きになったきっかけやその楽しみ方を聞く「城びとインタビュー」。山城好きとして知られる春風亭昇太師匠は、最近の「山城ブーム」について「これがスタンダードな状態」と語ります。
お城のスタンダードはむしろ山城
—足繁く山城に通っている昇太師匠。近年は山城ブームとも言われますが、実際に感じることはありますか?
実際に山城を歩いていて「こんな城にも人が来るんだ!」と思うことが増えましたね。中でも若い女性を見かけることが多くなったと感じます。
僕が城を好きになった頃はお城といえば天守のある城でしたから、山城ファンが増えているのは純粋にとても嬉しい。ただ一方で、今の状態こそが当たり前なんだと思う気持ちもあります。近世城郭よりも山城のほうが圧倒的に数が多いわけで、むしろ山城がスタンダードなのですが、これまでは近世城郭でなければ城じゃないと思われていたんです。近世城郭も山城もどちらもお城で、ただ時代が違うだけ。当たり前のことがようやく認識されてきているので、もっと広まっていけばいいと思います。
もちろん、天守が好きな人は天守を見ればいいし、石垣が好きな人は石垣を見ればいい。城好きにもいろいろいていいと思うんです。でも、山城にも近世城郭に繋がる構造や重なる要素があるので、機会があれば一度見てみることをおすすめします。一度の訪問をきっかけに山城が好きになれば、城の楽しみ方も無限に広がりますから。
全国各地で行われる城イベントにも引っ張りだこな昇太師匠。写真は10月に岐阜県可児市で行われた「山城に行こう!~センゴクの城」の様子
—山城歩きに向いているのはどんな人だと思いますか?
「技術的な仕事をしていて、小説を読むのが好きな人」なんてあっているんじゃないかな? たとえば機械を作っている人は、縄張を見ながら構造の精巧さに感心するはず。小説を読むのが好きな人だと、想像力があるから建物が建っていなくても楽しめると思いますね。
これから山城を好きになる人はラッキー!
—山城のブームを一過性にしないために、どんなことができるでしょうか。
自治体の方々には、山を覆う木々の伐採をお願いしたいです。もともと山城には城下を見張る役割がありましたから、ハゲ山が基本だったわけですよね。雲海に浮かぶ天空の城で有名になった竹田城も、山麓から山上の石垣が見えているからこそ、人気が出たわけです。
それに木々が鬱蒼としていると、写真を撮っても「こんなのただの山じゃないか」と言われてしまうこともあって・・・。「心の目で木々を伐採して想像するんだよ!」と言っても、みんな口を揃えて「できない」という。そりゃそうですよね(笑)。誰もがここが山じゃなくて城なんだとわかるようにするには、木を伐採することがベストだと思います。
地元静岡にある韮山城の天ヶ岳砦を歩く昇太師匠。断崖のような土橋を、ストック片手に果敢に進む
—昇太師匠は今後どういった形で山城ブームを盛り上げていきたいと思いますか?
僕はとにかく山城を見に行って「ここにこんな良いお城があるよ!」と言い続けることが自分の役目だと思っています。
最近は僕の時代からは信じられないくらい山城の研究が活発になっていて、刺激的な発見も多いです。これから山城を好きになる人はラッキーだと思いますよ。研究者と同じタイミングで、発掘や研究の最前線に立ち会えるんですから。これからも研究を進められている先生たちと一緒に、いろいろ発信していきたいと考えています!
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城びとプロフィール
春風亭昇太
落語家。1959年生まれ。静岡県出身。1982年に春風亭柳昇に弟子入り、92年に真打ちに昇進。2016年5月から、人気長寿番組「笑点」の司会を務めている。2011年に『城あるきのススメ』(小学館)を出版。ブログ「ザブトン海峡・航海記」では師匠が行った山城レポート記事も多数。
執筆者/かみゆ歴史編集部(滝沢弘康、小沼理)
書籍や雑誌、ウェブ媒体の編集・執筆・制作を行う歴史コンテンツメーカー。日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなどを中心に、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける。城関連の最近の編集制作物に、『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』『完全詳解 山城ガイド』(ともに学研プラス)、『日本の山城100名城』『超入門「山城」の見方・歩き方』(ともに洋泉社)、『カラー図解 城の攻め方・つくり方』(宝島社)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、「廃城をゆく」シリーズ(イカロス出版)など。