小・中・高校生の「城びとお城部」 【城びとお城部レポート】お城EXPO攻城の記録(駒場東邦中学校・高等学校)

部活や授業でお城や歴史について学んでいる小・中・高校生が研究内容や活動内容を発表する「城びとお城部」。前回、部活動の様子を紹介してくれた、駒場東邦中学校・高等学校(東京都)の「日本之城研究会」が再登場です。中高の部活動としては全国的にも珍しく日本のお城を専門に研究している部員のみなさんに、2022年12月に横浜で開催されたお城EXPOのレポートをお願いしました! お城好きな中高生たちは「お城EXPO」をどのように楽しんだのでしょうか。

お城EXPO、それは年に一回の城の祭典。
「専門的で、初心者には、ついて行けなさそう」。そう思っている方も少なくないのではないだろうか。
そんなお城EXPOに日本唯一の部活動、日本之城研究会が潜入し、その魅力に迫る! 
この記事を見終えたとき、あなたはきっと来年のお城EXPOが待ち遠しくなっているだろう。それでは4名の城研会員のレポートを見ていこう。

お城EXPO魅力紹介(中学3年生 小板橋拓人)

2022年12月17・18日にパシフィコ横浜で開催されたお城EXPOに行って来た。その中でも特に記憶に残ったところを皆さんと共有したい。大きな期待を胸に会場に向かった。 
 
お城EXPO2022,城びと

到着早々、前回行った5年前のお城EXPOと比べ、規模が大きくなっていることに圧倒された。城の人気が高まっていることが感じられ、城好きとして、とてもうれしい。

最初に紹介するのは「城めぐり観光情報ゾーン」だ。
ここは、各団体がその城の魅力を発信する場所で、たくさんの団体がそれぞれの方法でその城の良さを伝えていてとても良かった。ブースの数が5年前と比べ桁違いに増えていて、改めてお城界隈の進歩を感じた。行ってみたい城のパンフレットももらえるため、これからたくさん城をめぐる予定のある方には特におすすめしたい。

お城EXPO2022,城びと
実際の様子
 
お城EXPO2022,城びと
中心には大きなモニュメントも!忍者のみなさん(編集部注:徳川家康と服部半蔵忍者隊®の服部半蔵様、三平様、凛様)も記念撮影
 
次にイベントステージについて。ここではご当地キャラや武将隊が登場して魅力を紹介してくれる。

お城EXPO2022,城びと
イベントステージの看板

また「 城の自由研究コンテスト」の表彰式も行われた。

自分が今回おEXPOを訪ねた理由の一つは、同好会の後輩伊藤君の「城の自由研究コンテスト」の表彰式に参加することだったが、小和田先生をはじめとする城界の偉い先生方が参加されていて圧倒された。
(編集部注:部員の伊藤拓生さんは2022年に開催された第21回「城の自由研究コンテスト」中学生の部(日本城郭協会主催)で日本城郭協会賞を受賞されました)

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表彰式の様子

さらに彦根城を訪れた時には会えなかったひこにゃんに会うことも出来て大満足だった。
 
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可愛いひこにゃん

最後に紹介するのは「城下町物販ブース」。
ここではお城EXPOでしか買うことのできない限定商品や様々な城グッズが売っていた。石垣風呂敷などユニークなものもありついつい財布に手が伸びた。

お城EXPO2022,城びと
お城EXPO限定のグッズ
 
今回紹介することが出来たのは3つのコーナーだけだが、この他にも先生方による講演会やフォトスポットやコーエーテクモゲームスとのコラボ展示など、様々な企画展示もあるので是非お城EXPOに足を運んでみてほしい。

お城 EXPO を通して (中学3年生 高橋遼)

12月17日の午後、パシフィコ横浜で開催されたお城 EXPO に行ってきた。

私は、このイベントにまだ一度も行ったことがないので、とてもワクワクしていた。いざ会場に入ると、壮大なステージ、豪華な展示、たくさんの幟があり、その迫力に圧倒された。私は 1階の「城めぐり観光情報ゾーン」に長い間いたので、今回は多くの城のブースの中でも印象に残った 3つの箇所について紹介しようと思う。

