【イベントレポート】お城EXPO 2018:3日目 最終日も充実のラインナップ!

2018年12月22日(土)から24日(月・祝)の3連休、神奈川県のパシフィコ横浜で開催された「お城EXPO 2018」。貴重な史料の展示、城に携わる人たちによるセミナーやワークショップ、武将隊やご当地キャラクターによるパフォーマンスなど盛りだくさんの3日間、その最終日の模様をお届けします!



お城EXPO2018、パシフィコ横浜
 最終日は有終の美を飾るにふさわしい晴天。来城者も心なしか前日までよりも軽い足取りで会場へ向かっていた

まだまだ楽しみたい! 最終日もお城ファンの熱気は冷めない

楽しいお城EXPOもいよいよ最終日。1日目、2日目と降り続いた雨もやみ、イベントの締めくくりにふさわしい天気となった。開城前からセミナーやワークショップ・グッズなど各自お目当てのものに向けて多くの人が行列を作り、10時の開城と同時にエスカレーターへとダッシュしていく。3日目でも会場内の熱気は衰えていない様子で、お城ファンたちの並々ならぬ情熱が垣間見える。

3日目に注目を浴びたのは、各地の城で演舞やトークなどのパフォーマンスを行う「おもてなし武将隊」。イケメン男性によって構成されることが多いため、歴史好きの女性を中心にブームとなっている。

そんなおもてなし武将隊の中から、特に高い人気を誇る名古屋城の「名古屋おもてなし武将隊」と岡崎城の「グレート家康公『葵』武将隊」が「お城EXPO」に登場。5Fエンタメステージでパフォーマンスを披露してくれた。

午前のステージに登場したのが「名古屋おもてなし武将隊」。名古屋ゆかりの武将6名と陣笠隊4名で構成されている。今回はその中から織田信長、豊臣秀吉、前田慶次の武将3名と陣笠隊から太助、なつの2名が参戦した。

ステージは、武将たちの演舞や名古屋の見どころPRが行われ、名古屋城本丸御殿や金シャチ横町といった王道スポットはもちろん、桶狭間の戦いにおける織田信長の進軍路とされる信長攻路や東山動物園など城以外の名所も紹介された。

名古屋おもてなし武将隊
 「名古屋おもてなし武将隊」のステージには、若い女性を中心に多くの人が詰めかけた。100人以上が座れる観客席はあっという間に満席となり、立ち見が出るほどの盛況ぶりだった

お城EXPO2018、名古屋おもてなし武将隊
 トークでは、名古屋に行ったことがないという観客を粛正しようと信長が抜刀する場面も。あわや「お城EXPO」中止か、というところで秀吉が止めに入って事なきを得た

午後一番のステージでは、岡崎城で活動するグレート家康公「葵」武将隊によるグレートなパフォーマンスが行われた。ステージ構成はダンスライブとトーク。「WELCOME TO 開運ロード」など、岡崎城でも披露されている人気曲が披露された他、トークでは武将たちがオススメする岡崎の開運スポットも紹介された。最後は観客も一緒に踊れるダンスナンバー(?)「堪忍をどり」で締めくくられ、会場にいる全員が一体となって盛り上がった。

堪忍をどり
 振り付けが簡単で座っていても踊れる「堪忍をどり」。「会場のみんなで一緒に踊りましょう!」という武将の声に、はじめは戸惑った様子をみせた観客も、曲がかかると楽しそうに踊っていた

エンタメステージでイケメンたちに元気をもらったところで、次はお腹を満たしに行こう。「お城EXPO」は、ここでしか食べられないオリジナルメニューやコラボメニューも豊富なのだ。

限定メニューは、「お城EXPO」のロゴ入りどら焼きや崎陽軒のオリジナル炒飯弁当、数量限定の武将御膳など甘い物からしっかりとした食事まで用意されている。数量限定のチョコ兜ケーキは今回も人気で購入後じっくり写真を撮る人も多く、今流行のインスタ映えにもなりそう。年に一度しか食べられないコラボメニューも参加者の楽しみの一つになっているのだろう。

チョコ兜ケーキ、伊達政宗、甲冑
 チョコ兜ケーキは伊達政宗の甲冑をモチーフにしており、限定40食の提供のため朝一番に食べに走る人も。濃厚なチョコの甘さが、歩きまわった後のちょっと疲れた身体にぴったり

