城の自由研究コンテスト 来年度へ向けてのアドバイスも! 第18回小学生・中学生「城の自由研究コンテスト」表彰式レポート

毎年、小・中学生を対象に(公財)日本城郭協会が募集している「城の自由研究コンテスト」をご存知ですか? その年の優秀作品は年末に開催されるお城の総合イベント「お城EXPO」で展示され、この展示を楽しみにお城EXPOに来たという方も少なくない注目のコンテストです。今回は、2020年1月に行われた第18回小学生・中学生「城の自由研究コンテスト」の表彰式の模様と、各作品の受賞ポイントをレポートします!




「城の自由研究コンテスト」とは?

城の自由研究コンテスト
(提供:日本城郭協会)

「城の自由研究コンテスト」は毎年小・中学生を対象にお城をテーマにした自由研究を募集し、12月に入賞作品を発表して翌年1月に表彰式を行っているコンテスト。2016年からは優秀作品が「お城EXPO」で展示され、多くのお城ファンにも認知が広がっています。個人でも団体でも応募でき、今年の1月に表彰式が行われた「第18回小学生・中学生城の自由研究コンテスト」は、個人応募103作品、団体応募の30団体207作品、計310作品の応募がありました。応募作品は1次審査から最終審査まで3回の審査を経て、文部科学大臣賞・日本城郭協会賞・学研プラス賞・審査員特別賞・優秀賞・佳作が選ばれます。なお最終審査は、主催者、教育関係者、城郭研究者により行われています。

第18回小学生・中学生「城の自由研究コンテスト」表彰式

城の自由研究コンテスト

日本城郭協会理事長の小和田哲男先生による開会のご挨拶、祝辞の後に、「城の自由研究コンテスト」の審査委員長である日本城郭協会理事・加藤理文先生から、審査講評がありました。今回の受賞作品は21作品、受賞者は23名でした。加藤先生の講評とあわせて受賞作品をご紹介します。

■文部科学大臣賞

城の自由研究コンテスト
「尾張名古屋は城でもつ~名古屋城再建を考える~」(鵜飼航さん/小6)
作品としての完成度が高く、非常に上手にまとめてありました。現存天守・復興天守を有する各自治体が抱える問題点に対し、識者・行政・市民・観光客など幅広い層からアンケートを取り、その結果をしっかりと分析できているとともに、法規に対しても踏み込んでおり、小学6年生としては出色の作品となっています。自分なりの独創的な発想が加われば、さらに素晴らしい研究になったと思いました(加藤先生)

■日本城郭協会賞

城の自由研究コンテスト
「なぜ五つもの城(グスク)が世界遺産となり得たのか」(土橋優里さん/中1)
問題への視点からまとめ方まで、一連の研究成果が非常に丁寧にまとめられた作品です。国宝5城との比較、世界遺産に至らぬ点、登録に必要な要素などを自分なりに示せたところは評価できます。報告となる部分を精選し、考察を増やせばさらにすばらしい作品に仕上がったと思います(加藤先生)

■学研プラス賞

城の自由研究コンテスト
「北条氏照の城は「縄張」がおもしろい!!~滝山城と八王子城を歩いて~」(五十嵐智洋さん/小4、五十嵐充輝さん/小2)
小学生らしい発想で楽しみながら、思いをめぐらした城攻めと研究として非常に上手にまとめることができていました。九州の城と関東の城を体験から比較したこと、模造紙を使った土の実験も面白く仕上がっています。滝山城と八王子城に、こうした工夫がどう生かされているかに言及することができれば、さらに完成度があがると思います(加藤先生)

■審査員特別賞

城の自由研究コンテスト
「城の攻め方、守り方」(宮原知大さん/小5)
これまで調べてきた世界の城と日本の城の成果がしっかりと踏まえることができていました。守り方について稜堡(りょうほ)に行きつき、現地に行って調べまとめたのが良かったと思います(加藤先生)

城の自由研究コンテスト
「矢狭間と弓矢~本当にこの狭間で射てるのか~」(室伏好誠さん/中1)
城の中の部位に光を当てた着眼点が良かったと思います。矢狭間(やざま)に焦点を絞り、徹底的に調べ、実用実験をして結論を導き出す方法が面白かったと評価できます(加藤先生)


