行きはマラソン、帰りは戦!? 幕末に開催された「安政遠足」を描く映画『サムライマラソン』

日本史上初のマラソンは、江戸時代に開催された!? 江戸時代の安中藩(群馬県)で実際に開催された<安政遠足(あんせいとおあし)>からイメージを膨らませた土橋章宏の小説「幕末まらそん侍」を、佐藤健をはじめとした豪華キャストと国際色豊かなスタッフによって映像化。驚きの歴史に濃密な群像ドラマや壮絶なアクションが絡み合う、平成最後を飾るに相応しい幕末エンタテインメント『サムライマラソン』(2019年2月22日公開)をご紹介します!



江戸時代に開催された!?日本初のマラソン“安政遠足”とは

江戸時代にマラソン大会が開催されたのをご存知ですか? 安政遠足とは、安政2年(1855)に安中(現在の群馬県)藩主・板倉勝明が、鍛錬のために藩士たちを城門から碓氷峠の熊野権現神社まで走らせ、その着順を記録した徒歩競走のこと。記録を残すマラソンはこれが日本初とされています。その距離は約7里(約28km)ほどでしたが、峠を越えるコースの標高差は1000メートル以上あったそうで、その過酷さが伺えます。

安政遠足のスタート地点となった安中城は永禄2年(1559)に安中忠政が築城したもの。跡を継いだ嫡子の忠成が長篠の合戦で討ち死にしたことでいったん廃城となるも、徳川家康の関東入封後に井伊家が再修築。当時の遺構はほとんど残っていませんが、旧安中藩郡奉行役宅などが移築復元されています(ちなみに映画のロケは山形県の庄内オープンセットを中心に、古くから山岳修験の山として知られる羽黒山などで撮影されたそうです)。

サムライマラソン

豪華オールスターキャストが織りなす群像ドラマ

袴姿の侍たちがマラソン大会というだけでキャッチーですが、今作は史実にはない創作要素が大胆に加えられています。藩主の板倉勝明(長谷川博己)が「優勝者の望みを何でも叶える」と約束したことから、江戸に出て絵描きになりたい藩主の娘(小松菜奈)、姫と結婚したい家臣(森山未來)、侍になって家族に楽をさせたい足軽(染谷将太)、さらに幕府の隠密(佐藤健)ら様々な者たちの思惑や欲望が交錯。日本を代表するオールスターキャストが集結して紡ぎ出す、濃密な群像ドラマは見ごたえ満点です。

さらにこうした群像ドラマに、安政遠足を“謀反の動き”と見なした幕府が放つ刺客の脅威や、アメリカから開国を迫られる幕末の時代背景などが絡められ、スリルとスケールに満ちたエンタテインメント時代劇に。隠密役の佐藤健が山道で敵と斬り合う『るろうに剣心』ばりのハイスピードな殺陣を皮切りに、「行きはマラソン、帰りは戦」というキャッチコピーそのまま本能むき出しに繰り広げられるアクションの数々に手に汗握ること間違いなし! 老侍に扮する竹中直人らのコミカルなやり取りで緩急を付けながら、104分のストーリーを一切間延びさせずに魅せるテンポ感も秀逸です。

サムライマラソン、佐藤健

西洋と東洋の視点が融合した独創的な映像体験

またこの映画は、『ラストエンペラー』や『十三人の刺客』のプロデューサーを務めたジェレミー・トーマス、イギリス人監督バーナード・ローズら海外スタッフが製作の中核を担っていることも大きな特色です。まるで日本の原風景を思わせる険しい山々や古道から醸し出される神秘的なムードは、サムライの世界を神聖なものとして見つめる西洋の視点があってこそ。さらに『乱』でアカデミー賞受賞経験を持つワダエミが衣装デザインを手がけるなど、世界の第一線で活躍するクリエイターの感性が宿った、独創的な映像世界を体験させてくれます。

知られざる日本の歴史に光を当てる物語として、また日本人が見ても海外の人が見ても純粋に楽しめるエンタテインメント作品として、注目の映画です。

サムライマラソン、ポスター


サムライマラソン』 2月22日公開
出演:佐藤健 小松菜奈 森山未來 染谷将太
青木崇高 木幡竜 小関裕太 深水元基 カトウシンスケ 岩永ジョーイ 若林瑠海/竹中直人
筒井真理子 門脇麦 阿部純子 奈緒 中川大志 and ダニー・ヒューストン
豊川悦司 長谷川博己
監督:バーナード・ローズ 原作:土橋章宏「幕末まらそん侍」(ハルキ文庫)
脚本:斉藤ひろし バーナード・ローズ 山岸きくみ
企画・プロデュース:ジェレミー・トーマス 中沢敏明  
音楽:フィリップ・グラス  衣装デザイン:ワダエミ  配給:ギャガ
©”SAMURAI MARATHON 1855”FILM Partners

執筆/城びと編集部(上村真徹)

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