熊本城の「いま」 第8回 熊本地震から2年半!今秋見ておきたい復旧進む熊本城

2016年4月16日に起きた熊本地震の本震から2年半が経ちました。熊本城大天守の真新しい外観が姿を見せ、着実に熊本地震前の姿に戻りつつあります。また、2018年11月23日からは三の丸エリアの旧細川刑部邸で紅葉ライトアップが始まります。この秋は、復興に向かって進んでいる熊本城を訪ねてみませんか?

熊本地震からの復興を象徴する熊本城天守の復旧

熊本城、宇土櫓、小天守、大天守
熊本地震で倒壊しなかった宇土櫓を中心に、小天守(左)と大天守(右)

熊本地震からの熊本城復興を物語るのは何といっても天守です。外装工事の終わった大天守の4階以上では、工事用の足場が解体され、白と黒の真新しい姿が見られるようになりました。足元では石垣の積み直しも進んでいます。小天守も2018年9月中旬から4階部分の解体が始まり、10月中旬に解体が完了しました。同じアングルからの写真を並べると、工事の進み具合が一目でわかります。


■2018年4月上旬

大天守(右)は工事用の足場ですっぽりと覆われています。まだ鯱も載っていません。

熊本城、大天守、鯱


■2018年7月中旬
大天守には鯱が載っています。しかし、まだ上層部は工事用足場に覆われています。
熊本城、鯱、大天守


■2018年10月中旬
大天守は上層部(4階以上)の工事用足場が解体されました。小天守(左)の方は足場が組まれました。
熊本城、大天守、小天守、工事用足場

熊本地震で被害を受けた大天守の石垣は、崩落した石も含め約790個の積み直しが必要となりました。2018年7月下旬から積み直しが始まり、9月上旬までに北面の107個が積み直しが完了。ほかの面も年内に終え、その後、来年には小天守の石垣工事が始まる予定です。2019年10月5日から10月14日に予定されている「熊本城大天守外観復旧記念週間」での特別公開に間に合うように、大天守の復旧が進行中。天守内に入れるようになるにはさらに期間を要し2021年春頃の予定です。

「熊本城復旧基本計画」に基づいて最優先される熊本城天守の復旧

熊本城、大天守、鯱
白と黒を基調とした熊本城大天守上層部。鯱は今年4月に載った

目に見えて進む熊本城大小天守の復旧。この復旧は2018年3月に策定された「熊本城復旧基本計画」に基づいています。計画の中には「復興のシンボル『天守閣』の早期復旧」という項目があり、最優先で天守の復旧工事が進められています。大天守の鯱(しゃちほこ)は今年4月に設置されました。

また、「100年先を見据えた復元の礎づくり」という項目もあります。現在進められている復旧工事は、「熊本地震前」に戻すだけでなく、江戸時代に描かれていた熊本城を目指しているのです。現在放映中のNHK大河ドラマ『西郷どん』で、もうすぐ迎える西南戦争。西郷隆盛と明治新政府の戦いですが、西南戦争開戦直前に大小天守や本丸御殿などは焼失しています。ほかにも多くの建造物が陸軍による解体などで失われています。現存する絵図や古写真を基に、幕末の熊本城を目指すのが最終的な目標なのです。

熊本城、くまもとよかとこ案内人、
黄色のシャツを着用したくまもとよかとこ案内人の会のガイドさん。熊本地震や熊本城の復旧についての熱がこもった説明に、観光客も熱心に耳を傾ける

さらに「復旧過程の段階的公開と活用」という項目も重要です。熊本城には「復興見学ルート」という見学順路が作られており、日々変化する熊本城の姿を、解説文をたどりながら見学できます。この復興見学ルートを中心に熊本城をガイドしているのが、「くまもとよかとこ案内人の会」です。熊本地震発生の2カ月後から、二の丸広場から加藤神社を結ぶコースを設定し、無料ガイド(ガイドを予約する場合は有料)を開始。現在の熊本城の様子を、地震前と比較して詳しく案内してくれます。その魅力はなんといっても、ガイドさんの個性を生かした案内の面白さ。秋の行楽シーズンには、熊本城の至るところで、ガイドさんの熱い語りが飛び交っています。熊本城散策が楽しくなること間違いなしですので、利用をおすすめします。

天守以外にも進む熊本城の復旧

最優先して熊本地震からの復旧が進められている大小天守のほかも、着実に復旧が進んでいるところがあります。特に目に見えて進んでいるのが飯田丸五階櫓。櫓が解体され、2018年4月の様子(下記写真)と比べると一目瞭然です。監物櫓のように新たに着工した箇所もあります。倒壊現場が目近に見学できた元太鼓櫓は、8月から始まった解体保存工事の影響で、近づけなくなっています。まさに、日に日に変わる熊本城。代表的な箇所の現状(2018年10月現在)をご紹介します。

熊本城飯田丸五階櫓

熊本城の観光案内所や飲食店、お土産店が軒を連ねる「桜の馬場 城彩苑」の向かいにありながら、立入禁止で様子がよく分かりません。
熊本城に隣接する、熊本市役所14階展望フロアから見ると工事の進捗は一目瞭然。熊本地震による被害として、飯田丸五階櫓の土台となる石垣が崩れ柱状に残った「奇跡の一本石垣」で記憶にある方も多いかと思いますが、すでに櫓の解体工事は終わり、現在は石垣の解体工事が行われています。

