【続日本100名城・引田城】織豊時代の石垣と化粧池が残る断崖絶壁の海城

香川県と徳島県の境にあり讃岐国(香川県)の重要な役割を担った引田城。瀬戸内海東部の播磨灘に面し、淡路島も見える眺望に恵まれた「海城」です。しかも織豊時代の石垣や、女性たちが化粧用に使っていた池など、みどころが盛りだくさん。JR引田駅を起点に、往時のたたずまいを残す城下町散策と合わせてご紹介します。

織田信長ゆかりの築城術と海景色広がる「本丸跡」

播磨灘、引田、町並み
天守台跡からは播磨灘や引田の町並みが一望できる

阿波(徳島県)との国境を守備した引田城(ひけたじょう)は、西側が播磨灘に面し淡路島を望めます。標高82mの城山の山頂に築かれた「山城」でありながら、北側と南側も海に面し三方を海に囲まれた「海城」でもあります。残された東側に登城口があり、登城口から急な登り道を登ること約10分で、いきなり本丸に到着。引田城跡の初期に築かれた算木(さんぎ)積みが残っています。

本丸跡、古式、算木積み
本丸跡に残る古式の算木積み

引田城では、建物の礎石や多くの瓦が見つかっており、織田信長の安土城築城から始まった織豊系城郭(しょくほうけいじょうかく)のひとつに数えられます。

女性たちが化粧のために利用していた池

本丸跡、化粧池
本丸跡から化粧池に向かって一気に下る

本丸到達からが引田城散策の本番です。海に向かうかのような急な石段を下りると、水をたたえた池に出合います。「化粧池(けしょういけ)」と呼ばれ、引田城のお姫様や女中たちが、この池の水を化粧の際に利用していたことに由来。また、岩山を利用した引田城にとって水は死活問題。水不足を克服するために造られた人工の貯水池でもあります。

化粧池、曲輪
化粧池に残る石垣はほかの曲輪(くるわ)より後世に築かれた

化粧池からさらに下り、海の波音が大きくなってくると今度は灯台がたたずんでいます。この「引田鼻(ひけたはな)灯台」からは播磨灘や淡路島が見鳴門(なると)海峡の水路がよく見えます。昭和29年(1954)に引田鼻灯台は初点灯。築城から約400年経った後も、引田城の立地の重要性は変わらなかったのです。

引田鼻灯台
引田の人々にとって重要な役割を果してきた引田鼻灯台

迫力満点の野面積みが連なる「北二の丸跡」

北二の丸、大手道
北二の丸下には城の出入り口である「大手道」が通っていた

引田鼻灯台より先は上りになり、三の丸跡を経て北二の丸へ到達。西面にびっしりと積み上げられた野面(のづら)積みの高石垣。上段2~3m、下段5~6mの高石垣が残、上段の石垣は引田城内で最も大きな石材が使われています。下段の石垣には、間詰(まづ)め石が丁寧に詰められているので、ぜひじっくり見てください。大手道を登っていくと、再び本丸に到着します。

「西の丸亀城、東の引田城」として重要な役割

引田城はもともと、応永年間(1467~1469)に、中国地方の有力者、大内氏の家臣寒川(さんがわ)氏が領したという記録が残ります。戦国時代には、阿波の三好(みよし)氏が奪うなど何度も城主が変わりました。天正11年(1583)には、四国の長宗我部(ちょうそかべ)氏の侵攻を受け豊臣秀吉の家臣・仙石秀久(せんごくひでひさ)が入城するも撤退。

断崖地形
三方が海に囲まれた断崖地形を利用した

現在の引田城へと、本格的に改修したのは生駒親正(いこまちかまさ)。天正15年(1587)、播磨国(兵庫県)赤穂(あこう)から讃岐に移り、国境守備の城として引田城を重視しました。高松城(香川県高松市)を中心とし、西は丸亀城(香川県丸亀市)、東は引田城が重要な拠点だったのです。

「赤壁の醤油醸造所」や「郵便局カフェ」に出会える城下町散策

引田城本丸跡からよく見えていた町並みも、城下町の雰囲気が残り、散策におすすめです。引田城登城口から最寄り駅のJR引田駅まで約1.5kⅿ。およそ中間地点に架かる御幸橋と、JR引田駅の間に城下町が広がります。

かめびし屋
真っ赤な壁が目印の「かめびし屋」は宝暦3年(1753)創業の老舗

大きな商家や入り組んだ路地。特に印象的なのは赤壁の醤油醸造所「かめびし屋」です。創業以来こだわり続けている伝統製法「むしろ麹」は、藁(わら)やイグサなどの草で編んだ敷物を用いた日本唯一の蔵元。種類豊富な醤油製品のほか、醤油を使ったソフトクリームや焼きおにぎり、ピザもいただくことができます。立派な赤壁ですが、実は昨年の台風の影響を受け修繕中。かめびし屋以外にも、台風の影響が残っています。

引田郵便局、ヌーベルポスト
「ヌーベルポスト」は週末と祝日のみ11~16時に営業

「引田郵便局」でも思わず足が止まります。昭和7年(1932)から53年(1978)まで開局。木筋コンクリート造りのレトロな洋風建築は、八角形型の窓をはじめとして随所に装飾にこだわりが見られます。週末限定のカフェ、「ヌーベルポスト」が営業していますので、城旅の合間にぜひ訪ねてみてください。

JR引田駅までは高松駅から最短約40分

JR引田駅、引田城、城下町
JR引田駅と引田城登城口の間に城下町が広がる

引田城への起点となるJR引田駅までは、JR高松駅から特急利用で約40分。高松城や丸亀城をはじめとする瀬戸内海や四国の城めぐりと一緒に、アクセスしやすいお城です。JR引田駅から引田城登城口までも徒歩で約20分の距離ですので、城下町の町並みや歴史も感じながら、じっくりと引田城を楽しんでみてはいかがでしょうか。


住所:香川県東かがわ市引田城山
電話番号:0879-26-1238(東かがわ市生涯学習課)
入城時間:自由
料金:無料
アクセス:JR高徳線「引田」駅から徒歩約20分

執筆・写真/藪内成基(やぶうちしげき)
奈良県出身。国内・海外で年間100以上の城を訪ね、「城と旅」をテーマに執筆・撮影。異業種とコラボした城を楽しむ体験プログラムを実施。旅行雑誌『ノジュール』(JTBパブリッシング)などを編集。

※歴史的事実や城郭情報などは、各市町村など、自治体や城郭が発信している情報(パンフレット、自治体のWEBサイト等)を参考にしています。