武将御膳
  武将が好んだと言われる味噌を旬の魚とともに味わう武将御膳。魚と肉を一緒になっており武将気分を味わいながらお腹も満たされた

子どもたちも大活躍の「ワークショップ・セミナー」

家族連れでの参加者も多い「お城EXPO」。満員御礼が続出だったワークショップ・セミナーでは、大人顔負けの意欲と知識で取り組む小さなお城ファンたちの姿も印象的だった。

ワークショップ、お城EXPO2018、犬山城天守
 まずは基本となるアタリをとってから細部を描き込んでいく。用意された犬山城天守のアタリを元に、丁寧に線を引いてお城の形を再現

イラストレーターの香川元太郎さんによる「お城の絵を描こう!」は、土塁や堀の表現が肝となる戦国の城、建物を格好よく仕上げたい近世の城、それぞれの描き方を伝授してもらえるワークショップ。今回は諏訪原城、犬山城天守を例として作画のコツを教わり、どちらか好きなほうを選んでイラストにチャレンジした。

参加した小学生の兄弟は、「思ったより難しくて時間がかかったけど、上手く描けてよかった!」「家でも描いてみたい」と大満足だった様子。子どもたちが一心に土塁のケバを描き込む光景は、「お城EXPO」ならではと言えるだろう。

香川元太郎
 香川さんは一人ひとりの元を回り、「丁寧に見て描けていますね」「ここは薄めの線で描いたほうが、雰囲気が出ますよ」などと声をかけアドバイスしていた

歴史研究家の小和田泰経先生とお城マニア&観光ライターのいなもとかおりさんによる「関ヶ原の戦いトーク&ディスカッション by 城びと」では、「関ヶ原に行ったことある人?」の質問に、次々に手が上がるのがさすがといったところ。

関ヶ原の戦いのポイントがレクチャーされた後、「どうすれば関ヶ原で西軍が勝利できたのか?」をテーマに、少人数に分かれてのディスカッションが行われた。

小和田泰経、いなもとかおり
 小和田先生といなもとさんの軽妙なトークで関ヶ原の合戦のポイントを解説。各武将の陣跡を実際に訪れた際の写真も紹介された

わいわいと話し合ったあとは、各グループの結論の中から小和田先生が選んだ案を発表。ユーモア溢れる回答が笑いを誘う中、小学4年生の名軍師による本気の戦略が1位に選ばれた。持久戦となった際の東軍の弱みまで計算した意見には会場中からどよめきが。

実はこの小学生はお城の自由研究の受賞者とのことで、冷静な分析力にも納得だ。名軍師の他にも、このワークショップには子どもがたくさん参加しており、家族で参加していた小学生の男の子は「合戦が好き。知識が増えて楽しかった」と語ってくれた。

お城EXPO2018、ワークショップ
 親子での参加者から年期の入ったお城マニアの皆さんまで、それぞれ顔を輝かせて話し合っていたのが印象的。賑やかなディスカッションタイムとなった

お城EXPO2018、ワークショップ
 中には「忍者を使う」「福島正則にフナ寿司を投げる」といったおもしろ回答も

お城EXPO2018、ワークショップ
 他にもこの日は「はじめてのお城歩き」「浜松城 豊臣と徳川の大改修」などのセミナーが開催。浜松城では2018年に発掘調査が行われており、浜松市文化財課の鈴木一有さんから、石塁や多くの瓦が発見された際の様子が写真とともに報告されると、参加者は興味深く聞き入っていた

美麗な写真たちが鎬を削る「お城EXPOフォトコンテスト」

お城EXPOフォトコンテスト
 1Fにはお城ファンたちが撮影した力作が並ぶ。夕焼けや紅葉に染まる天守を切り取ったフォトジェニックな作品から、迫力満点の石垣や堀を映した写真まで題材は様々だ

第1回、2回と多数の応募があった人気プログラム「お城EXPOフォトコンテスト」は、今年も開催。1Fの展示コーナーには、お城ファンによる美麗な写真が多数並んだ。

「お城EXPO」もそろそろ終盤にさしかかる15時、3Fのステージにはお城フォトグラファーたちが集まってきた。コンテスト入賞者の表彰式が行われるのだ。フォトコンテストは、入賞が10名、アサヒカメラ賞1名、審査員特別賞と優秀賞が2名、そして最優秀賞が1名。

入賞から順に受賞作品の発表と表彰が行われていく。最優秀賞に選ばれたのは、朝焼けに染まる岡山城天守を切り取った「暁天の烏城」。撮影者の北嶋彰夫さんが壇上に上がり、日本城郭協会の島﨑征郎常務理事から賞状と副賞を受け取ると、観客からは大きな拍手がわき上がった。

