全国唯一「天守北面の鉄板張り」復元!福山城築城400年記念事業をアンバサダーがレポート!

城びとアンバサダーが気になるお城のイベントに参加してレポートする企画、第一弾! 築城400年に向けて、耐震改修と合わせて築城当時の外観の再現“令和の大普請”に着手し、2022年8月28日に見事、その姿を見せた福山城。城びとアンバサダーのたけ◎曲輪衆さんたちが、「福山城築城400年記念事業」の一環として開催された天守瓦への記名イベントの模様等をレポートします。

「福山城築城400年記念事業」において、お城ファンとしての見どころは、やはり福山城天守外観復元です。戦災焼失し1966年に外観復元されていた天守の老朽化に伴う耐震改修工事と同時に、”全国唯一“といわれる「天守北面の鉄板張り」の復元も行われることになり、クラウドファンディングが実施されています。返礼は、なんと天守に使用される鉄板・瓦に名前等を記入するイベントへの招待! 私もこのクラウドファンディングに協力し、2021年7月24~25日に開催された記名イベントに参加してきたのでレポートしていきたいと思います。

福山城築城400年記念事業
1622年8月28日、水野勝成が築いた福山城(広島県福山市)。福山市は築城から400年目を迎える2022年に向けて4年前から「福山城築城400年記念事業」をスタート。ふるさと納税やイベント募金、ガバメントクラウドファンディングなどを通して全国から募った寄附金を事業費の一部として活用

天守に使用される 『瓦への記名イベント』

2021年7月24~25日に、外観復元に関する寄附の返礼としての「瓦への記名イベント」が行われました。この記名イベントへは約450件の対象者のうち、全国から両日で約250名の方が来場。会場には、ご夫婦やご家族連れなど福山市内の多くの方々のほか、千葉から来られたお城好きの方、福山に住むおばあちゃんと関西方面から来られた娘さんとお孫さん、岡山からの新婚さんご夫婦など遠方からの参加者も見受けられました。

イベントレポート

工事中の福山城天守前に会場が設けられ、渡された瓦に名前等を記入していきます。名前以外にも一言好きなことを記入されている方も。記入後はパネルや足場の掛かった天守前で記念撮影。そして福山城築城400年記念事業実行委員会の交流部会に入っているまちづくり会社の皆さんから、福山市田尻産のキュウリを使ったピクルスのレモネードが振舞われました。冷たくてとても美味しかったです。

福山城、瓦への名前等記入イベント

福山城、イベント
応援サポーターでもある歴史シミュレーションゲーム「信長の野望」の武将たちのパネルの前で記念撮影

福山市在住の小学生の息子さんのいるご家族は「小さい頃から何気なく見ていたお城。大人になって改めて福山城の素晴らしさを再認識しました。4月にはいつもお花見に来ていた家族の思い出の場所。お城のこういう大規模な改修工事は滅多にないものだし、こういう形で協力できて名前も残せて、また家族のとても良い思い出になりました」とおっしゃっていました。

福山城、瓦への名前等記入イベント

関西在住のお城好きなお孫さんが福山に一人でお住まいのおばあさまのために寄附し、参加されていたご家族にもお会いしました。おばあさまは1945年8月8日の天守の戦災による焼失を目撃されたそうで、その日の様子を伺うことができました。当時、おばあさまは小学生。夜中に空襲が始まり、最初は山側から爆弾が落ち始め、そのうち市街地にも落ちだしたそうです。親御さんから「見ちゃいけん!」と言われながらも福山城を見ていると、最初は3階の庇部分がパチパチと燃え出し、下のほうへ燃えていきました。お城が燃えているのを背にたくさんの人が逃げてくる中、おばあさまは何故か燃える天守を見ながら拝んでいたそうです。結局爆弾は天守や御湯殿や市街地のほとんどを焼き尽くし、犠牲者も多く出したにもかかわらず、爆撃目標の一つだった第41連隊はまるまる残ったそうです。なんと皮肉なことか。戦争ってほんとに怖いですね。

それからずっと今まで、犠牲者もでて、みんな大変怖い思いで逃げているさなか燃える天守を見て拝んでいたなんて悪くてとても人に話すことができず、ご家族にさえも最近になってようやくお話できたところだそうです。最後におばあさまは「何の巡り合わせか、こんなふうにあの時見た天守に自分の名前が上がるとは…」と感慨深げにおっしゃっていました。ほかにも亡くなられたおじいさまの分も含めて家族全員のお名前を一枚一枚の瓦に記入なさっているご家族もいらっしゃいました。福山城にはおじいさまとのたくさんの思い出があるのでしょうね。このように多くの方の想いが記入された瓦は、9月ごろから始まる瓦葺き工事で天守最上層に登る予定です。

イベントレポート
寄附への記念品の一部(左上)と参加者の記入した瓦のほんの一部です

記念事業&天守外観復元裏話

【どれくらいのお金がかかるの?】
福山城築城400年記念事業は福山市にとっても5年越しの一大事業です。天守などの建造物の改修工事や城内の樹木等の伐採、石垣整備などのハード部分と、イベント開催、市民参加型事業などのソフト部分に分かれていますが、これらをひっくるめて総額30億円の事業費となっています。皆さんの一番関心のある北面鉄板の復元などの外観復元改修には1億円を目標にクラウドファンディングをしています。やっぱり、結構なお金がかかるんですね。

【どれくらいの寄付が集まったの?】
2018年度から募金が開始され、今までにこの事業に賛同する企業、団体、個人から約2億1000万円の寄附が集まっています。そのうちクラウドファンディングでは、全国から寄附が寄せられ781件・約8,100万円のお金が集まりました。現在も募金は継続中です!

