1万9000人が来城!「お城EXPO 2016」をプレイバック

「お城EXPO 2017」の開催もいよいよカウントダウンが始まりました。昨年から始まったイベントなので、今年初めて参加するという方も多いのではないかと思います。そこで、今回は昨年の「お城EXPO 2016」の様子をプレイバック! 3日間に渡って行われたイベントのお城ファンの熱気をお届けします。




 

お城のスペシャリストが続々登壇した厳選プログラム

お城EXPO 2016
大盛況となった「お城EXPO 2016」

一大ブームとなりつつある城めぐり。その勢いを受け、2016年12月23日(金・祝)から25日(日)までの3日間、横浜のみなとみらいにあるパシフィコ横浜 会議センターで、国内初となるお城の総合イベント「お城EXPO 2016」が開催された。城郭研究の第一人者が登壇した講演会やフォーラム、トークショーのほか、ここでしか見られない貴重な資料の展示など、城好きにはたまらないプログラムが目白押しの3日間。いち早く参加しようとした来場者が連日オープン前から100人以上行列を作るなど、開城直後から閉幕まで大賑わいのイベントとなった。

その目玉となったのは、お城のスペシャリストたちがここでしか聞けない講演を行う「厳選プログラム」。プレミアム入城券を購入した人のみが参加できるプログラムにもかかわらず、中には満席になる講演もあった。23日は日本城郭協会理事長であり、「お城EXPO 2016」実行委員会委員長の小和田哲男先生による講演会「加藤清正の戦いと城」からスタートし、広島大学大学院教授の三浦正幸先生、日本城郭協会理事の加藤理文先生といったお城研究の第一人者が続々と登壇。研究の最前線に触れられる貴重な機会に、一言も聞き逃すまいと熱心にメモを取る人の姿もあった。

お城EXPO 2016、小和田先生
「加藤清正は織豊期城郭を近世城郭に造り直していくパイオニアだった」と語る小和田先生。
その集大成が熊本城だったとし、「震災をきっかけに熊本城の魅力を見直すきっかけにしたい」と結んだ


24日には研究者だけでなく、落語家の春風亭昇太さんや城郭ライターの萩原さちこさんが、城郭研究者の千田嘉博先生と山城の魅力を大いに語るトークショーを開催。昇太師匠は「ようやく城好きを宣言できる時代が来た!」と「お城EXPO」について感慨深そうに語り、時には軽快な口調で自身の好きな城を紹介。自身がNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』で今川義元を演じることに触れ、「僕がやることでイメージが悪くならないかな?」と話すと、会場からは大きな笑い声が起こった。


お城EXPO 2016、春風亭昇太、千田嘉博、
トークショーに参加した春風亭昇太師匠と千田嘉博先生。
昇太師匠は城のイベントにこれだけの人が集まっていることに感激しきりだった

最終日の25日は3日間で最多の6プログラムを実施。中でもトークショー「城を極める!城で遊ぶ!」では萩原さちこさんが城郭写真家の畠中和久さん、城郭イラストを手がける香川元太郎さんらを迎え、さまざまな角度から城の魅力に迫った。

お城のスペシャリストたちの貴重なトークに、来城者も大興奮。講演が終わって会場を出る時、あちこちから自分なりの見解や城の思い出を熱く語っている声が聞こえ、「講演に夢中になりすぎて、他の展示を見きれないほどでした!」(40代・女性)「ぜひ次回も講演会を開催してほしい」(30代・男性)といった話がうかがえた。

浮世絵、城ジオラマ……多彩な展示に釘付け

講演だけでなく、さまざまなテーマ展示も「お城EXPO」の魅力だ。城が描かれた浮世絵や城絵図、現存十二天守の模型の展示では、顔を近づけて細部までじっくりと眺める人の姿が印象的。ジオラマ城郭模型作家の岐部博さんによる「お城のジオラマ模型展」では、情感溢れる模型の撮影に熱中する人が続出。イベントに駆けつけた岐部さんも「下から撮影すると迫力が出ますよ」とアドバイスし、「お城EXPO 2016」随一のフォトスポットとなっていた。

お城EXPO 2016、浮世絵、展示
城が描かれた貴重な浮世絵が展示された「城郭の浮世絵展〜松﨑コレクション〜」

お城EXPO 2016、城郭模型、ジオラマ
城郭模型作家の岐部博さんによる「お城のジオラマ模型展」。松本城や竹田城など、全40の城模型を展示した

城ファンから寄せられたとっておきの写真を一挙展示した「お城EXPO 2016フォトコンテスト」も注目の展示。戦の気配が立ち込める緊張感ある作品からユニークな視点が光るものまで、城の楽しみ方の自由さが写真を通じて表現されていた。

