萩原さちこの城さんぽ 〜日本100名城・続日本100名城編〜 第34回 鳥越城 信長に抵抗した、加賀一向一揆の最後の砦

城郭ライターの萩原さちこさんが、日本100名城と続日本100名城から毎回1城を取り上げ、散策を楽しくするワンポイントをお届けする「萩原さちこの城さんぽ~日本100名城と続日本100名城編~」。34回目の今回は、加賀一向一揆の最後の砦となった鳥越城(石川県)です。織田信長に抵抗するために設計された山城の見どころをご紹介します。

鳥越城、枡形門、石垣
復元された枡形門と石垣。織田方により改修された

信長方との激しい攻防の末に殲滅

鳥越城は、織田信長に最後まで抵抗した、加賀一向一揆の最後の砦として知られます。室町時代後期から戦国時代後期までの約100年間、「百姓の持ちたる国」といわれる自治体制を打ち立てた一向一揆が終焉を迎えた地。その歴史的価値と遺構の残存度などから、大日川対岸の二曲城とともに、「鳥越城跡附二曲城跡」として国の史跡に指定されています。信仰心によって結束しなければ生き延びられなかった、人々の物語が息づきます。

城を訪れる前に、まずは白山市立鳥越一向一揆歴史館を訪れるのがおすすめです。一向一揆の歴史や時代背景がよくわかる映像シアターもあり、予習になります。歴史的な舞台となった城を訪れるときは、事前に少し知識を入れておくと、実際に歩いたときにイメージを膨らませやすく、臨場感が増します。

鳥越城は、元亀元年(1570)の石山合戦の開戦に際し、白山麓本願寺門徒「山内衆」の拠点として築城されたと考えられています。石山合戦が終結し信長配下の柴田勝家により攻め落とされた後も、山内衆を束ねていた鳥越城主の鈴木出羽守は織田勢に抵抗。やがて、佐久間盛政軍と山内衆との間で三度にわたって激戦が行われることとなり、山内衆は奪われた鳥越城を奪還するなど孤軍奮闘を続けましたが、天正10年(1582)3月についに力尽きました。生け捕りとなった300人ほどが手取川の河原で磔にされ、以後、数百年間は周辺の村々から人の姿が途絶えたと伝えられています。

鳥越城、枡形虎口
枡形門と本丸門が配置された、枡形虎口

激戦を忘れる眺望と、復元された本丸門が見どころ

鳥越城は、山頂の本丸を中心として、中の丸、二の丸、後二の丸、三の丸、後三の丸が尾根筋に配置された山城です。信長に抵抗すべく決死の覚悟で築かれた城だけのことはあり、敵を迎え撃とうという緊迫感にあふれます。戦闘空間で妄想することの楽しさを存分に味わえる城といえるでしょう。たとえば後二の丸と本丸の配置を見ても、空堀で遮断されて先へは進めない設計です。しかも、本丸のほうが一段高く、頭上からの射撃は必至。堀底は幅が狭く、攻略は至難の業でしょう。

山頂には発掘調査をもとに城門や柵列が復元され、往時の雰囲気を味わうことができるのも大きな魅力です。最大の見どころは、本丸の虎口に復元された本丸門と枡形門。三方が石垣で囲まれ、本丸門と枡形門の2つの門を配置した枡形虎口になっています。注目は、本丸門の左右が土塁であるのに対し、枡形門の左右は布目積みの石垣であること。これは、鳥越城を攻略した織田方が本丸門に変わる門として増築したからと考えられます。堅牢な枡形虎口へと改変し、その周囲を石垣で固めたのでしょう。鳥越城の争奪戦を示す痕跡が残ります。

土塁で囲まれた本丸からは、美しい景色が望めます。鳥越城のある鳥越山は手取川と大日川に挟まれ、城はその合流点に向けて突出する丘陵先端部にあるため見晴らしがよいのです。戦いの殺気など忘れてしまうのと同時に、一向一揆の拠点としての立地のよさが実感できます。

本丸からは礎石建物跡と掘立柱建物跡が重なり合いながら掘り出され、6期の変遷が確認されています。小刀や鉄砲玉などの武具のほか、生活用具なども出土。前二の丸の発掘調査では、南西隅で意図的に埋め立てられた上で建てられたとみられる掘立柱建物跡が見つかっています。中の丸門の入口下方に通じる帯曲輪は馬の訓練に使われたのだとか。兵が駐屯できる広大な敷地と空堀で仕切られた曲輪群、馬の調練場と、効率よく戦えるための配慮が感じられます。

鳥越城、土塁、空堀
後三の丸の土塁と、それを取り巻く空堀

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執筆・写真/萩原さちこ
城郭ライター、編集者。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演など行う。著書に「わくわく城めぐり」(山と渓谷社)、「お城へ行こう!」(岩波書店)、「日本100名城めぐりの旅」(学研プラス)、「戦う城の科学」(SBクリエイティブ)、「江戸城の全貌」(さくら舎)、「城の科学〜個性豊かな天守の「超」技術〜」(講談社)、「地形と立地から読み解く戦国の城」(マイナビ出版)、「続日本100名城めぐりの旅」(学研プラス)など。ほか、新聞や雑誌、WEBサイトでの連載多数。公益財団法人日本城郭協会理事兼学術委員会学術委員。

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