合格者、小城小次郎が伝授!日本城郭検定1級への手引き「お城を感動で覚えよう!」

お城好き・歴史好きの方に人気のお城の検定「日本城郭検定」。「日本城郭検定の1級は難しい」という話を耳にしたことがあるという方もいらっしゃるかと思いますが、1級は準1級の合格者100人に5人しか合格できないくらい「難攻不落」レベルの難しさなんです。実は、城びとアンバサダーに「日本城郭検定1級」をトップで合格したという猛者が! どうしたら、超難関の試験を合格できるほどの知識を身に着けられるのか!? 今回は、日本城郭検定1級の小城小次郎さんに、お城の知識を蓄える勉強法やコツを教えていただきます。日本城郭検定の合格への近道は「お城への愛」だった!? 

日本城郭検定1級のトップ合格者、小城小次郎さんってどんな人?

小城小次郎
圧倒的な堀切に感動する小城小次郎さん

はじめまして!「城やり人」の小城小次郎(おぎこじろう)です。9歳で城に目覚めて以来、40年以上もの間、お城ファンを続けています。これまでに訪ねたお城はちょうど1000城ほどになりますが、お城とは本来学んだり、調べたり、考えたり、撮ったり、書いたり、語ったりと、いろんな立場からいろんな関わり方ができるものです。そんな考え方を一言で示したのが、私が運営するサイトの名にもなっている「城を、やる」。微力ながら「城びと」への寄稿を通じ、お城の素晴らしさをもっともっと多くの人に伝えられたらよいな、と思っています。

日本城郭検定ってどんな検定?

日本城郭検定1級、問題用紙、合格通知
日本城郭検定1級問題用紙と合格通知と合格認定証

日本城郭検定は日本城郭協会公認の検定試験で、これまでに延べ2万人以上が受験しています。「英語検定の城郭版」と考えればわかりやすいでしょうか。4級(シロッぷ*)級、3級(初級)、2級(中級)、準1級(武者返級)、1級(上級)の五段階に分かれており、4級~準1級は原則年2回(春・秋)、1級は原則年1回(春)の開催です。1級は準1級に合格していなければ受験することすらできません。1級の平均合格率は4.9%(日本城郭検定公式サイトによる)。準1級を有する「猛者」たちだけが受験しているのにこの合格率。1級の難易度の高さがお分かり頂けますでしょうか。

*日本城郭協会公式キャラクター

2点に泣いた初受験から合格への道のり

初めて日本城郭検定を受けたのは2014年(第4回)で、準1級からのスタートでしたが一発でクリア。2015年(第6回)に新設された1級試験に満を持して臨みましたが、この時は合格ラインに2点届かず、涙を飲みました。彦根(ひこね)城(滋賀県彦根市)の「崋頭窓(かとうまど)」を「唐破風(からはふ)」と脳内変換してしまうなど、通常の自分では考えられないような平凡なミスを重ねていたことがわかり、それはもう悔しくて。でも、不合格なのに順位だけは全受験者371人中20位。

彦根城、破風、窓
彦根城の破風と窓。初受験の際に正解できなかった思い出がよみがえる

上位じゃん!(笑)。なんなんだこの試験!(笑)。
合格率のあまりの低さにむしろやる気が出た私は、翌2016年(第8回)の再挑戦で合格しましたが、勢い余って「全国1位」のおまけまでついてきてしまいました。

合格後しばらくは、「どうやって1級に合格したの?」とか「どうやって勉強したの?」と聞かれることが多くなりましたが、正直に申し上げると私自身は1級に合格するために特別な勉強はしませんでした。
お城が大好きであること。それがまず、1級に合格するための大前提です。

日本城郭検定1級、合格通知、不合格通知
日本城郭検定1級合格通知(右)と不合格通知(左)

お城の知識は、感動と一緒に頭の引き出しに

1級レベルの知識は、覚えようと思って覚えられるものではありません。「感動」こそ、知識吸収の第一歩です。名城と呼ばれるお城には、思わず感動するような唯一無二の逸話が眠っているものです。