■2018年4月上旬
飯田丸五階櫓。角石のみで支えられた櫓が残ります。
熊本城、飯田丸五階櫓

■2018年10月中旬
櫓は解体され、石垣の解体工事が進められています。
熊本城、解体、飯田丸五階櫓、石垣

熊本城西大手門・元太鼓櫓

熊本城二の丸広場に接し、崩落した石垣や被災した櫓を間近で見ることができ、熊本地震の被害を実感できるエリアでした。元太鼓櫓は2016年の熊本地震では倒壊を免れたものの、2018年6月の大雨で倒壊。9月中旬より、元太鼓櫓の瓦や柱などの部材回収、そして10月中旬より西大手門の解体が始まりました。2019年3月に解体保存工事が完了する予定です。現在は解体状況を遠くから見ることができます。

■2018年4月上旬
熊本城西大手門・元太鼓櫓は、熊本地震の被害が色濃く残り見学者でいっぱいです。
熊本城、西大手門、元太鼓櫓

■2018年10月中旬
解体保存工事のため、熊本城西大手門・元太鼓櫓には近付けなくなっています。
熊本城、西大手門、元太鼓櫓

熊本城監物櫓

熊本城二の丸広場から、天守の様子がよく見える加藤神社との間にある監物(けんもつ)台樹木園。その北側にある監物櫓の解体保存工事が始まっており、2019年3月に完了予定です。

熊本城、監物櫓
本格的な工事が始まっている熊本城監物櫓

旧細川刑部邸

熊本城三の丸エリアにある旧細川刑部邸。熊本地震により倒壊した屋敷塀の解体工事が2018年9月末で完了しました。11月23日から12月2日に限定解放され、夜間は紅葉ライトアップが行われます。
熊本城、細川刑部邸、紅葉
「閉鎖中」の貼紙が残る旧細川刑部邸。熊本城を代表する紅葉の名所でもある

二の丸御門跡

旧細川刑部邸から二の丸広場へつながる二の丸御門跡の直行路は、熊本地震後通れなくなっていましたが、通行可能とするための工事が進んでいます。崩れた石垣の回収と養生は終了し、通路には安全対策のために、ぐり石(石垣の裏側に詰められた小さい石)を詰めたかごが設置されています。

熊本城、二の丸御門
熊本地震からの復旧が進む熊本城二の丸御門跡。11月中旬以降から通行可能になる

熊本城の紅葉ライトアップと西南戦争特別企画展

旧細川刑部邸は熊本城きっての紅葉の名所でもあります。熊本地震による被害で邸内への入場はできませんが、園内の紅葉は楽しめます。夜間は竹灯りなどを置き幻想的な空間を演出。熊本地震の影響にも負けず、鮮やかな色を見せる紅葉を愛でてみてはいかがでしょうか?

細川刑部邸紅葉ライトアップ
2017年に実施された旧細川刑部邸紅葉ライトアップの様子(熊本城総合事務所提供)

旧細川刑部邸の限定開放と夜間の紅葉ライトアップ
日時:2018年11月23日(祝・金)~12月2日(日) 
場所:熊本市中央区古京町3-1(熊本城三の丸エリア)
料金:無料
開園時間:8時30分~20時  ※ライトアップは17時頃から

紅葉シーズンが近づくのに合わせるかのように、NHK大河ドラマ『西郷どん』では、クライマックスのひとつ「西南戦争」が近づいています。西南戦争の舞台こそ熊本城ですね。熊本城内の「熊本城ミュージアム わくわく座」では、「明治150年 熊本城と西南戦争」を開催中。資料やパネルの展示を通して、熊本城の籠城戦について学ぶことができます。

熊本城ミュージアムわくわく座・田原坂西南戦争資料館コラボ企画
「明治150年 熊本城と西南戦争」
会期:2018年10月6日(土)~11月25日(日)
場所:熊本城ミュージアムわくわく座2階 熊本城ビューラウンジ
料金:入館300円
時間:9時〜17時30分(入館は17時まで)

熊本城ミュージアムわくわく座、企画展、熊本城、西南戦争
熊本城ミュージアムわくわく座で開催中の企画展「明治150年 熊本城と西南戦争」 

この秋は、紅葉狩りや『西郷どん』ゆかりの地めぐりとともに、熊本地震からの復興に向けて日々姿を変える「今しか見られない」熊本城をぜひ訪ねてみませんか?



<基本情報>
●くまもとよかとこ案内人の会
住所:熊本県熊本市中央区二の丸1-1-1(桜の馬場 城彩苑 総合観光事務所)
電話番号:096-356-2333 ※対応時間9~17時(土・日曜、祝日は~16時)
料金:無料(予約不可)。受付時間:9~15時。
※時間指定でガイド希望の場合は、現地までの交通費2000円が必要(黄シャツ着用)。受付時間9~17時。60分、90分、120分のコースがあり、3日前までに公式ホームページより申込み

執筆・写真/藪内成基(やぶうちしげき)
奈良県出身。30代の城愛好家。国内旅行業務取扱管理者。出版社にて旅行雑誌『ノジュール』などを編集。退職し九州の城下町に移住。観光PRやガイドの傍ら、「城と旅」をテーマに執筆・撮影。

※歴史的事実や城郭情報などは、各市町村など、自治体や城郭が発信している情報(パンフレット、自治体のWEBサイト等)を参考にしています

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