2018/07/13
城びとのイベントPICK UP! 【イベントレポート】「たられば」妄想!小和田泰経先生と小田原攻め(東京都)
2018年7月6日(金)東京の神保町にて、小和田泰経先生と いなもとかおり による城びとのトーク&ワークショップイベントが行われました。この日のテーマは「小田原攻め」です! 北条領各地で勃発していた戦いから北条家の家族構成まで、泰経先生が解説。さらには、グループに分かれて「どうしたら北条氏が勝てたのか?」の妄想ディスカッションをしました! 歴史ロマンに思いを馳せたイベントの様子を、いなもとがレポートします。
本日のトークテーマは「小田原攻め」
平日の夜にも関わらず、たくさんの北条氏ファンが集まってくださいました。
天正17年(1589)11月に宣戦布告をした豊臣秀吉による「小田原攻め」は、翌年7月5日の小田原開城を以て幕を閉じます。イベントが開催された7月6日は、小田原開城日の翌日ということもあり、この日のトーク内容は小田原攻めです。会場には、北条氏が好きな方のほか、小田原攻めを詳しく知りたいというビギナーさんも集まりました!
イベントの前半は泰経先生による小田原城攻めの解説。後半は、グループに分かれて、どうしたら北条氏は勝てたのかをテーマにした「たられば妄想ディスカッション」です。
北条家に関連するキーパーソンは誰?
泰経先生オリジナル「北条氏閨閥図」を見ながら。
トークのはじめは「北条氏閨閥図」を見ながら、北条5代やその兄弟、姻戚関係などを詳しく解説! 北条家を取り巻く、キーパーソンをあぶり出します。泰経先生注目の人物は、3代氏康の娘・浄光院と結婚した古河公方・足利義氏。そして、5代氏直の妻・督姫の父にあたる徳川家康といった、姻戚関係を結ぶ今川家、武田家、上杉家、徳川家などの隣国大名も重要だそうですよ。
ちなみに名前に「氏」のつく人が多い北条家ですが、これは先祖代々名前に受け継がれる通し字です(氏氏氏氏氏で、私は混乱します……)。
北条氏閨閥図で頭の中を整理した後は、いよいよ本題の小田原攻め! 半年以上にわたる合戦期間中、北条領各地では戦が勃発。豊臣軍は、小田原城の支城を落とすために北国勢、水軍勢、先発隊、そして本隊に分かれて進軍し、北条領を攻め続けました。 守る北条軍5万に対して、攻める豊臣軍はなんと21〜22万もいたそうです! 恐ろしい数の大軍ですね。
40分間では全てを語り尽くせませんが、抑えておきたいポイントを重点的に説明。みなさん真剣にメモをとっていました。
わかりやすくまとめた配布資料。マニアにとっては、よだれが出るほど欲しい代物です!
小田原攻めは歴史の節目となる有名な戦のひとつですが、一方で、スケールが大きいゆえにわかりにくいのが正直なところ……。そんな方のために、泰経先生と城びと編集部が作成したのが写真の配布資料です! 豊臣軍が攻めた城をまとめた「小田原合戦城MAP」や「小田原合戦年表」は、一目瞭然でわかりやすい。資料提供には、小田原市も協力してくださったそうですよ。
どうしたら北条は勝てたのか?妄想は楽しい!
ディスカッション中の様子。お菓子のもぐもぐタイムも挟みつつ!
後半戦はグループディスカッションです!数人ずつのチームに分かれて、「どうしたら北条氏が勝てたのか」を話し合いました。すぐに書き込むチームもあれば、盛り上がりすぎて時間が足りないとギリギリまで頭を抱えるチームも。初対面とは思えぬほど、みなさん打ち解けていただけて良かったです。
中央に見える山が丹沢山、その奥が小田原の町。ぐるっと山に囲まれているのがわかります。
ちなみに、例題としていなもとの妄想はこちら。
「トンネルを掘る技術をこっそり習得する」
北条氏は、土の城を築く技術に長けています! 小田原の街は山々に囲まれているので、トンネルを掘り進み、小田原城を囲む豊臣軍の背面からも攻撃ができていたら、結果は変わっていたかも……?と、妄想。そのためには、初代の頃からトンネル掘りの技術を訓練する必要がある! と、熱弁してみましたが、見事にスベりました。
優秀賞に選ばれたチーム! おめでとうございます。
発表では「戦国武士らしい作戦だった」と泰経先生より講評頂いたチームが、優秀賞に輝きました!
<優秀賞に選ばれたチームの発表>
…小田原城包囲させないぞ作戦! 山中城でゲリラ戦を行い豊臣軍本隊の小田原入りを阻止。伊達軍と徳川軍のニセ部隊を送り込み北条軍の有利を演出。
ほかのグループからは、このような意見がありました!
例えば、北条の軍勢と風魔小太郎率いる忍びの力を借りて、秀吉の本陣に攻め入り一発逆転する「力攻め作戦」や、関東へ移封する徳川家康に領土内の情報提供をする代わりに、助命嘆願をしてもらい、家康に匿ってもらいながら再起を図る「戦国逃げ恥作戦」!
さらには、豊臣軍の北国勢力(前田、上杉、真田ら)を打ち破り、東北勢に北条の強さをアピール。「勝利」を得ることで、戦略に幅を広げ和睦を有利に進めようとする「北伐作戦」など!
「どれも面白い作戦ばかりで、自分では考えてもみなかった意見が聞けてよかった」と、泰経先生も楽しそうでした。
ご参加頂き、ありがとうございました
北条氏の家紋「三つ鱗」をイメージしたポーズで、ハイチーズ!
泰経先生が力強く語っていた「ボタンひとつの掛け違いで歴史は変わっていたかもしれない、それを想像できるのが歴史のロマンです!」 という言葉。たられば妄想は、歴史や城めぐりを何倍も楽しくさせる要素ですね。
終了後は「さまざまな人の考えが聞けて楽しかった」「歴史の『もしも』がたくさん話せてよかった」などの言葉を頂き、充実した時間を過ごして頂けたように思います。ご参加いただきました皆さん、ありがとうございました! また、城びとのイベントでお会いしましょう。
小田原に眠る英雄たち
北条氏政・氏照の墓所。小田原駅より徒歩5分の場所にある。
小田原が落城し、責任をとって北条氏政と氏照は自刃します。
命日となる7月11日(水)には、小田原駅近くのおしゃれ横丁にある北条氏政・氏照墓前にて墓前祭が執り行われました。毎年、北條遺跡顕彰会が主催するもので、読経に合わせてお線香が手向けられました。
数百年の時を超え、北条氏を愛する人がたくさんいることを、そして北条氏を愛することができることを、幸せに感じています。
いなもと かおり
お城マニア&観光ライター
29歳になる城マニア。國學院大學文学部史学科古代史専攻卒。19歳の時に、会津若松城に一目惚れしてから城の虜となる。訪城数は400ほど。国内旅行業務取扱管理者、日本城郭検定準1級、温泉ソムリエ、夜景鑑賞士2級の資格をもつ。メディア出演は、日本テレビ『ズームイン!!サタデー』、フジテレビ『おっかけのおっかけ』、BS日テレ『中川翔子のマニア☆まにある』など。
※歴史的事実や城郭情報などは、各市町村など、自治体や城郭が発信している情報(パンフレット、自治体のWEBサイト等)を参考にしています