【イベントレポート】お城がっこう 課外授業「理文先生と行く石垣山城ツアー」(神奈川)

2019年3月30日、「理文先生のお城がっこう」課外授業シリーズ第2弾、「理文先生と行く!石垣山城ツアー」が開催されました。講師は、日本城郭協会理事の加藤理文先生と、小田原城天守閣館長の諏訪間順先生。当日は、お城好きな小・中学生とその保護者の方、午前と午後の部あわせて、43名の方にご参加いただきました。満開の桜の時期に行われたツアーの様子をレポートいたします!

石垣山城
満開の桜を愛でながら石垣山城を目指します

今回の課外授業は、小田原攻めの際、豊臣秀吉がわずか80日で造ったといわれる石垣山城への登城でした。麓から登るコースに参加される方々は、JR小田原駅の一つ西隣のJR早川駅に次々と集まってきました。このイベントは保護者の方も自由参加でしたが、ほとんどの方が子どもたちと一緒に参加いただけたため、とても賑やかなツアーになりました。

はじめに、理文先生オリジナルのワークシートと資料が配られ、名前、学年、どこからきたか、子どもたちに一人ずつ簡単な自己紹介をしてもらいました。東京、愛知、岐阜などさまざまなエリアからお城・歴史好き親子が集結したようです。また見学の前に「お城の縄張り図に、自分が歩いた道順を必ず記入してね。説明板は必ず撮影しておくといいよ」と、お城見学のコツや注意点を理文先生が説明してくれました。

石垣山城ツアー
理文先生、諏訪間先生のご挨拶の後は、順番に子どもたちが自己紹介

「はいっ!最初はただひたすら坂道を登るだけですから!さあ、出発!」理文先生の元気な掛け声と共にいよいよツアーが始まりました。道は舗装されていますが、坂道がちょっぴりキツイ。道端に咲く満開の桜や菜の花に励まされながら黙々と歩き続けます。しばらく歩くと「ここから小田原城が見えますよ!」と理文先生からの言葉が。約430年前、豊臣秀吉もこの辺りから小田原城を眺めたのでしょうか? 石垣山城への到着に胸が高鳴ります。

石垣山城、解説
たびたび足を止め先生の解説が始まります

小田原城
街並みの向こうに小田原城がはっきりと見えます

登城、石垣山城
登城の途中、ところどころに武将の看板が。足を止めじっくりと読み込む子どもたち

歩き始めて約50分で石垣山城に到着。最初は南曲輪の石垣から見学です。「基本的に野面積みの石垣です。野面っていうのは自然石を積んだ石垣のこと。関東大震災で崩れましたが、それでも綺麗に石垣が残り当時の技術の高さが伺えますね」と理文先生。「関東大震災の前に見たかったなー」と残念がる子どもの声も。

石垣山城の説明板を前に、諏訪間先生の解説も始まりました。「石垣山城は天正18年に豊臣秀吉が小田原城を攻めるために築きました。一部分が石垣というお城は(ほかにも)あるけれど、ここは総石垣というのがすごいところ!たった80日でこれだけのお城を造ったんだよ」「えっ!80日?スゴイね!」先生の説明に子どもたちも興味津々です。

南曲輪、石垣山城
南曲輪の石垣を前に「普通敵に見える部分だけ石垣にしてもいいでしょう。でも見えない場所まで石垣造りにしたというのがこのお城のすごいところ」と力説する理文先生

総石垣
「石垣山城は関東における最初の総石垣の城、大変貴重なお城です」と諏訪間先生

その後、石垣が散乱した道を登り、南曲輪跡、西曲輪跡を目指します。ひょいひょいと石を超えながら身軽に歩く子どもたちの後を、大人が必死についていきます。「曲輪と曲輪の間を通るこの道は、両側から攻撃されたって事だよ」「ひゃ〜こわい!」歩きながらも理文先生との楽しい会話が続きます。

途中「此石可き左右加藤肥後守石場」と彫られた石についても説明がありました。わかりやすくいうと「この辺りの石は加藤家の石です」という所有権を示す目印のようなもの。看板もないので、個人で来ていたら間違いなく見落としてしまいそうです。こんな細かなことまで教えてもらえるのも、このツアーの嬉しいポイントの一つです。

南曲輪跡
足元に気をつけながら巨大な石の間をぬって南曲輪跡へと進みます

南曲輪跡
南曲輪跡。大手門と本城曲輪(本丸)を守るために造られたと考えられています

此石可き左右加藤肥後守石場
「此石可き左右加藤肥後守石場」と彫られた文字見えますか?ちなみに文字は天地逆になっています



一夜城伝説の看板を前に、再び先生方の解説が始まります。秀吉が一夜のうちに樹木を切りたおし、塀や櫓の骨組みに白い紙を貼り、壁のように見せかけ、敵が戦闘意欲を失うようにしむけた。そんな、一夜城伝説。実際には4万人が動員され、約80日間かけて徐々に築城したといわれています。「もし現代の大手ゼネコンがこれだけの規模の石垣の城を造るとなれば、数年かかるんじゃないかな」と諏訪間先生。重機もない時代に、手作業だけで一体どうやってたった80日で城を築いたのでしょうね?秀吉の権力と財力をひしひしと感じさせられるエピソードです。子どもたちも想像を膨らませているようです。

一夜城伝説看板前
一夜城伝説看板前。豊臣秀吉が水軍を含め15万もの群を率いて小田原城を取り囲んだことも説明

一夜城伝説について理解を深めた後は、見晴らしいのいい本城曲輪展望台へ。ここからは約2.6km先にある小田原城天守閣が眺められます。ここで秀吉が、北条氏が降参したら家康に関東八洲を与えることを約束し、二人並んで小田原城に向かって立小便をしたという「関東の連れしょんべん」の話も。

