日本城郭協会大賞 【インタビュー】日本城郭文化特別賞:余湖浩一さん~余湖くんのホームページの作成・運営~

日本
城郭文化の振興に貢献した団体及び個人を顕彰する「日本城郭協会大賞」。第3回日本城郭協会大賞の「日本城郭文化特別賞」に選定された余湖浩一さんにお話を伺いました。

<余湖浩一さん~余湖くんのホームページの作成・運営~>

余湖さんは教員のお仕事のかたわら全国のお城に実際に行き、そのお城の鳥瞰図を描いて、お城めぐりの様子を写真つきで分かりやすく紹介するブログ「余湖くんのホームページ(http://yogokun.my.coocan.jp/)」を現在まで27年間も運営、無償で公開しつづけています。このような長年の地道で確実な活動が現在のお城ブームの礎になっており、城郭文化の普及に大きく寄与した功績により「日本城郭文化特別賞」に選ばれました。
余湖浩一氏
荒戸城(新潟県南魚沼郡湯沢町)。余湖くんのホームページはこちら

―「余湖くんのホームページ」は、簡潔で面白い文章と豊富な写真、全体図が一目でわかる鳥観図がお城ごとにまとめられており、読みながらそのお城を散策しているような気持ちになれるので、ついつい読みふけってしまいます。本当にお好きでないとできないことですが、どのようなきっかけでお城に興味をお持ちになったのでしょうか? 
 子供の頃に大河ドラマ『国盗り物語』を見て、歴史に興味を持つと同時に、城も好きになりました。それ以来、城に関する本を集めたり、近所の城址を見て回ったりするようになりました。

―余湖さんといえば鳥観図ですが、なぜお城の中でも特に鳥観図に着目されたのでしょうか。
 鳥瞰図を作成するようになったのは、「縄張図だと一般の人にはわかりにくいが、鳥瞰図だとイメージを掴みやすくてよく理解できてよい」と言われたことで気をよくしたというのがきっかけで、それ以降、鳥瞰図を多く作成して提示するようになりました。

余湖浩一さん 大井田城
大井田城(新潟県十日町市)。余湖くんのホームページはこちら

―確かに鳥観図は知識がなくても見ればわかることが多いからお城ビギナーには特にありがたいです。「余湖図」と称される余湖さんの鳥観図ですが、一般的な鳥観図との違いや特色はどのような点でしょうか?
 普通の鳥瞰図だと斜め45度くらいの位置から鳥瞰しているので、曲輪などの形状が平面図とはだいぶ違ったものになってしまいます。また、反対側の形状は分かりません。そんなわけで、私の鳥瞰図は斜め80度くらいの、真上に近い位置から見下ろすような形状にしてあります。これなら曲輪の形状のゆがみは少なく、反対側の遺構も再現できます。これがいわゆる「余湖図」です。

余湖浩一
赤見駒場城(栃木県足利市)。余湖くんのホームページはこちら

―なるほど、実際のお城の再現性を重視されているということですね。お城に行くだけでも時間がかかるのに余湖図作成には言うに及ばず、さらにブログ作成と相当な時間と手間がかかりますが、激務な教職の合間を縫ってこれだけ長く活動を続けられたのはなぜでしょうか。
 私の場合、城に行って戻ってから鳥瞰図を作成し、ホームページにアップするまでが「城めぐり」です。ですので、鳥瞰図作成、ホームページ更新までできる日程で、城の訪問計画を立てています。このスケジューリングができなければ、これだけの城の鳥瞰図を作成して公開することはできなかったでしょう。
 また、仕事は忙しくても、城巡りは気分転換にもなり楽しみでもあるので、それこそが長く続けられた理由なのかもしれません。

―旅程のみならず心身の健康までトータルの高い管理能力・自律能力のたまものですね! これまでの活動の中で印象深いエピソードを1つ教えていただけますか?
 特にこれ1つという決定的なものはないのですが、ネットを通じて知り合ったお城マニアの皆さんと一緒に城めぐりをしたり、本を作ったりしたことが一番の思い出です。機会があれば、またお城のオフ会などを企画してみたいものです。

余湖浩一氏
千葉県茨城県の藪生い茂る中世城郭を主戦場とする常総戦隊ヤブレンジャーの一員として全力で任務?!にあたる余湖さん
 
―同好の士の皆さまと一緒に好きなことをすると、楽しさも喜びも何倍にもなりますね。すでに素晴らしい功績を残されていますが、今後はどのようなことをお考えでしょうか。
 「余湖図1万城」というのを目指していたのですが、それは達成することができました。今後も命のある限り地道にこの活動を続けていきたいと思っています(笑)。
 今年、『図説 栃木の城郭』(国書刊行会出版)という本を出しました。今後、このシリーズをさらに他県にも広げていきたいと思っています。自分が元気なうちに、あと3県くらいは手掛けていきたいところです。

―最終的に余湖図がいくつになるのか、次に図説になる県がどこなのか、とても楽しみです! 最後にお城ファン・城びと読者へメッセージをお願いいたします。
 お城めぐりにはロマンがあると思います。そこで活動した人々の思いや歴史の息吹などを感じ取ることのできる高尚な趣味だと思っています(笑)。交通費以外のお金はほとんどかかりませんし、足腰の鍛錬にもなります。機会があれば、みなさんともぜひお城めぐりをご一緒させていただけるとうれしいです。

―ありがとうございました。

【日本城郭協会大賞とは】

公益財団法人移行10周年を記念し、日本城郭協会が2022年に開始した城郭文化の振興に貢献した団体及び個人を顕彰する事業です。小和田哲男理事長を審査員長とする審査会にて「日本城郭協会大賞」を選定します。ほかにも、城郭城址の維持・整備を自主的に行うボランティア団体等を賞する「日本城郭文化振興賞」、城郭文化の普及に寄与した個人・団体を賞する「日本城郭文化特別賞」、2023年から城郭管理者として特筆すべき成果を挙げた自治体等を「調査・整備・活用賞」として顕彰しています。

これまでの受賞者インタビュー等の記事はこちらをご覧ください。

執筆/城びと編集部 取材協力・画像提供/余湖浩一