甲府城下町でグルメ散策! 江戸に負けない煌びやかな町だった

新宿駅から特急列車に乗り、約1時間40分で到着する山梨県甲府市。2019年には開府から500年を迎え、ますます賑わいをみせています。甲府城周辺は、歴史と甲州グルメが味わえる魅惑の観光地!甲府発祥のグルメやデザート、さらには城と関係のある温泉まで、甲府が誇る見どころスポットをたっぷりご紹介します。(※2019年8月1日初回公開)



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甲府城下町マップ

武田氏滅亡後に築かれた甲府城

甲府城、石垣
1600年以前築城期の石垣がこれほど残っている城は、とても貴重で見応えがある。写真の左上にあるのが天守台だ

甲府城は、武田家滅亡後の豊臣政権下で築城を開始し、関ヶ原の戦いがあった慶長5年(1600)頃までに完成しました。徳川政権下になると江戸を守る西の抑えとして重要視され、幕府直轄領になるまでは、将軍の子供や幕府の権力者が城主となります。

一条小山と呼ばれる独立丘陵に築かれた平山城で、その全域は東京ドーム4個分もの広さがあったとか! 現在、城跡は舞鶴城公園・甲府市歴史公園として開放され、稲荷櫓(いなりやぐら)や鉄門(くろがねもん)などが復元されています。

甲府城(舞鶴城公園)
住所:山梨県山梨県甲府市丸の内1-5
電話番号:055-237-5702(甲府市観光課)
・舞鶴城公園 稲荷櫓
 開館時間:9:00~16:30(入館は16:00まで)
 定休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12/29〜1/ 3)
※園内は常時開設


甲州夢小路
江戸、明治、大正、昭和の甲府の雰囲気を楽しめる「甲州夢小路」。駅チカにあり賑わいを見せるスポットだ!

城下町は、甲府城の周りに武家屋敷や町人地がめぐります。5代将軍・徳川綱吉の側近・柳沢吉保が城主の頃には、城下町の繁栄がよくわかる記録が残っており、甲府を訪れた荻生徂徠(おぎゅうそらい)の『風流使者記』によると「市街がよく整って、商店に多くの品物が並び、人々の姿ふるまいもほとんど江戸と異なるところがない」と。


江戸と同じくらい繁栄していた甲府城下町は、どれほど煌びやかな町だったのでしょうね。そんな今の甲府城下も、かつての城下町に負けず劣らずの宝箱です。いざ、城下町散策に出かけてみましょう!


甲府のソールフード、甲府鳥もつ煮発祥の「奥藤本店」

奥藤本店
大正2年(1913)に甲府駅前に創業した奥藤本店。手打ちそばや馬刺し、ご飯に野菜とカツがどーんとのりソースをかけた甲州流カツ丼などが食べられるお店

山梨のご当地グルメとして知られる「甲州鳥もつ煮」は、ここ奥藤本店で誕生しました。戦後まもない昭和25年(1950)に、当時捨てられていたニワトリのモツを使って何か作れないかと考案された料理です。

そんな鳥もつ煮が全国的にも有名になったのは、2010年に行われた『第5回ご当地グルメでまちおこしの祭典』。見事、ゴールドグランプリを受賞し、ここから甲府鳥もつ煮の人気が爆発していったのです。

甲府鳥もつ煮
「甲府鳥もつ煮」 小(一人前)530円、大(2,3人前)680円 ※2019年10月以降は値段に変更あり

鳥もつ煮は、ニワトリのレバーやハツ、砂肝、きんかんを、砂糖と甘辛い醤油に絡めた絶品料理。口に入れると……うんまっ! 濃い味が白米にもよく合います。

実は甲府では、そばと鳥もつ煮のセットが定番。奥藤本店では、甲府開府500年を記念して、鳥もつ煮や手打ちそば、信玄鶏の天ぷらにたまごプリンがついた、特別献立メニューも期間限定で提供中。この最強メニューに、体から幸せが溢れ出てしまいそうです!

