お城を楽しく研究する「城ラボ by 城びと」 石垣山城の石垣数えバトル!「城ラボ by 城びと」研究員で最も正解に近いのは誰だ選手権

「もっと気軽に、お城を楽しみたい!」をテーマに活動している「城ラボ by 城びと」。今回は、「石垣には石が何個使われているの?」という素朴な疑問を解決すべく、いなもとかおりさんと久保井朝美さんをはじめとする研究員たちが“石垣数えバトル”に挑みます! 決戦の舞台は、豊臣秀吉が小田原城を攻めるためわずか一夜で築いたという伝説が残る石垣山城(神奈川県小田原市)。さぁ、挑戦者よ立ち上がれ!いざ、石垣山石数えバトルだ!!勝利は一体誰の手に?!

城ラボby城びと


石垣って何個の石でできてるの?

「城ラボ by 城びと」主任研究員のいなもとかおりです! 突然ですが、私はお城の中でも石垣が一番好きです。「石一つ一つに物語がある」をモットーに石垣鑑賞をしています。久保井研究員とお城漫談をしている時に、こんな疑問がでてきました。

いなもと主任研究員(以下、いなもと)「石垣って石何個ぐらい使ってるのかな」

久保井主任研究員(以下、久保井)「ん〜。お城によっても違うけど、一度数えてみたいね」

いなもと「いっちゃう? いっちゃう? 数えがいがあるあのお城へ!」

ということで…来ちゃいました、石垣山城

石垣山城の石垣数えバトル、城ラボ by 城びと研究員

いなもと「石垣山城の石って、全体でどれくらいあるんだろうね?」

久保井 「わぁ〜、難しい! 何十万個…いや、何百万個かな? 石垣山城って『一夜城伝説』があるよね」

いなもと「一夜でお城が完成したという伝承だね。小田原市のHPによると、実際のところはおよそ80日間という期間の中で築かれて、のべ4万人が導入されたとか!」

久保井 「4万人すべての人が石垣に従事していなかったとしても、やっぱり何百万個はいきそうだよね」

2人の想像は時を超えて、戦国時代にタイムスリップしていきます。

石垣山城の石垣数えバトル、城ラボ by 城びと研究員

いなもと「私が石工さんだったら、石を割って、運んで、積んで…で1日に石1個が限界かもしれない。いや、1個もできないかもな〜」

久保井 「妄想がたくましいね。江戸時代には①石を切り出す人、②石を運ぶ人、③石を積む人で分担していたようだし、石垣山城が築かれた時代も、もしかしたらすでに分業していたのかもしれないよ」

いなもと「なるほどね。大きい石は運ぶの大変そうだから、間詰め石や裏込め石などの小さい石の運搬を担当したいな(笑)」

久保井 「間詰め石や裏込め石も、石垣には欠かせない存在だよね!」

城ラボby城びと

城ラボby城びと杯「石数えバトル」開幕!

考察を終え、おもむろに取り出したるは、マイカウンター! え、カウンターを使って何をするのかって? ふふっ、わかりきったことを…石垣山城の全部の石の数を数えるのですよ(キリッ)。今回は検証実験ですから!!

城ラボ by 城びと研究員(以下、城ラボ研究員)
「もう、夕方です。今から全部を数えるのはちょっと無理(そもそも全部数えるとか、マジかこの方々… 研究員心のつぶやき)」

いなもと「え、ダメ? 私はやる気まんまんですよ」

久保井 「わたしもー!!」

城ラボ研究員「だめだめ、範囲を決めましょう。ね?」

いなもと「わかりました〜(ちぇっ)。じゃあ、時間に制限もあることだし…この範囲にしましょうか」

石垣山城の石垣数えバトル、城ラボ by 城びと研究員

というわけで、決まったのがこの範囲です。制限時間は15分。石の数を数えるなんてやったことないから、正直、15分が長いのか短いのかわかりません! 限られた時間の中でどこまで数えられるか、これは自分との決戦でもあります。

制限時間内に石を数えろ!よーい、スタート

石垣山城の石垣数えバトル、城ラボ by 城びと研究員

いなもと「それではみなさん、いいですか? いちについて、よーい、スターーーーーーートぉぉぉぉぉ!!!(あはは、声裏返っちゃった)」

カチャカチャカチャカチャ…

観光客が続々と帰路につき、静寂な空間に響き渡るカウンターの音。夜に向け冷たくなりはじめた空気の中で、南曲輪の下だけは確かに熱い空間でした。

石垣山城の石垣数えバトル、城ラボ by 城びと研究員

久保井研究員、真剣に数えていますね〜。鋭い視線が石垣に向かっています。道中、石垣をつくる凄腕石工集団・穴太衆(あのうしゅう)の若きリーダーを主人公にした今村翔吾さんの『塞王の楯』(集英社)で盛り上がっていた私たち。かつての石工たちが切磋琢磨して石積みした風景を想像しながら、ワクワクする時間を過ごしていました。

▼『塞王の楯』についてもっと知りたい方はこちらの記事をチェック!

城ラボby城びと

城ラボ by 城びとの研究員は主任研究員の他にも4人訪れていまして、実は今日はじめて城めぐりをする研究員もいました。デビュー日に突然カウンターを渡されて、「さぁ、今から石の数を数えてください」だなんて、どれだけ楽しい職場なのでしょうか! 