1級試験の問題は、もちろんマニアックな題材を拾い出してきますが、出題者自身が「面白い」と思ったからこそ問題に出されるわけですから、そうした逸話をひとつひとつ、感動しながら覚えていくことが大切です。ここでは「天守にまつわる手違い、勘違い」を題材に、感動的な話を拾ってみましょう。

今治城
今治城(愛媛県今治市)は、丹波亀山城に移築された天守をベースに再建された

まず「亀山城」の例をご紹介しましょう。江戸幕府が、ある大名に「『丹波』亀山城(京都府亀岡市)の天守を壊しに行け」と命じたところ、その大名は間違って「伊勢」亀山城(三重県亀山市)の天守を壊してしまった…という逸話があります。これ、いろんな意味ですごくないですか? 勘違いのスケールが大きすぎて、文字通り感動すら覚えた事例です。どちらの亀山城でも出題できそうな逸話ですね。

淀城天守台
淀城天守台には伏見城天守が建つ予定だった

次にご紹介する淀城(京都府京都市)の逸話も秀逸です。伏見城の天守を移す予定で天守台を作っていたにも関わらず、実際に運ばれてきたのが伏見城よりずっと小さな二条城(京都府京都市)の天守だったため、余剰スペースを埋めるために天守の周囲を四つの櫓で囲んだというのです。「伏見城天守を待っていたら二条城天守が届いた」なんて、個人配送の世界でもなかなかお目にかかれない手違いですね。こういうお話に「へー」とか「ほー」とか感動することが大事なのです。

本や現場でそんなとっておきの逸話を発見していくことは、お城好きならばきっと楽しいと思えるはず。あとは、そういう逸話をひとつひとつ、感動と一緒に頭の中の引き出しにしまい込むだけです。試しに設問例で検証してみましょう。

幕末期に異国船の襲来に備えて築城された和式の城は、蝦夷地の松前城の他に西日本にもあった。それはどれか。(第6回日本城郭検定(1級))

唐津城
石田(福江)城
平戸城
肥後南関城

答は②の石田(福江)城ですが、「石田城は幕末の城である」という事実を知らなくても、
「唐津(からつ)城(佐賀県唐津市)は肥前名護屋(ひぜんなごや)城(佐賀県唐津市)の廃材をもらって作ったお城だぞ」
「平戸(ひらど)城(長崎県平戸市)は肥前松浦氏の悲願で、江戸時代に特別に築城が認められたお城だぞ」
「肥後南関(ひごなんかん)城(熊本県玉名郡)は最近掘り出された加藤清正のお城だぞ」
と、他のお城にまつわる逸話を知っていれば、消去法でも回答できてしまいます。

唐津城天守
現在の唐津城天守。図屏風に描かれた名護屋城天守を模したもの

平戸城
平戸城は肥前松浦氏の積年の夢だった

肥後南関城
肥後南関城の石垣は近年掘り出された

4城の中では肥後南関城が最も知名度が低いと思います。私自身も数年前まで知らなかったお城でしたが、「石垣造りの近世城郭がまるごと山の中に埋まっていた」という事実を知った瞬間、見学のため実際に現地まで飛んで行きました(笑)。

お城の知識は、あらゆるものからどん欲に吸収する

日本城郭検定1級を目指すために、まずは全国のお城を網羅した「お城めぐり本」を読むことをおすすめします。なぜならお城めぐり本の著者は、読み手が「面白い」と思うであろうテーマを一所懸命取材して執筆しているわけですから。

お城めぐり本
まずは一読したい「お城めぐり本」

代表的な「お城めぐり本」
・萩原さちこ『続日本100名城めぐりの旅」(学研プラス)
・本岡勇一『こんな城もあったんだ~日本名城・奇城ガイド~」(TOブックス)
・西ヶ谷恭弘『日本の城 ポケット図鑑」(主婦の友社)