【復元工事の進捗状況は?】  
工事は2021年8月現在、予定通りに順調に進んでいるそうです。月見櫓や鏡櫓は改修工事もほぼ完了し、足場が解体されています。

天守北面鉄板の実物発見される】
2021年5月、嬉しいニュースが飛び込んできました。今まで「ない」とされていた、天守北面に張っていた鉄板の現物と思われるものが発見されたのです。北面鉄板張りが復元されるという話を耳にした福山市民の方が、北面に使われていた鉄板を家に保管していると申し出て、市に寄贈してくださったそうです。この鉄板、リニューアルされた福山城博物館に展示されるのでしょうね。楽しみです。

福山城、天守北面鉄板
(左)上の小さい鉄板は24.3㎝×7.6㎝、下の大きい鉄板は25.4㎝×11.3㎝。厚さは2mm前後で、思ったより薄い。焼失時の熱のためかグニャっと曲がっています。下地に打ち付けられていたであろう3cm~4cmの釘も残っています


オープン前の福山城天守内覧会に潜入! 自分の瓦は見つけられるのか?

天守瓦への記名イベントからはや1年。2022年8月18日、いよいよ待ちに待った天守のオープンの前に報道向けの内覧会が開催されるとのことで、北面に張られている鉄板を寄附した城びとアンバサダーの小城小次郎さんと共に一足先に福山城を訪れました。

当日は朝から待ちきれず、集合時間より1時間程はやく小城さんと伏見櫓前で合流。やはりまずは、北面の鉄板張りの外壁とご対面! 景観の変わりようにビックリ!

いやー、かっこよくなりましたね。改修前も赤い高欄が際立つ美しい天守でしたが、旧状に極力近づけることを目指した今回の天守は、北面の黒い鉄板に象徴されるように、白黒モノトーンの無骨な仕上がりとなりました。うんうん。間違いなくこちらの方がかっこいいです。(小城小次郎さん)
 福山城,城びと

天守前での記念撮影のあとは、福山城周辺の散策に。現在は市街地化していますが、徒歩圏内にはかつてのお城の痕跡が点在しています。駐車場の地面に堀あとの石垣が露出していたり、桝形の石垣が人知れず残っていたりと、この様なところを見て回るのもお城めぐりの楽しみ。

福山城,城びと
市街地内にひっそりと残る三の丸東外堀の石垣と案内板

時間になったので天守前に移動、そしていよいよ内覧会の始まりです。
福山城博物館学芸員さんの案内で、館内を一通り見学。
天守の内部は、文字通りのワンダーランド。あんなものやこんなもの、あんな展示やこんな展示が!(小城小次郎さん)
館内を回った後、いよいよ最上階の天空の間に。外部の回り縁に出てみると、福山市内が一望できます。樹木整理などできれいに整備された本丸内の様子もよくわかる。でも一番変わったのは、最上階の意匠。オレンジ色の高欄は黒くなり、外壁の長押や柱も黒く塗られてとても落ち着いた感じになり、江戸時代の外観がよみがえりました。そしてここ最上階天空の間までエレベーターも設置され、バリアフリー化も行われています。

福山城,城びと

そして忘れてはならないのが、天空の間入口に設置されている銘板。今回の足掛け5年がかりの福山城令和の大改修は改修復元工事に賛同した地元企業はじめ、全国の企業、団体、個人から多くの寄付金が集められ実現したものです。これらを顕彰する意味を込めて設置されているものです。ここに名前の載っていない方々も数多くいます。多くの人たちの理解で新しく生まれ変わった福山城天守なんですね。

見つけた!自分の名前!オープン前の天守に入ってみたぞ!

ここからは小城がレポートします! ふるさと納税を活用した「天守の鉄板に自筆で名前が書き残せる」という企画に心が躍り、勇躍寄附したのはいつの頃だったか…。本当は、鉄板に実際に名前を書くイベントも企画されていたのですが、コロナ禍の影響で代筆となってしまったのは残念な限りです(おかげで達筆な書面となりましたが(笑))。でもあの鉄板のどこかに「小城小次郎」の名が記されたものがあるというだけでも、ちょっとどきどきしてしまいます。大袈裟な言い方かもしれませんがこの先何十年、もしかしたら何百年もの間、小城小次郎の名は福山城天守とともにあるわけです。うーん感動。

福山城,城びと

そんなわけで、福山城天守の最上階の「令和の大普請寄附者芳名板」には小城小次郎の名前がちょこんと載っています。天守公開の暁には、ぜひ探してみてください(!?)(城びとアンバサダー・小城小次郎)

8月28日にはオープンを迎え、27日・28日に行われた記念イベントにはたくさんのゲストが訪れました。それだけではなく、来年の1月のファイナルイベントまでに様々な行事・イベントが行われるそうです。私たちお城ファンの「近いうちに行きたいお城」の中の一つに、新しくよみがえった福山城も加えられることでしょう! 内外ともに楽しめる福山城。ぜひ実際に来て楽しんでください。

執筆・写真/たけ◎曲輪衆(小野雅章)・小城小次郎

<お城情報WEBメディア城びと>

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