1つ目は、江戸城天守を再建する会だ。
衆議院と参議院宛の江戸城再建のための署名活動を行っていて、私も江戸城の天守再建については前向きな意見を持っていたので署名した。明暦の大火により焼失した江戸城の天守を、再建し日本のシンボルタワーにし、日本の魅力的な文化と技術を海外に発信することを目的とされていて、是非成功してほしいと思った。

2つ目は、岡山城だ。
2022 年秋に大改修が完了した岡山城は、宇喜多氏と池田氏が主な城主だった。また、1 階の平面や天守の石垣が、不等辺五 角形をとなっているのも特徴の 1つだ。展示は、宇喜多秀家の美しい甲冑や羽織に加え、岡山城グッズも販売していて、私はマスキングテープを頂いた。岡山城の漆黒の天守は、数ある天守の中でも美しく魅力的だと思うので、自分も近いうちに行ってみたいと強く感じた。

3つ目は、岐阜城である。
斎藤道三、織田信長と深くかかわる有名な岐阜城。城研の夏合宿で行った城でもあったので、思い出しながら見学した。展示は、岐阜城の歴史や構造を紹介するだけでなく、発掘調査の成果や史跡岐阜城跡整備計画についても紹介していた。また中井均先生が 監修、香川元太郎さんが作画した「信長時代の岐阜城」という巨大タペストリーも展示されており、とても勉強になった。

お城 EXPOを通してたくさんの人と交流し、お城に関する知識も深まった、とても充実した 1 日となった。来年はより多くの城を見学し、1 日中お城 EXPO に浸りたいと思った。 

お城EXPO2022,城びと
お城 EXPO にいたマスコット 著者撮影(編集部注:戦国IXAブースのいくさにゃん)

2022年お城EXPO(中学2年生 伊藤拓生)

ここでは2022年12月17日、18日に開催されたお城EXPOの中で最も印象に残った1階の「城めぐり観光情報ゾーン」と、アネックスホールで行われた「厳選プログラム」について紹介したいと思う。

1つ目の「城めぐり観光情報ゾーン」とは、全国の各城郭の団体がそれぞれブースを出し、多くの城の情報を発信するエリアである。
今年は79のブースがあり、多くの人で賑わっていた。大きく精密な模型が置かれていた金田城のブース(写真1)やVRを使った展示をした今帰仁城のブースなど個性的な物もあった。

お城EXPO2022,城びと
写真1.金田城の模型

どこのブースも多くの情報を発信しており、非常に魅力的だったが、ここではその中でも最も魅力的だと感じた「安芸高田市 三矢の訓連携協議会」の郡山城のブースについてさらに詳しく紹介したいと思う。

まず目を引くのは大きな郡山城の模型である。郡山城の縄張が一目で分かるようになっており、郡山城の縄張のイメージがない人でも楽しめるものである。郡山城は曲輪が他の城に比べて多いが、模型ではその1つ1つが再現されていて、細かく見れば見るほど面白かった。

次に魅力的だと感じたのは豊富な情報量である。お城EXPOはパシィフィコ横浜で開催されるため、広島にある郡山城のことは細かいところまで知っている人は多くはない。しかし、この展示では郡山城についての説明が細かく、新しく知ったものもあった。

そして、このブースでもっとも良かったのは、出展者の方による講座である。「城めぐり観光情報ゾーン」では時々ブース内で講座を行うことがあるが、今回の郡山城の講座が他と違う点は、模型やスライドを多用した点である。近年作成された赤色立体地図から曲輪が新しく発見されたことや、ドローンによって撮影された郡山城の動画などを、模型と合わせて解説し、非常に興味深いものであった(写真2)。

この普段は聞いたり見たりできないものを体験できるというのがお城EXPOの魅力の一つである。 

お城EXPO2022,城びと
写真2.講座の様子

次に紹介するのは「厳選プログラム」である。
これは全国の有名な城や歴史の研究者の方による講演会で、これだけの数の講演会が1カ所で聞ける機会はなかなか無い。僕は17日の小和田哲男先生による「家康の城攻めを採点する」と、18日の千田嘉博先生による「城から考える家康」を聞いた。講演の内容を紹介することはできないが、どちらの先生の講演も、とても面白いものであった。

また千田嘉博先生による講演会の後、先生のサイン入りの本を買うこともできた。これもお城EXPOの魅力である。


すばらしき、お城EXPOの特別展示(高校1年生 吉田悠人)

