上州言葉では「走る」を「飛ぶ」というのだそうです。
安政遠足。えんそくではなく、「とおあし」と読みます。江戸末期に行われた、安中城(現在の群馬県安中市)から碓氷峠頂上までの七里余(約30キロ)、高低差1,000メートルの競走で、「日本最古のマラソン大会」と表現されることもあります。そんな藩士鍛錬の行事に想いを馳せ、1975年に始まった「侍マラソン」。つい先日、50回目の記念大会が行われました(*山道が荒れているとの理由から、城址から峠関所・坂本宿までの約20キロで開催)。
武術の真髄は刀槍弓馬にあると言われますが、戦場に参じるのも、いざという時に逃げるのも脚あっての話。動乱期に関所を預かった藩主・板倉氏の家祖は徳川家康の信任篤かった京都所司代・勝重。同家の武勇専一たる気性はこのイベントにも見て取れますね。
実は数年前、筆者も知人と参加させていただきました。中年侍ふたりは無事完走。もともと参加者が思い思いの仮装で走ることで有名な大会ですが、いわゆるFun Runは関所まで。20キロ過ぎから山中に分け入る「峠コース」はガチのトレイルランで、沿道の声援は野生動物の鳴き声に変わります。それでも仮装で挑む強者はいて、岩に腰掛けて休憩する信玄公や亀仙人を目撃するのは一興でした。
ゴールは長野県境にある熊野神社。そこで美味しくいただけるのが「力餅」。中山道を踏破した参勤交代一行を支えた炭水化物、ぜひ一度ご賞味ください。現代版は上品なひと口サイズ。かつてはきな粉が主流だったようですだが、今はあんこ、おろし、ずんだとバリエーションも豊富。これを飯や蕎麦と一緒に掻き込んで糖質チャージ。峠越えに臨んだわけです。
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