理文先生のお城NEWS解説 第58回 安土城の再発掘②

加藤理文先生による「理文先生のお城NEWS解説」。全国のお城では日々発掘調査や研究が行われていますが、この連載ではお城のニュースについて「こんなところに目を向けると面白い!」というポイントや、注目すべき点を加藤先生から教わります。今回も、2023年に発表された安土城(滋賀県近江八幡市)の調査・整備計画がテーマです。令和の再発掘調査の内容に注目した前回に続き、天主台などの城跡が今後どのように整備・活用される計画なのか見ていきましょう。

滋賀県は、令和5年(2023)3月末に『特別史跡安土(あづち)城跡整備基本計画』を完成させ、この計画に基づき特別史跡安土城跡調査・整備事業をスタートし、さらなる特別史跡安土城跡の実像解明と保全・活用に取り組んでいくと発表しました。令和1回目の調査は、天主台の周辺を中心に発掘調査を始めることが発表されました。今回は、調査後どのような整備活用公開が計画されているかについて、滋賀県の「整備基本計画」から見ていきたいと思います。

安土城、整備計画
樹木管理後の、大手道より見た主要部。天主台や本丸の石垣まで見えています(滋賀県HP『特別史跡安土城跡整備基本計画』より転載)

現在までの安土城天主台の調査

天主台は、昭和15年(1940)度に、穴蔵(地階)の半分ほどを埋めていた土を除去するなどの発掘調査が実施され、礎石の全容が判明しました。平成10(1998)・12年に天主台の西面~北西面の隅角部、北西面~北面の隅角部などの調査、平成12年に穴蔵部分の再調査を実施していますが、天主台の全体構造を把握するための調査は未実施です。

安土城、天主台
安土城天主台南面。本丸に面した南側はきれいに見えていますが、北側は埋もれたまま。調査も未実施で、立ち入ることもできません

穴蔵部分の調査は実施されていますが、天主台1階部分の平面部の調査は未実施です。ここの調査は安土城の天主解明にとって非常に重要なポイントの一つだと思われます。また、天主台の北側半分の石垣は、部分的な調査は実施されてはいますが、現在も焼失の際に崩れ落ち埋もれたままで残されています。併せて、本丸取付台から現在信長廟となっている伝二ノ丸跡の状況把握も進んでいません。安土城には、本丸御殿、南殿、光雲寺御殿の3つの御殿があったと『信長公記』に記載されています。天主に最も近くて、一段低いこの場所の解明も期待されます。

滋賀県は、遺構が露出し風雨にさらされている現状の穴蔵部分に、多い年で年間7万人が訪れる天主台の保全のために効果的な保存方法の検討と適切な公開活用を図る必要性があるとしています。

安土城、整備計画
『特別史跡安土城跡整備基本計画』で示された「天主台整備計画」。あくまでも計画であって、発掘調査を実施し、その結果をもって検討することになるということです(滋賀県HP『特別史跡安土城跡整備基本計画』より転載)

滋賀県が計画している具体的な取り組み

令和の整備に向けて、天主台周辺地区の調査・整備の具体的な取り組み計画が示されています。

①天主台の未発掘部分の調査を実施することによって、これまで解らなかった天主台全体の姿や構造を明らかにする。
②発掘調査の成果を検討して、その価値を誰にでも解るようにして、遺構保護を前提とした整備を実施する。
③天主台の穴蔵の床面や礎石群、石塁部分は、安全に留意して新たな通路や見学場所などを設置して、より安全に見やすくする。

安土城、整備計画、天主台
これが整備後の安土城天主台です。穴蔵や入口の笏谷石敷の踊り場も保護されます(滋賀県HP『特別史跡安土城跡整備基本計画』より転載)

④天主台及び主郭部の景観の改善を図るために、樹木の整理を実施する。
➄歴史的建造物の復元は実施しないため、VRやARなどの最新の技術を導入して、誰にでも解るようにする。

以上のような具体策が示されています。

安土城全体を見た場合、やはり全域が樹木に覆われ鬱蒼とし、立ち入れない部分が多いのが大きな問題点ではないでしょうか。かつては八角平まで自由に行き来でき、さらに伝台所、伝米蔵、伝煙硝蔵、伝堀邸なども見学可能でしたが、平成の調査終了後、すべての通行が禁止されてしまったままの状態になっています。

信長の居住部分にあたる天主・伝本丸・伝二ノ丸の部分にしても、自由な往来ができないだけでなく、樹木が繁茂し、全体像を把握できない状況になっています。細かなことになりますが、伝蛇石の背後、伝二ノ丸の南面石垣は安土城内で最も巨石を利用し積み上げた石垣ですが、今は見ることも難しい状況です。樹木管理もまた、大きな課題だと感じます。

今回、安土山全体の樹木管理が示され、駐車場から天主台や主要部石垣が見える計画図が示されています。今後の滋賀県の整備の進捗が大いに期待されます。

安土城、整備計画
樹木管理が進めば、全体の石垣も確認され、自然災害による倒木等による遺構破壊や、巨木の根による遺構破壊も回避されます(滋賀県HP『特別史跡安土城跡整備基本計画』より転載)  

次回は「家康の遠江の拠点・城之崎城」です。

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加藤理文
加藤理文
公益財団法人日本城郭協会 理事、学術委員会副委員長
NPO法人城郭遺産による街づくり協議会監事
1958年 静岡県浜松市生まれ
1981年 駒澤大学文学部歴史学科卒業
2011年 広島大学にて学位(博士(文学))取得
(財)静岡県埋蔵文化財調査研究所、静岡県教育委員会文化課を経て、現在袋井市立浅羽中学校教諭