12月17日パシフィコ横浜ノースにて日本一の城の祭典お城EXPOが開催された。私は開城時間の9:00に最寄り駅のみなとみらいに到着したのだが、パシフィコ横浜にはすでに長蛇の列ができていた。それはお城EXPOがいかに大規模なイベントであるかを物語っていた。そしてそれほどのイベントに招待していただけるほど城研の認知度も高まったのかとある種の感動を覚えた。

今回は3階の展示について詳しく紹介していこうと思う。3階にはお城EXPOの主催者による展示等が行われていた。

まず、企画展示「城郭と技術」では築城の際の測量術などが紹介されていた。高さのわかる建物を利用して求めたいものの大きさを計る北条式測量術が印象的だった。図形による解説は理系心をくすぐられる。文系のみならず理系の知的好奇心に火をつけてしまう、城というものの奥深さを再認識した。実物の資料やスタッフの方の解説のおかげで、より理解が深まるよい展示だと感じた。

次にコーエーテクモゲームス特別展示についてだ。
この展示は「信長の野望」をはじめとした、コーエーテクモゲームスの歴史ゲームに関する展示だ。入り口に入るとまずスクリーン上映がある。ここではゲーム内での城の描かれ方や制作者の方々による話が収録されていた。制作者の方々の話を収録できている所がまたお城EXPOの大きさを示している。

ゲーム内では山、川、海を忠実に再現し、縄張や曲輪も正確に再現することで城の防御性能を過不足なく表現していることがわかった。制作者の方々による話のなかの「戦国時代は海外から新技術がもたらされ、多くの英雄が誕生し、大軍を破る奇策、英雄同士の絆、ダイナミックな戦いなど多くのロマンがあるため、多くの人が惹かれるのではないか。」という言葉に深く共感した。ゲームを実際に体験することもできて、苦戦してしまったものの、アンケートに答えて外れなしのくじを引いて、景品をもらった。

お城EXPO2022,城びと
コーエーテクモゲームス特別展示に飾られていた織田信長の甲冑の模型

最後に長野剛武将イラスト原画展についてだ。
関ヶ原西軍の武将8人、東軍の武将8人と美濃三傑(織田信長、明智光秀、斎藤道三)の原画、合わせて19の作品が展示されていた。これだけ多くの原画が一カ所に集まるのは初めてらしい。やはり、お城EXPOはすごい。長野剛さんのイラストは甲冑のリアリティだけでなく背景の景色や紋様も細かく描いており、歴史ゲーム好きの人や、甲冑好きの人だけでなく浮世絵や家紋が好きな人も楽しめる絵であると感じた。

お城EXPO2022,城びと
長野剛武将イラスト原画展に飾られていた織田信長の絵

会場の1階では各地から集まった様々な団体が地元の城をPRすべくブースを開いていた。
各ブースでは城の情報が聞けたり、くじやゲームができたりする。VRや縄張りの模型があったブースが印象的だった。また、お城に関連したグッズ販売も行われており、限定品もあるので記念に買ってみてはいかがだろうか。

1階には各ブースの人々が殺陣や演舞などを披露するイベントステージがあり、3階にはテレビ並みの完成度のシアタールームがあるため全ブースを見終わっても楽しむことができる。4階には休憩場と弁当売り場があり、昼をまたぐ場合も安心だ。

このようにお城EXPOは一日中飽きることなく城を楽しむことができる濃密なイベントだ。今年行かなかった人も是非来年のお城EXPOに足を運んでみてほしい。


以上で今回のお城EXPOのレポートは終わりである。このレポートを読んで、お城EXPOに行きたいと思っていただけたなら幸いだ。今回紹介されたこと以外にもまだまだたくさんの魅力がお城EXPOにはある。ぜひ、それは来年のお城EXPOで読者の皆さん自身が見つけ出してほしい。

▼駒場東邦中学校・高等学校 日本之城研究会って? こちらの記事をチェック!

執筆・画像/駒場東邦中学校・高等学校 日本之城研究会 小板橋拓人さん(中学3年生)、高橋遼さん(中学3年生)、伊藤拓生さん(中学2年生)、吉田悠人さん(高校1年生)

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