奥藤本店 甲府駅前店
住所:山梨県甲府市丸の内1-7-4
電話番号:055-232-0910
営業時間:11:30(土日は11:00〜)〜15:00(L.O.14:30)17:00〜20:00(L.O.19:15)
定休日:木曜日
※営業時間は変更になる場合があります。事前にご確認ください。

山梨県民の家庭の味「小作」のほうとう

小作、ほうとう
畳のお座敷や囲炉裏が置かれた店内は、落ち着いた雰囲気で味わいがある

「ほうとう」は、太麺とたっぷりの野菜を味噌で煮込んだ山梨の郷土料理! 山地が多く水田の少ない山梨県では米の収穫量が少なく、ほうとうは、米の代わりによく食べる家庭の味でした。

創業47年、山梨県を中心に10店舗を展開する「小作」は、ほうとうビギナーにこそオススメしたいお店! こだわりの麺、そして創業以来変わらない秘伝のだしやオリジナル味噌を調合したほうとう汁。まさに、ほうとうのために考え抜かれた究極の味がいただけます。

カボチャのほうとう、小作
カボチャのほうとう(写真提供:甲州ほうとう小作)

ほうとうの太麺は、打ったあとに寝かさず、すぐに食べるため煮崩れしやすく、汁がよく溶け込むのが特徴。固すぎず、柔らかすぎず絶妙なもちもち食感です。カボチャ、芋、ごぼうなど野菜のエキスが染み込んだほうとうは、とても美味! 定番のカボチャのほか、辛口カルビほうとうや、あずきほうとうなど、味も多岐にわたり、食べ飽きることがありません。一度食べたら忘れられない味です。

ちなみに、戦国時代……持ち運びがしやすい乾麺であること、そしてお米よりもサクッと料理ができた手軽さから、あの武田信玄もほうとうを陣中食として食べていたとか、いなかったとか。

甲州ほうとう 小作 甲府駅前店
住所:山梨県甲府市丸の内1-7-2
電話番号:055-233-8500
営業時間:月曜日~土曜日…11:00~22:00(L.O.21:10)、日曜日…11:00~21:00(L.O.20:30) ※連休最終日は21:00閉店(L.O.20:30)
定休日:無休
※営業時間は変更になる場合があります。事前にご確認ください。

桔梗信玄餅の桔梗屋「黒蜜庵きなこ亭」でいただく桔梗信玄ソフト⁺

桔梗信玄餅、桔梗屋、黒蜜庵きなこ亭、桔梗信玄ソフト
店内のイートインスペースは、電車越しに甲府城の石垣が見える大興奮席!

甲府駅北口より徒歩5分の場所にある「甲州夢小路」は、明治〜昭和初期の甲府城下町を再現した16店舗が入るショッピングモールです。

ここの一角にある「黒蜜庵きなこ亭」は、山梨土産の定番、桔梗信玄餅を販売する桔梗屋の和カフェです! 桔梗信玄餅の販売のほか、店内のイートインスペースではデザートやドリンクを味わえます。

桔梗信玄ソフト⁺
桔梗信玄ソフト⁺510円(写真提供:株式会社桔梗屋)

つぶしあんと珈琲の相性抜群・大正ロマン「あいすアン珈琲」や、抹茶ときな粉の「プレミアム桔梗信玄生プリン」も大人気のメニューですが、おすすめは「桔梗信玄ソフト⁺」! ソフトクリームには桔梗信玄餅や桔梗信玄棒がトッピングされ、たっぷりの黒みつが包み込みます。散策で疲れた体に、アイスの甘さがじわーっと染み込む。その一口が、もうたまりません!

黒蜜庵きなこ亭 甲州夢小路店
住所:山梨県甲府市丸の内1-1-25 甲州夢小路内
電話番号:055-254-7788
営業時間:10:00-18:00
定休日:ー

駅から徒歩圏内!山梨名産ワインの「サドヤ」

実は、日本における自国生産ワイン誕生の地は甲府! すでに江戸時代には、ワインの原材料であるぶどう、その代表的な品種の一つである「甲州種」の栽培を行っていました。山梨県の盆地の気候は甲州種の栽培に適していたのです。

明治の近代化とともに、国産ぶどうを原料とした日本初のワインが醸造されました。そして現在、山梨県は日本ワインの生産量1位、山梨県内に81場あるワイナリー数も他県に比べてダントツの多さ(全国1位)です!(※平成29年度国内製造ワインの概況:国税庁調べ)