本城曲輪展望台
本城曲輪展望台。小田原城天守閣と相模湾が見渡せる眺めのいいスポット

続いて天守台跡と東西105m、南北95m、石垣山城のなかで最大の面積を持つ本城曲輪(本丸)に向かいます。天守台は、本城曲輪の南西隅から西曲輪へ張り出すように造られていたとか。石垣はほとんど崩れ落ちていますが、東西に長い長方形をしていたのではと、推測されています。「石垣の間には多くの瓦が見つかっていて、天守が瓦で葺かれていたことを物語っているんだよ」と、瓦を実際に持ちながら理文先生が教えてくれました。子どもたちも約430年前の瓦を手に取り、感慨深くみつめていました。

天守台跡
天守台跡。この中で「天正十九年」と書かれた瓦が発見されたという

天守台跡
天守台跡の瓦。「瓦葺きだったのは天守のみで、御殿は檜皮葺きでした」と理文先生

石垣山城
約430年前、この場所も無数の石垣で囲われていたのでしょうか

本丸(本城曲輪)から北門をコの字形に降りたところに馬屋曲輪(二の丸)が広がります。東西100m、南北80mくらいの広さで本城曲輪(本丸)とほぼ同じくらいの広さです。ここにもかつて巨大な御殿が立っていたのでしょうか?今は芝生が敷かれ綺麗に整備されています。

馬屋曲輪
馬屋曲輪(二の丸)の南西隅では大量の石垣が見られます。天正時代のもので10mを超える石垣は珍しいとか

安山岩で自然石を積み上げた野面積の石垣
安山岩で自然石を積み上げた野面積の石垣

馬屋曲輪(二の丸)の石垣を後に、今度は立派な井戸曲輪へと進みます。もともと沢のようになっていた地形を生かし、石垣の壁で囲むように造られています。「井戸曲輪の石垣は関東大震災にも耐えたんですよ。あの時代飲み水の確保は大変だったので、かなり丁寧に積まれていることがわかります」と理文先生。

通常井戸を見下ろし見学するのみですが、今回は諏訪間先生のはからいで、普段見ることができない湧き水を見ることができました。「わ〜、入ってもいいの?!」特別な場所に入れるとあって、子どもたちも興奮。「千利休もここの水でおいしいお茶をたてたのかな?」湧き水を見ながら楽しい妄想が止まりません。

石垣山城、井戸
探検気分で井戸の中を下っていきます(通常は立ち入り禁止です)

まだツアーは続きますが、馬屋曲輪(二の丸)に戻り、参加した子どもたち全員に、理文先生から修了証書が授与されます。「よく頑張ったね!」先生からのお褒めの言葉に、長時間歩いた疲れも吹き飛びます。どの子も嬉しそうに笑顔を見せてくれました。

修了証
「よく頑張りました!」理文先生からひとりひとりに修了証が渡されます

記念撮影、石垣山城
理文先生、諏訪間先生と記念撮影。みなさん石垣山城についてさらに知識を深め充実した笑顔!

ツアーの最後は石丁場を見学。石垣山城やその周辺には江戸時代初期に江戸城を築城するための石材を運び出そうとした石丁場があります。狭い階段を降りると、矢穴が並んだ割石がズラリと並んでいます。巨大な石は江戸城で石垣として利用されるため、船に乗せられ江戸まで運ばれたとか。江戸に運ばれずここにとどまる石たちは「残念石」ともよばれるとか。「私も江戸で石垣になりたかった…」石たちの残念な思いが聞こえてきそうですね。

矢穴
矢穴が入った石の前に立ち、分かりやすく説明をしてくれる理文先生

今回参加した子どもたちにツアーの感想を聞いてみました。
「どこから水が来るのか、井戸の仕組みが分かってよかった!」(小2男の子)
「石垣の積み方が自然の感じが出ていてよかった!」(小4男の子)

どのお子さんも細部までじっくり見学し、先生の話をきちんと理解していたようです。なかにはこんな大人顔負けのコメントも。「二の丸跡とか何もないところだけど、場所から滲み出るオーラのようなものを感じた」(小5男の子)。
空間が醸し出すエネルギーのようなものを感じとるとは、素敵な感性ですね。また、保護者の方からも「自分たちだけで来ていたら、ここまで詳しく石垣山城について知る事はできなかった。参加してよかった!」「次回はどこのお城のツアーをやるのでしょうか?楽しみにしています!」など嬉しいご意見を頂戴しました。

そして今回のツアーにスタッフとして参加して下さった城びとアンバサダーの小野さんからは「今回参加した子どもたちの中から、未来の城郭研究者が出でくるのかな?と、お城好きな子どもたちの将来が頼もしく感じました」との感想も。帰りは箱根登山鉄道の入生田駅まで約1時間のウォーキング。ツアーを通して仲良くなった子どもたち同士の会話を聞いてみると、関ヶ原の戦いや好きな戦国武将、今まで行って一番好きだったお城の話などなど。城郭研究者のタマゴたちは、最後まで歴史&城トークで盛り上がり帰路につきました。

城びとでは、今後も子ども向けの楽しく学びのあるツアーを企画していく予定ですので、お楽しみに!夏休みの自由研究にもぴったりな「城めぐりツアー」ぜひ親子でご参加くださいね。

執筆/城びと編集部(高橋保子)

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