石垣山城の石垣数えバトル、城ラボ by 城びと研究員

さて、5分経過したところで、いなもと研究員が一番最初にカウント終了。続いて、8分経過したところで久保井研究員もカウント終了しました。

いなもと「あれ、数え終わっちゃった」

久保井 「わたしもー! 意外と早く数えられるんだね」

いなもと「そうだね。15分もいらなかった」

久保井 「カウンター、見せ合いっこしない?」

いなもと「いいよ。せーの…」

石垣山城の石垣数えバトル、城ラボ by 城びと研究員

久保井いなもと「えぇーーーーーーーー!?」

なんと驚きの結果です。574と573…久保井研究員といなもと研究員のカウンターの数は、わずか1つ違いだったのです! これは、かなり正確な数字に近いのか? それとも、シンクロ率が高いのか? ほかの研究員にも「581」という近い数字が出た方がいました。

石垣山城の石垣数えバトル、城ラボ by 城びと研究員

久保井研究員といなもと研究員がカウンターの数字に盛り上がるその頃、制限時間15分ぴったりになるまで数えている研究員もいました。石垣の中に吸い込まれそうなくらい、しっかりと数えています。

ワクワクの結果発表〜!こんなに差がでた理由って?

石垣山城の石垣数えバトル、城ラボ by 城びと研究員

それでは、研究員6人の結果をご覧ください。

一番小さい数字は「573」、一方、一番大きな数字は「1473」。なんと約3倍も違いました。石との向き合い方が人によって違う。この差は一体何ー!?

すると、今日が初城めぐりという研究員よりこんな質問がありました。

城ラボ研究員「石垣の石ってどれを数えるの? 小さい石は? この落ちている石は?」

石垣山城の石垣数えバトル、城ラボ by 城びと研究員

久保井 「あ〜、難しい質問ですね」

いなもと「私、間詰め石はカウントしなかった。裏込め石もカウントしていない。あと大きめの石は、落ちているもの…つまり崩落したものは石垣としてカウントしちゃった」

久保井 「私は俯瞰して見える石の数をカウントしたよ。同じく間詰め石や裏込め石は基本カウントしてない…でも途中で気になってついカウンター押しちゃったかも(笑)」

いなもと「あと、崩落した箇所の裏込め石は表面に見えているけど、見えていない石の裏側にも裏込め石がビッシリあるはずだから、数えていたらキリがないよね」

久保井 「うん。さらには、崩落して割れた石も1と数えるのか2と数えるのか判断が難しいところ」

意外にも石の数を数える作業は難しい! モヤモヤしているいなもと研究員、帰宅後もう一度数え直してみました。レッツ、リトライ。

どこまでが石垣なの?問題勃発。正しい石の数え方を探す

石垣山城の石垣数えバトル、城ラボ by 城びと研究員

数え方は、極めて単純。写真の石に数字をふっていく作業です。石と向き合う時間。石と語り合う時間。南曲輪の一面を数えるのに4時間くらいで終わりました。あ〜楽しかった。

やはり、悩んだのは間詰め石裏込め石をカウントするか否か。そして、崩落した石は数えるのかどうかです。

石垣山城の石垣数えバトル、城ラボ by 城びと研究員

改めて間詰め石の判断基準は何か考えてみました。石が小さければ間詰め石なのか? それとも、大きい石を支えていればいいのか? また、石のサイズだけでいえば間詰め石と裏込め石の見分け方も難しいです。

すると、ある晩のこと…寝ぼけ眼のいなもと研究員に石たちが話しかけてきました。
僕たちみんな、石垣の一部さ。ずっと昔から石垣だったんだ
そうだ。このかろうじて張り付いている石だって、崩落した石だって、プライドを持って生きているかもしれないじゃないか!!(※石は生きてはいません)

そうして、悪魔は私に囁きました。
さぁ、見える石を全部数えなさい」と。わぁぁぁぁ〜

石垣山城の石垣数えバトル、城ラボ by 城びと研究員
左端の写真が切れた隅石の部分は別の写真と合成してしっかり数えています

悩みながらも数えた結果がこちらです。出た数字は「867」! 

・落ちて割れた石はトータル1つとしてカウント
・石垣の間詰め石は全部数える
・裏込め石は、築城当初は見えていなかったから数えない
・落ちた大きな石は数える。ただし、崩落した栗石や裏込め石は、判別がつきにくいから数えない
・え…これはムズイってヤツはもうとにかくカウント!

こんなルールのもと答えにいきつきました。「私が法律」で、正解は867です。よって「1086」を数えた研究員が一番近い結果となりました。「おしいー!」って人が研究員の中に誰もいない(笑)

石垣数えバトル…流行るかも!?

石垣山城の石垣数えバトル、城ラボ by 城びと研究員

私が想像していたよりも石の数は多かったです。南曲輪の一面だけでこれだけの数があるのですから、石垣山城全体では何十万個の石があるのでしょう。この石一つ一つを切り出した人がいるのですから、それだけたくさんのストーリーが石垣山城には存在しているのですね。

みなさんも、石垣数えバトルをやってみてくださいね! いざ、私たちと勝負です。

執筆/いなもと かおり、写真/城びと編集部
城ラボお城マニア観光ライター年間120城を巡る城マニア。國學院大學文学部史学科古代史専攻卒。19歳の時に、会津若松城に一目惚れしてから城の虜となる。訪城数は700ほど。国内旅行業務取扱管理者、日本城郭検定1級、温泉ソムリエ、夜景鑑賞士2級の資格をもつ。城めぐりの楽しみ方を伝えるべく、テレビやラジオにも出演中。

関連書籍・商品など