小・中・高校生の「城びとお城部」 地元の小学生が考えた! 山形城址霞城公園二ノ丸東大手門櫓展示改造計画

2021年11月、城びと編集部は「東大手門内の展示を小学生が一新 山形・霞城公園」(朝日新聞デジタル)というネットニュースを発見! 記事によると「(市立第七小学校の)児童らは4年生のときから、霞城公園や城下町、山形藩祖となった戦国大名の最上義光などについて「総合的な学習」で学んできた。その成果を生かして、今年7月、市に展示の「改造計画」を提案。15のアイデアが採用され、2学期から展示物の製作などに励んできた」とのこと。これは気になる!お話を聞いてみたいと、市立第七小学校にご連絡し、今回、山形市立第七小学校第6学年生徒の皆さまおよび担任の先生方に城びとに記事を寄せていただきました!



霞城公園について

山形城址 霞城公園 二ノ丸東大手門櫓展示改造計画
本丸一文字門

 私たちが通う山形市立第七小学校の南側に位置する霞城(かじょう)公園は、延文元年(1356)に羽州探題(うしゅうたんだい)として山形に入部した斯波兼頼(しばかねより/最上家初代)が入部の翌年(1357)に築城したと伝えられる山形城の城址公園で、現在の城郭は11代城主最上義光(最盛期57万石)が築いたものが原型とされています。本丸、二ノ丸、三ノ丸の3重の堀と土塁を持つ輪郭式の全国有数規模の平城で、出羽の関ヶ原合戦「長谷堂合戦」で城郭が霞みで隠れたことから「霞ヶ城」とも呼ばれていました。現在の二ノ丸の堀や石垣は、最上家改易後、鳥居忠政により大改修されたと伝えられています。霞城公園は、昭和61年(1986)に国の史跡に指定され、現在は桜と観光の名所となっています。

 今回、私たちが展示改造に取り組んだ二ノ丸東大手門櫓は、櫓門、多門櫓、高麗門、土塀を備えた山形城二ノ丸の正門を日本古来の建築様式により木造建築で平成3年(1991)に復元したものです。櫓内部の構造は図面が残っていなかったため、城内の他の建物の図面を参考に建てられました。

展示改造までの道のり

 私たちは、4年生のときから、総合的な学習の時間において「霞城公園」を学習の中心にしてきました。
 4年生のときには、霞城公園の建物や公園にゆかりのある人物(最上義光公、ローレツ医師、三島県令など)のことを手分けして調べ、得た知識を校内の他の学年に知らせようとクイズにしました。霞城公園内にチェックポイントを作り、クイズを解きながら公園内をまわってもらおうとスタンプラリーを企画し、当時の3年生を招待して実施しました。チェックポイントではクイズを出題し、問題を通して霞城公園のことをみんなに知らせました。また、このとき得た知識を残そうと、カルタも製作しました。

 5年生の時には、学習の場を霞城公園から城下町まで広げ、折しもコロナ禍で外出や旅行が制限された時期であったので、「それならばその地区に住んでいる方々が散歩しながら、自分の地区の史跡に触れてもらおう」と、町並みを見ながら巡る散歩コースを作成しました。地区の町内会長さんに学区内の史跡についての資料をいただいたり、実際に場所にきてもらい案内してもらったりしながら、散歩コースを作成しました(このとき作成したものは、現在取り組んでいる東大手門の櫓に置いています)。

山形城址 霞城公園 二ノ丸東大手門櫓展示改造計画
城下町散歩コースを作成した5年生の時にときに撮影した写真。下条町という山形城の周りの町の学区内にある傳昌寺(でんしょうじ)というお寺です

 6年生になり、これまで何度も調べ学習のために訪れた東大手門の櫓内の展示物が3年の間一度も変化していなかったこと、自分達子どもが調べるにはわかりにくい言葉が多かったことに気付き、「櫓内の展示を改造したい!」という気持ちがみんなの中にわき上がりました。「展示の仕を工夫すれば、また行きたいと思わせる場所になるのではないか」と考え、自分達で改造できそうな場所を探し、市の許可を得ることからはじめました。市からの許可も下り、2021年9月から改造の本格的な準備を始めました。そしてついに、10月21日山形市長佐藤孝弘氏を招いて、改造リニューアルオープンセレモニーを行い、冬季閉鎖に入る11月3日までお披露目しました。雪深い山形ですので、冬期間は櫓閉館です。

