2024/07/02
日本城郭協会大賞 【インタビュー】審査員特別表彰：大津市および株式会社三王不動産流通～坂本城石垣保存～
城郭文化の振興に貢献した団体及び個人を顕彰する「日本城郭協会大賞」。第3回日本城郭協会大賞では、従来琵琶湖の中にのみ存在が確認されていた坂本城の石垣が宅地造成工事中に地上で発見されたことを受け、工事を中止して石垣保存を決めた大津市および株式会社三王不動産流通に「審査員特別表彰」を行いました。
＜大津市 および 株式会社三王不動産流通～坂本城遺構保存に向けた活動～＞
2024年2月、「幻の城」と言われていた坂本城（滋賀県大津市）の石垣が地上で発見されたニュースが流れ、全国のお城ファンを沸かせました。私企業が取得した土地から出土した坂本城の遺構保存に尽力した大津市と、遺構保存のために工事計画の中断を決めた株式会社社三王不動産流通に感謝の意を込めて、審査員特別表彰が行われました。
坂本城の石垣
―「坂本城の石垣発見」のニュースを見たときは全国のお城ファンが沸き立ちました。一報を受け取られた時のお気持ちを教えていただけますか？
大津市長 佐藤健司さん 報告を受けたのは、昨年末のことでした。坂本城は、ルイス・フロイスの『日本史』で豪壮華麗と謳われていたものの絵図等は残されておらず、長く「幻の城」とされていたため、今回の発掘成果は、城の実態の解明につながる大きな発見であり、歴史的に意義があるとともに、今後、本市（大津市）の歴史まちづくりにも大きく関わってくるものだと思いました。
三王不動産流通代表取締役 河本善秀さん 大津市から開発中止の要請が出るとは思っておらず、調査期間が延びるな、調査費用がかさむなというぐらいの認識でした。
―大津市や会社に多くの声が寄せられたかと思いますが、印象深いものはありましたか？
大津市長 「遺構を残してほしい」という声は市民の皆さまからもたくさんいただきました。また、現地説明会に市内だけでなく、全国各地から2日間で2000人以上の方が参加されたのを目の当たりにして、坂本城への関心の高さを実感し、多くの皆さんと保存への思いを共有しました。
三王不動産流通 大津市からの開発中止要請に同意したことの報道を観た一般の方から「遺構を保存してくれて有難う」という感謝の手紙をいただいたことです。
―2月7日に発見のニュースが流れてから、8日に説明会開催発表、10～11日現地説明会開催、そして20日には石垣保存の発表と、一連の事柄が大変スピーディーに成されました。大変難しい点が多くおありだったかと思われますが、工事中止に至るまでの経緯を教えてください。
現地説明会の様子
大津市長 まず、株式会社三王不動産流通様と本市の担当者が協議を行いました。その後、私自身も現地を確認した上で、まずは2月10日と11日に現地説明会を開催することとしました。その後、2月中旬に三王不動産流通の河本社長と私が面談し、本市の思いを直接お伝えしました。その後も協議を重ねる中で、工事を中止し、発見された坂本城跡の遺構を保存、国史跡指定を目指すため、互いに協力することについて合意し、3月21日に両者で国指定史跡を目指す覚書を締結いたしました。
三王不動産流通 2023年12月下旬に大津市から坂本城跡らしきものが発掘されたと報告を受けて、2024年1月上旬に現地で大津市からの説明を受けました。この時、発掘されたものが本当に坂本城跡なのかを調査し、再度協議したいという旨のお話を伺い、1月下旬に「これはおおむね坂本城跡の遺構である」と報告を受け、2月上旬に正式に大津市から開発中止の要請をいただきました。その後弊社及び三王不動産グループにて協議した結果、今回については発掘された遺構の重要性と世論の声を鑑みて開発中止に同意致しました。
覚書締結式の様子
―「残すのは難しいだろう」と正直半分諦めていたので、いちお城ファンとしては保存のニュースは本当にうれしかったです。同様の思いを持つお城ファン・城びと読者へメッセージをお願いします。
大津市 現地説明会への参加や本市に対する多数の激励、誠にありがとうございました。今回発見された坂本城の遺構は、今を生きる私たちの責任において、後世に受け継いでいくべき貴重な財産であると考えております。全国の市町村の中で国指定文化財が第3位の件数を誇る本市では、豊かな歴史文化遺産を活かしたまちづくりを目指しています。今後とも、明智光秀公ゆかりの坂本城の保存・活用をはじめとする本市の取組に対しましてご支援とご協力をお願いいたします。
三王不動産流通 この度弊社の開発地から発掘された「幻の城」と言われる坂本城の遺構が発掘されたことで、皆様からこの遺構を保存してほしいという熱意を強く感じました。弊社としましてはなかなか判断が難しい事案でありましたが、今回については、弊社が開発を通じてまちづくりに貢献することよりも、この遺構を保存することの方がよりまちづくりに寄与できる、と判断致しました。この弊社の決断がまちの未来にとって素晴らしいものとなりますことを心からお祈りしております。
この度は非常に光栄な賞をいただけますこと心から感謝申し上げると共に、これからもまちづくりに貢献できる開発事業を推進して参ります。
―ありがとうございました。
※2024年2月10～11日に開催された現地説明会資料は、大津市のサイト（https://www.city.otsu.lg.jp/manabi/rekishi/iseki/1501726485906.html）からダウンロードできます。
※株式会社三王不動産流通は、「快適な家づくり、住み良い街づくり、そしてそれを担う確かな人づくり」をモットーに掲げ、地域社会の発展をめざしている不動産会社。会社HP：http://www.san-o-fudousan.co.jp/
執筆／城びと編集部 取材協力・画像提供／大津市、株式会社三王不動産流通