また、新たな発見や発掘、復元建築の完成、国宝・史跡の新規指定といった最新ニュースにも注目です。SNSも貴重な情報収集ツールで、特にtwitterはお城めぐりの「猛者」と呼ばれる方々が頻繁に写真付きの訪城記録を掲載してくれていますので、情報収集には最適です(ただしSNSは善意の投稿者で成り立つソーシャルメディアですから、できるだけ双方向のコミュニケーションとなるよう心掛けることも大事だと思います)。

お城の総合解説本
暗記対策におすすめの「お城の総合解説本」

なお、1級には城郭建築のパーツ(破風など)の名称等、どうしても丸暗記するしかないテーマも出題されます。そうしたものには以下のような「お城の総合解説本」が役立ちます。こちらはどちらかというと一夜漬けの直前対策みたいになりますが。

代表的な「お城の総合解説本」
・中井均『カラー版徹底図解 日本の城」(新星出版社)
・三浦正幸『より深く より楽しく お城のすべて」(学研パブリッシング)

1級レベルに求められるのは、そのお城にしかない感動的な逸話をどれだけ知っているか、です。知的好奇心を最大限に発揮して、本やネット、ニュース等あらゆる手段を駆使して新たな発見や感動を繰り返し、どん欲に知識を吸収しましょう。

日本城郭検定1級の先にあるもの

昔から「お城に詳しい人」と噂されていた私にも苦い経験があります。大学のサークル旅行で会津若松(あいづわかまつ)城(福島県会津若松市)を見学した際、「はい、解説して!」と言われて立往生した経験などは、その典型です。この文章を読んでいるお城好きのみなさんでも、「会津若松城はすごいんだよ。とにかくすごい。」みたいな感情の空回りや「武者走(むしゃばしり)と雁木(がんぎ)が完備していて、このエリアは完璧なキルゾーンだな」など、呪文にしか聞こえないような専門用語の羅列でドン引きされたりした記憶、ありませんか?(笑)

小城小次郎
お城を解説する小城さん

1級レベルに達すると、日本100名城や続日本100名城などに名を連ねる、代表的なお城のほとんどを一言で語れるスキルが知らず知らずのうちに身についています。会津若松城なら、「関ヶ原の戦いがもう少し長引いていたら、会津若松城そのものがなくなっていたかもしれない」と切り出し、上杉景勝(うえすぎかげかつ)と直江兼続(なおえかねつぐ)が最新鋭の巨大城郭、神指(こうざし)城(福島県会津若松市)を築いている途中で関ヶ原の戦いが終結してしまい、結果的に会津若松城が存続。200年以上も前に直江兼続が懸念した通り、戊辰戦争の際には近隣の山から大砲で狙われて会津若松城は落城した…というようなストーリーはいかがでしょうか。「すごい」を連発するより、はるかに説得力があると思いませんか?

1級に合格したことは、私がお城と向き合っていく上でも大きな自信になりましたし、わかりやすく自身のスキルを示すことができるせいか、お城友達も確実に増えました。1級への挑戦は決して簡単ではありませんが、お城が好きで、もっともっとお城のことを知りたいという気持ちがある方であれば、ぜひ挑戦してみてください。1級合格のその先に、新しいお城とのかかわり方が見えてくるはずです。


日本城郭検定
開催時期:毎年春と秋の2回(1級は春のみの開催)。1級は準1級合格者のみ
料金:第14回 日本城郭検定(2019年6月9日(日))実施分の場合
4級(入門・シロッぷ級) 3900円 (3,600円)
3級(初級) 4600円 (3600)円
2級(中級) 5900円 (3600)円
準1級(武者返級) 6700円 (3600円)
※カッコ内は中学生以下
※併願料金の設定もあり

執筆・写真/ 小城小次郎(おぎこじろう) (城びとアンバサダー/城やり人)
東京在住、静岡県出身。静岡古城研究会会員。日本城郭検定1級(2016年/全国1位)。9歳で城を始め、あらゆる角度から長いこと城をやってきた「城やり人」。

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