城に眠る伝説と謎 第6夜 【姫路城】城に渦巻く美女の怨念!皿屋敷伝説のルーツは姫路にあり!?

全国のお城に伝わる伝説や奇譚を取り上げ、歴史をひもとく「城に眠る伝説と謎」。第6夜は、井戸に現れるお菊の亡霊が皿を数える光景が有名な皿屋敷伝説に迫ります。姫路城にはお菊が投げ入れられた井戸があるって知っていましたか?

姫路城、天守
白亜の天守が美しい姫路城。日本を代表するこの城に恐ろしい怪談が眠っているという…

皿屋敷の怪談は番町だけじゃない?

「いちまぁ~い…にまぁ~い…さんまぁ~い…」
これを聞くと、江戸時代の有名な怪談話『番町皿屋敷』を思い出す人が多いだろう。

皿やしき於菊乃霊、浮世絵、皿屋敷、お菊、日本三大怪談
「皿やしき於菊乃霊」(月岡芳年画『新形三十六怪撰』より)。日本三大怪談の一つにも数えられる皿屋敷。恐ろしくも美しいお菊の姿は江戸時代を通じて浮世絵などに描かれ続けた

江戸・牛込御門内五番町にあった、青山播磨守主膳の屋敷に奉公していたお菊という女中が、青山が大切にしていた10枚の皿のうちの1枚を割ってしまったため、ひどい叱責を受け、屋敷内の井戸に身投げして死んでしまう。以来、夜な夜な皿を数える恐ろしい声が屋敷中に響き渡る、というストーリーだ。その舞台となっているのは江戸時代なのだが、実はこれに類似した話が、これより100年以上前の室町時代にすでに存在していたのである。その名も『播州皿屋敷』。名称も似ていて興味深い。

姫路城主・小寺氏の家臣の謀反計画

永正元年(1504)、若くして姫路城主となった小寺則職(こでらのりもと)。2014年のNHK大河ドラマ『軍師 官兵衛』で片岡鶴太郎さんが演じていた小寺政職(まさもと)の父だ。その則職だが、家臣の青山鉄山が城の乗っ取りを企て、花見の席で危うく毒殺されそうになったという。この毒殺未遂事件は則職の忠臣・衣笠元信の妾・お菊が通報したために未遂に終わったものの、則職は一時的に城を追われ姫路城(兵庫県)は鉄山の支配するところとなる。

その後お菊は、引き続き鉄山の動向を探るため、鉄山に仕えるのだが、彼女を怪しんだのが、鉄山の家臣・町坪弾四郎(ちょうのつぼだんしろう)だ。弾四郎は鉄山が大切にしていた10枚の皿のうち、1枚を隠し、紛失の罪をお菊に着せてしまう。さらに弾四郎はお菊を自らの屋敷に連れていき、庭の松の木に縛り付けた。橋本政次『姫路城史』の「傳説播州皿屋敷(でんせつばんしゅうさらやしき)」には次のように記されている。

「折しも降りみ降らずむ梅雨の中を、裏庭の松に縛りつけ、己が意に從はせんとて、晝三度、夜三度づゝ青竹で責めつけ、一七日の間折檻したが、お菊はいつかな彼の意に從はなかつたので、遂にこれを斬殺し、庭の井戸へ投込んだ。するとその日から夜になると、井戸の邊から『一枚、二枚、三枚、四枚、五枚、六枚、七枚、八枚、九枚……』と、皿を數える聲が聞え、同時にぐわらゝと皿の音が屋敷内に鳴動し、夜毎怪異が打續いたので、人々皿屋敷と呼んだ」

弾四郎はお菊に思いを寄せていたらしく、以前から言い寄っていたという話も残っている。その意味では下心があったのかもしれないのだが、ひどい仕打ちとしか言いようがない。

姫路城内に今も残るお菊井戸

このときお菊が投げ込まれたとされる井戸は「お菊井戸」として現在も姫路城内に存在する。城外との秘密の連絡経路になっていたため、誰も近づかないように怪談の噂を広めたという説もあるようだが、定かではない。

姫路城、上山里丸、お菊井戸
姫路城上山里丸にあるお菊井戸。お菊はこの井戸に化けて出たのだろうか?

播州、番町いずれも確たる証拠があるわけではないので伝説の域を出ないのだが、実に面白い符号だ。登場人物の名前もしかりで、メインのお菊はまったく同じ名で、仇役は青山鉄山に青山主膳。しかも主膳は播磨守ときている。江戸時代の皿屋敷の話は、この姫路城の話がベースになっていると考えてよさそうだ。

姫路、お菊神社、史跡
 お菊を祀っているといわれるお菊神社。姫路市内にはお菊ゆかりの史跡がいくつも残っている(姫路フィルムコミッション提供)


執筆/松本壮平
ライター・編集者。1972年、大分県中津市生まれ。慶應義塾大学文学部史学科日本史学専攻卒業。歴史、グルメほか多ジャンルで執筆。『食楽web』(徳間書店)にてからあげ食べ歩きコラム「から活日記」連載中。

写真提供/かみゆ歴史編集部

※歴史的事実や城郭情報などは、各市町村など、自治体や城郭が発信している情報(パンフレット、自治体のWEBサイト等)を参考にしています

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