東大手門櫓改造の具体的内容

 山形城址 霞城公園 二ノ丸東大手門櫓展示改造計画
東大手門櫓を外から写したもの。改造は内部です

 東大手門櫓内には、山形城の改修工事の際の写真がパネルになって展示されています。「この大きなパネルの向きを変えると、櫓内をさらに広く使える」というアイデアを実現しました。
下の左の写真が、もとの配置です。右の写真が、改良後です。確かに、全体が広く使えます。ちょっとしたアイデアですが、効果絶大です。
 
山形城址 霞城公園 二ノ丸東大手門櫓展示改造計画
改造前(左)➡改造後(右)

 山形城は、最上義光公が築いたものが復元の原型となっています。最上義光公の説明が書かれているポスターは掲示されているものの、目立たないことにもったいなさを感じ、義光公等身大パネルを作成しました。当時の成人男性の平均身長155cmに対して、義光公は180~190cmあったという情報を仕入れ、180cmの等身大のパネルを作成し、櫓の入り口に展示しました。大きくて迫力満点の義光公は今回の改造のメインになりました。

山形城址 霞城公園 二ノ丸東大手門櫓展示改造計画
  
 さらに、4年生の3学期に取り組んだ霞城公園の建物、人物についての知識をまとめたカルタを改めて整理して展示しました。展示したカルタの前では、実際にカルタを楽しめるコーナーも設置しました。これまで櫓内に体験のコーナーはありませんでしたので、櫓見学にくる子ども達に大好評でした。一人で訪れる人も楽しめるように、CDに読み札の文章を録音し、スイッチをいれると、読み札の文章が流れるようにしました。和傘や赤い毛氈などで飾り付け、和の雰囲気を出しました。また、最上家にゆかりのある武将の兜をペーパークラフトで作成し、それぞれの武将の情報も分かるように、QRコードから武将のサイトに行けるようにしました。QRコードも自分達で作りました。

山形城址 霞城公園 二ノ丸東大手門櫓展示改造計画

 もともとあった説明のパネルにも工夫を加えました。パネルを見ながらずっと調べ学習をしてきましたが、「書いてある内容が難しい」という感想を持っていました。どうすれば分かりやすくなるかを考え、「書いてある内容を易しくし、イラストを交えて表現し、絵本にすること」にしました。できた絵本は、パネルのところにぶら下げて、自由に手にとって読めるようになっています。

山形城址 霞城公園 二ノ丸東大手門櫓展示改造計画

おわりに

山形城址 霞城公園 二ノ丸東大手門櫓展示改造計画
霞城公園内にある山形市郷土館

 700年もの歴史を有する山形城には、魅力的な建物、人物がたくさんあります。担任教諭たちは4年生からの3年間、霞城公園の魅力を余すことなく堪能した子ども達の姿を見てきました。子ども達は知り得た知識を発信し、最終学年の今年は、施設内の展示の改造という大仕事を成し遂げました。その過程で、市の所有である櫓を改造するには市の許可が必要なこと、許可を得るためには自分達がやりたいと思っている企画を伝えなければいけないことなどを子ども達は知りました。一つ一つクリアしていき採用された企画を実現に移す際も、たくさん乗り越えなければならない壁がありました。しかし、それらを乗り越えた先には「改造計画実現」という達成感がありました。子ども達にとって霞城公園の東大手門櫓が「自分達のふるさとの櫓」になりました。

執筆・画像/山形市立第七小学校第6学年生徒一同および担任教諭一同
4年生のときから、霞城公園や城下町、山形藩祖となった戦国大名の最上義光などについて「総合的な学習」で学ぶ。2021年7月、山形市に霞城公園二ノ丸東大手門櫓の展示の「改造計画」を提案。15のアイデアが採用され、展示物を製作。二ノ丸東大手門櫓にて展示されている。※東大手門櫓の2021年の公開は終了。2022年4月再開予定。


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