山梨名産ワイン、サドヤ
手前にあるのがサドヤのワインショップ。奥にはチャペルが見える

そんな数あるワイナリーの中からおすすめなのが、JR甲府駅から徒歩5分の立地にある創業100年以上の「サドヤ」です。その歴史は古く、もとは江戸時代には油を売っていた「佐渡屋」が、明治時代になり洋酒・ビールなどを扱うお店に転業。そして、大正6年(1917)にワイン醸造販売を手がける今のサドヤが誕生しました。

山梨名産ワイン、サドヤ
ワイン検定を所有するワインのプロが、あなた好みのワイン選びを助けてくれます

700坪もの広大な敷地には、ワイン醸造場や、ワインと合う料理が楽しめるレストラン、さらには結婚式ができるオシャレな教会もあります。サドヤショップでは、ワインの販売を行っているほか、有料でテイスティングができるカウンターも! お酒が弱いという方には、ぶどうジュースの試飲も可能です。

そして一番の目玉は、ワイナリーや貯蔵庫の見学ツアー! ワインの歴史や醸造過程を学べる、サドヤだけの楽しみ方となっています。こちらは、有料・要予約ですので、事前に確認してから訪れてくださいね。

サドヤワインショップ
住所:山梨県甲府市北口3-3-24
電話番号:055-251-3671
営業時間:10:00-18:00
定休日:年末年始
※営業時間は変更になる場合があります。事前にご確認ください。

市街地の中心に源泉が湧く珍しい「甲府温泉」

お腹も満たされ、歴史も満喫した甲府城下町。城下町歩きの締めくくりには温泉で汗を流したい! 実は、甲府城下町めぐりでは温泉も欠せないスポットなのです。

江戸時代、甲府城内にある「楽屋曲輪(がくやくるわ)」には、温泉が湧出ていたという記録が残っています。甲府温泉は、明治の初め頃に甲府城の堀近くに開業した温泉がはじまりとされ、昭和38年頃には72口もの源泉数があったそう!そんな、現在の甲府温泉の源泉がある場所が「ホテル談露館」です。

甲府温泉
女湯。100%天然の源泉掛け流しのため、湯船には黒い“湯の花”が咲くのが特徴だ!(写真提供:ホテル談露館)

甲府温泉
こちらは男湯。日帰り入浴は税別1,000円でバスタオル&フェイスタオルレンタル付(写真提供:ホテル談露館)

甲府駅から徒歩10分の場所にあるホテル談露館は、明治20年(1887)に創業した老舗のお宿。約130年にわたってたくさんの観光客にくつろぎの空間を提供してきました。

ホテル談露館は、100%源泉掛流しの天然温泉! 市街地に湧出る甲府温泉の泉質は、ナトリウム−塩化物・炭酸水素塩泉とお肌がモチモチになる美肌の湯です。また、体がポカポカして湯冷めしにくいあたたまりの効果があります。日帰り入浴も可能なので、甲府城ゆかりの名湯で、1日中歩き疲れた体を癒してくださいね。

ホテル談露館
住所:山梨県甲府市丸の内1-19-16
電話番号:055-237-1331
立ち寄り湯営業時間:5:00~10:00、12:30~25:00 
※満室時は17:00以降お断りする可能性があるため、予め電話で確認することをおすすめします
料金:1000円(税別)

贅沢な休日を楽しめる甲府城下町

甲府は、東京から日帰りでも行ける距離ですが、1泊2日のまったり旅もよい! 城下町の外れは、堀の名残が今でも確認できるため、時間を使って城下をぐるっと一周するのも楽しいです。

また、甲府城下町からバスに乗り10分ほど行くと、甲府城と同じく日本100名城に選定された武田氏の居館・躑躅ヶ崎館(現・武田神社)があります。武田神社参拝の後は、甲府市武田氏館跡歴史館(通称:信玄ミュージアム)も要チェック! 甲府城とセットで巡ると、一日だけでは時間が足りませんよ。

この週末、甲府の歴史とグルメに癒される旅に出かけてみませんか?

いなもとかおり
 執筆/いなもと かおり
 お城マニア&観光ライター
 30歳になる城マニア。國學院大學文学部史学科古代史専攻卒。19歳の時に、会津若松城に一目惚れしてから城の虜となる。訪城数は500ほど。国内旅行業務取扱管理者、日本城郭検定1級、温泉ソムリエ、夜景鑑賞士2級の資格をもつ。城めぐりの楽しみ方を伝えるべく、テレビやラジオにも出演中。※2021年9月プロフィール更新

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