お城EXPO 2016、フォトコンテスト
「お城EXPO 2016フォトコンテスト」にはたくさんの作品が

国宝5城を含めた日本100名城に選定された城郭のある団体が多数出展した「城めぐり観光情報ゾーン」では、映像作品や復元CGを鑑賞できたり、甲冑を着て記念撮影ができたり、名産品が当たるクイズ大会があったりと、ブースごとに趣向が凝らされた。さらにひこにゃん、くまモンといったご当地キャラが登場。来城していた子どもたちが歓声をあげ、あっという間に撮影大会となっていた。

お城EXPO 2016、甲冑姿、武者
「城めぐり観光情報ゾーン」では、甲冑姿の武者との交流も

お城EXPO 2016、クイズ大会、ひこにゃん、くまもん
ステージで行われたクイズ大会には、ひこにゃんやくまもんなどご当地キャラも参加。ゲームを盛り上げた

熊本城復興支援コーナーでは初公開の石垣も

数ある展示の中でも、ひときわ注目を集めていたのが「熊本城復興支援コーナー」。2016年に被災した熊本城を紹介したもので、城の解説パネルの前には途切れることなく人だかりが。地震の崩落で発見された不思議な文様のある石垣の初公開や、城の見どころ「二様の石垣」を25分の1スケールで再現した模型の展示など、訪れた人たちは興味深い内容にじっくりと見入っていた。会場では、熊本城復興支援のための募金も実施。集まった金額は3日間でなんと73万8052円。会場に来ていた30代の女性は「今後も継続して復興支援を行ってほしい」と話した。完全な復旧は20年後とも言われる熊本城。決して簡単ではないが、着実に復興への道をたどる熊本城の現在をぜひ確かめてみてほしい。

お城EXPO 2016、熊本城復興支援
「熊本城復興支援コーナー」。熱心に説明を読み、展示に感心する人たちが途切れることなく訪れていた

さらに、全国の小中学生を対象に行われた「第15回 城の自由研究コンテスト」優秀作品の展示も注目を集めた。368点もの応募作品から選りすぐられた作品群に「とてもハイレベルなのでもっと広く知られてほしい」(20代・男性)「どれもしっかりまとめられていて面白い作品ばかりだった」(50代・男性)と、大人たちも感心しきりだった。

お城EXPO 2016、自由研究、文部科学大臣賞
「第15回 城の自由研究コンテスト」で文部科学大臣賞を受賞した岐阜県の小学6年生、香田篤宏くんの「日本の城探検Part2~黒い城と白い城」。
天守の壁に黒と白の2種類があることに着目し、その作り方を研究した

お城EXPO 2016、日本100名城写真展
「日本100名城写真展」では写真の展示だけでなく、アプリをダウンロードして遊べるスタンプラリーを実施。450人もの人がコンプリートした

他にもここでしか受けられない城郭検定の特別版「お城EXPO」検定、美麗な写真とともに日本100名城を紹介した「日本100名城写真展」、城にまつわる映像を集めた「お城シアター」、写真や模型などお城の楽しみ方をさまざまな角度から体験できる「ワークショップ」など、1日ではとてもまわりきれないほど盛りだくさんのラインナップ。2日、3日と通った人もいたようで「3日間いてもまったく飽きず、ずっと楽しめた!」(50代・女性)という人もいた。

城ファンの熱気に包まれた「お城EXPO2016」には、3日間でなんと約1万9000人が来城。惜しまれながら大盛況のうちに幕を閉じた。
 「また来年も開催してほしい」という来場者の声に応えるように、今年も開催が決定した「お城EXPO」。2017年12月22日(金)から24日(日)までと、前回と同じ3日間開催で、展示やプログラムの内容はさらにパワーアップ。今年も城ファンなら必見のイベントとなること間違いなしなので、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。

→会場への行き方から、今年のトピックスまで。初めて「お城EXPO 」に参加する予定の方はこちらの「はじめてのお城EXPO」もCHECK!

写真提供/お城EXPO実行委員会

執筆者/かみゆ歴史編集部(滝沢弘康/小沼理)
書籍や雑誌、ウェブ媒体の編集・執筆・制作を行う歴史コンテンツメーカー。日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなどを中心に、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける。城関連の最近の編集制作物に、『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』『完全詳解 山城ガイド』(ともに学研プラス)、『日本の山城100名城』『超入門「山城」の見方・歩き方』(ともに洋泉社)、『カラー図解 城の攻め方・つくり方』(宝島社)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、「廃城をゆく」シリーズ(イカロス出版)など。

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