■優秀賞

「やはりあったぞ!!鎌倉城」(津志田楽さん/小3)
「今川氏のつめ城 賤機山城のすがたを復元!~今川氏の山城はどのようなものだったのかを探る~」(望月洸志さん/小4)
「なぞを解き明かせ!未来に繋ぐ丸岡城」(大野遙真さん/小5)
「ぼくの町の城 河渡城推定復元模型」(坂勇多香さん/小6)
「味原池は真田丸の三日月堀」(森田康生さん/中3)
地元に残る城に焦点を当てた作品あり、従来の枠にとらわれない作品あり、工夫を凝らした模型ありと、作者の熱意が伝わる作品が多くありました(加藤先生)

■佳作

「伊予八藩-お城とじんやあとをたずねる-」(村口陽音さん/小3)
「とうどう高とらと城づくり」(竹村是清さん/小3)
「上田城の鬼門除けと真田昌幸の作戦」(佐々木拓真さん/小3)
「いざ行かん 大我のお城記パート2,お城と神社・鬼門へん」(室伏大我さん/小4)
「難攻不落な城を考える」(竹内真利さん/小5)
「首里城の神様」(上里熙さん/小5)
「わたしたちの考えた駿府城」(山本悠太さん/小6、山本遥香さん/中2)
「ムーンキャッスル」(金子瑛さん/中1)
「讃岐国の中世城郭~侵犯する他勢力と土豪の「指向」~」(谷本要さん/中2)
「本佐倉城 坂東の堅城を読み解く」(北川漱二さん/中3)
「蘇れ!諏訪の浮城 高島城~本丸の姿を想像してみた~」(小口心也さん/中3)

■団体賞

残念ながら今年度該当する団体はありませんでした

自由研究にチャレンジするうえでのポイント

城の自由研究コンテスト

講評の最後に加藤先生から、こんなことに注意してまとめると良い作品になると思うアドバイスがありました。

■テーマ設定

一番大切なのは、テーマ設定です。何に視点を当てて、まとめるかが大事です。過去の作品や参考書等にとらわれることなく、自分なりの着眼点を持ってテーマ設定しましょう。

■まとめ方

焦点を絞って、徹底的に掘り下げると良い作品になります。その際、自分なりの考え、独創的な発想があれば、より人を引き付ける作品に仕上がります。

■アンケートをとる場合

アンケート等をとる場合は、大変かもしれませんが、幅広い層からまんべんなく集めることです。アンケート結果が生かせるかどうかは分析次第です。目的を明確にして分析しましょう。

■作品は総合評価

作品は、レポート・模造紙・模型などをあわせた総合評価です。それぞれが個別作品として独立していることより、相互に補完し合っていることで評価は高くなります。なぜレポートだけでなく、模造紙が必要だったのか、模型が必要だったのか伝わるようにしましょう。
※研究はレポート(50ページ以内)・模造紙作品(3枚以内)・模型など単独での応募が可能。ただし模型はテーマに関するレポートを作成し添付する必要があります

小和田哲男先生による特別講演

城の自由研究コンテスト

実は表彰式では、毎年受賞者に向けて小和田哲夫先生が特別講話をされます! 受賞した小学生・中学生しか参加できない、まさにスペシャルな講話です。今年のテーマは「築城名人の城を歩いてみよう」。縄張名人として「山本勘助」、「黒田如水(黒田官兵衛)」、普請名人として「藤堂高虎」「加藤清正」の4人を取り上げて、お城研究のヒントのお話がされました。

さて、自由研究に挑戦してみたいけど、みんなどうやって研究しているの?と思った方もいるのではないでしょうか。城びと編集部では今回の受賞者の方にアンケートをお願いして、「テーマをどうやって思いついたの?」「どのくらい時間をかけて制作したの?」等々、気になるあれこれを伺いました! 次回の記事でご紹介しますのでお楽しみに!


小学生・中学生「城の自由研究コンテスト」
主催 公益財団法人日本城郭協会/株式会社学研プラス
後援 文部科学省/読売KODOMO新聞/教育新聞社
協力 城びと

城の自由研究コンテストについては、日本城郭協会のサイト(http://jokaku.jp/educational-programs/shiro-contest/)をチェック!

執筆・写真/城びと編集部