お城紀行〜城下と美味と名湯と お城紀行〜城下と美味と名湯と 第4回 |【津山城・後編】江戸時代の風景が残る城下町を散策

お城はもちろん、その城下町にある美味しいグルメや温泉を紹介する「お城紀行〜城下と美味と名湯と」。今回は、岡山県の津山の城下町を、江戸時代の風情と美味を求めて散策します。さて、どんなステキなモノに出会えるのでしょうか。※初掲 2018年1月11日。2022年10月5日更新



津山城、城下、町並み
津山城下の町並み

古い町並みが保存されている城下町へ

津山城の後は、風情ある城下町を歩きます。
岡山県東北部、旧美作国の中心地である津山は、出雲街道が通り、明治時代まで吉井川に高瀬舟が行き交った水陸の要衝。空襲を免れたため、城下町もよく残っています。

城西・城東の両エリアがあり、その分岐点は南北に流れる宮川。今回は、城西エリアにあたる観光センターから旧出雲街道沿いを東に歩き、一本北側から戻ってくるという、城東エリア中心のコースを歩いてみることに。

宮川までは、本屋さんや酒屋さんといった地元の個人商店が並びます。生活に溶け込んだ町家の風景は、がんばり過ぎない感じがなんだか落ち着きます。

宮川に架かる大橋の西詰めは、今でいう交番の役割の旧東大番所跡。橋を渡って城東エリアに入ります。一帯は重要伝統的建造物群保存地区になっていて、映画やドラマのロケ地として使われることもあるようです。

もと銭湯のコーヒー店、カレーやピザが自慢のカフェなど、気になるお店が点在します。着物レンタルのお店もあるので、和装で町ブラなんていかが? 

城東むかし町家、津山城、城下
城東むかし町家。江戸時代から昭和初期の建物の融合は、空襲を逃れた町ならでは

窓や出格子など細部に手が込んだシャレた町家が並んでいて、見学できる建物もあります。なかでも「城東むかし町家(旧梶村家住宅)」は、中庭にステキな洋館が組み込まれ、茶室や蔵も備えたスゴイお屋敷。必見です。

洋学者・箕作阮甫旧宅の隣には「津山洋学資料館」が建っています。美作は優秀な洋学(蘭学)者を生んだ地域なのだそう。

津山城下、洋学資料館、銅像
洋学資料館の前庭には、美作が誇る洋学者たちの胸像が並びます

さてちょっと疲れたので、資料館に隣接する観光案内所「和蘭堂」内のカフェでひと休み。町を歩くとわかりますが、津山にはコーヒー推しの店が多いのです。それもそのはず、「珈琲」という漢字を充てたのは、津山の藩医で洋学者・宇田川榕菴という人なのだとか。このお店も自家焙煎で、メニューには他にも地元産にこだわったものが並んでいます。

夫は津山産小麦使用の津山うどん&コーヒーのセット、私はあんこ・「作州黒」の黒豆きなこがけ白玉団子&コーヒーのセットをオーダー。コーヒーは、香り豊かで後味スッキリ。他のお店のコーヒーもぜひ飲んでみたいものです。

津山城、観光案内所、和蘭堂
まったりできるカフェ併設の観光案内所「和蘭堂」。お土産・雑貨もアリ

津山城下、和菓子セット、白玉団子、コーヒー、和蘭堂
香り豊かな自家焙煎コーヒーと手作り白玉団子の「和菓子セット」

貴重な現存遺稿は近くの神社に

では、ひと筋北の道を引き返すとしましょう。城東のお寺や神社はこの道の周辺に集まっています。大隅神社の神門は、津山城の貴重な現存遺構のひとつなので、ぜひチェックを。

進むにつれ、お城の石垣がどんどん迫ってきます。宮川をまた渡りますが、こんどは先ほど悶絶した野面積を見上げながら、城の鬼門を守る千代稲荷の赤い橋を歩きます。

津山城下、石垣、津山城
橋から見えるお城の石垣。城下からでもこの威圧感

ゴツゴツした岩肌が露出する川沿いの道を南下すると、やがて櫓台のような石垣が現れます。ここを右折で、観光センターに戻ります。

最後に、約5km北の美作一宮・中山神社に車を走らせ、もうひとつの津山城現存遺構である神門(もと四足門)を見に行きます。
桧皮葺に葺き替えられてちょっと雅な佇まいですが、門の中に立って見上げてみると、造りはいたって質実剛健で、まさに「城門」。
尼子晴久再建の社殿は中山造という独特の建築様式で、巨大さがよくわかる側面からの見学がおすすめ。また境内の磐座に祀られる「猿神社」は安産の神様で、強力なパワースポットなのだそう。

津山城、中山神社、神門、四足門、移築
中山神社の神門は、津山城の四足門が移築されたもの

そんなこんなで、もう夕方。締めくくりは、やっぱり温泉!津山に近い湯郷温泉の、ちょっと離れた日帰り温泉へ向かいます。
露天風呂はなく、真ん中にヒノキの浴槽がドンとあるだけのこぢんまりした温泉ですが、お湯はトロットロで、肌に優しいベールをかけてくれる感じ。嬉しいことにシャワーからも温泉が出るんです。トロットロに包まれて地元のお母さんたちの柔らかい岡山弁を聞きながら、厳めしい石垣たちを思い浮かべて、ニンマリ。
こうして石垣まみれの一日は、暮れていったのでした。


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津山城(つやま・じょう/岡山県津山市)
津山城は織田信長の小姓として有名な森蘭丸の弟・忠政が築いた城。破風を持たないシンプルな五重の天守を持つ城だったが、廃城令により建物は全て取り壊されてしまう。2005年に築城400年事業として備中櫓が復元された。

執筆・写真/山本ミカ(やまもと みか)
兵庫県出身・歴史ライター。小4の時に歴史に目覚め、書店・大学出版会勤務を経てフリーライターに。現在の活動はもっぱら日本史関係書籍の執筆協力。石垣・巨石・製鉄が好物(鉱物?)。日本城郭協会に入会し、近ごろはお城にどっぷり。

※歴史的事実や城郭情報などは、各市町村など、自治体や城郭が発信している情報(パンフレット、自治体のWEBサイト等)を参考にしています

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