お城EXPOフォトコンテスト、授賞式
 表彰式の様子。受賞者へはEXPO前に賞を取ったことは伝えられるが、どの賞に選ばれたかまでは当日まで発表されないため、受賞作発表では観客のみならず受賞者も緊張の面持ちだった

表彰が終わると、審査員を務めた城郭写真家・畠中和久さんと五島健司さんから、応募作品の講評があった。畠中さんによると今年の作品はどれもレベルが高く、受賞作を選ぶのが大変だったという。しかし、意外にも最優秀賞はすんなりと決まったそうだ。

「朝焼けの赤色がハッとするほど美しく、畠中さんも僕もひと目でこの作品が最優秀だと確信しました」と、五島さんが「暁天の烏城」を見たときの事を語り、最後に畠中さんが「今回入賞した人もそうではない人も、また来年奮って参加してほしいです」と来年への期待を述べて、表彰式を締めくくった。

表彰式後、最優秀賞を受賞した北嶋さんに今年のコンテストについて感想をうかがうと「今年はなかなか納得がいく写真が撮れず苦しんでいました。受賞作の『暁天の烏城』も一時は投稿するか悩んだのですが、思い切って応募してよかったです」と、まだ受賞の興奮が冷めやらぬ表情で答えてくれた。

北嶋彰夫、暁天の烏城
 最優秀賞を受賞した北嶋彰夫さんと受賞作「暁天の烏城」。燃えるような朝焼けと、漆黒の天守の対比が美しい1枚だ

あっという間の3日間。盛況の内に「お城EXPO」閉城!!

そろそろ「お城EXPO」も閉城の時間が迫ってきた。3日間のお土産を探すべく物販コーナーへ行ってみよう。公式グッズは、3Fの観光情報ゾーン奥で販売。2018年仕様のピンバッジやオリジナル御城印帳が人気で早々に完売していた。この「お城EXPO」のみで手に入るという希少性もあり、記念に買う人が多かったのではないだろうか。

お城EXPOお城2018、物販ブース
 1F物販ブースは書籍やお城グッズを求める人で賑わった。甲冑やくのいち姿で買い物を楽しむ人も

お城EXPOお城2018、 公式グッズ
 公式グッズは3Fの公式物販コーナーで販売。サコッシュやネクタイなどファッションアイテムもあり、3日間とも多くのグッズが完売していた。館内ではお城トートバッグをさげている人もおり、日常でもお城に関するものを身につけられることがお城好きにとっては嬉しいようだ。

1Fでは、お城書籍やジオラマ、武将グッズを販売する会社がブースを出展。KADOKAWAのマンガ『東京城址女子高生』は、3日目の早い時間に完売。学研ブースでは、今年も100名城・続100名城のガイドブックを販売しており、来城者から「これを持ってお城をめぐっているよ」という声も聞こえてきた。

歴史やお城の書籍を販売する戎光祥出版のブースの担当者さんに話しを聞いてみたところ、手頃な価格の『図説 日本の城郭シリーズ』が人気で、中でも地元ということもあり『神奈川中世城郭図鑑』を購入する人が多いとのことだった。

公式書籍コーナーには、「厳選プログラム」に登壇した先生方の著書が並ぶ。閉城間際には、歴史小説作家の伊東潤先生が登場し即席サイン会が行われるなど賑わいを見せていた。

お城EXPOお城2018、公式書籍コーナー
 公式書籍コーナー。最終日となるこの日は、お土産を探す人によって黒山の人だかりができた

ORiGAMi SAMURAI、お城EXPO2018
 鎧兜をモチーフにした「ORiGAMi SAMURAI」は、光沢のあるデザインが美しい。まだ限られた店舗でしか販売がないこともあり、足を止める人が多くいた

 寛永通宝、お城EXPO2018
 寛永通宝を入れて回すことができるというユニークなガチャガチャ。もちろん、誰も寛永通宝を持っていないため、1枚200円で日本円と両替ができる。しかし、ブースの人によると、一人だけ寛永通宝を持参してきた猛者がいたらしい

楽しみが満載の3日間もあっという間に過ぎ、ついに今年も閉城の時間に。第3回目の今回、来城者数はのべ約2万人の大盛況となった。

記念のお土産を買い求める人、わいわいと感想を話しながら出口に向かう人…いずれも充実した顔が満足感を物語っている。

「娘が受験なので、歴史の勉強になるかと思って一緒に参加しました」(40代・男性)「VRが本物みたいで楽しかった」(10代・女性)という初参加の父娘から、「毎年参加しています。自由研究が見応えがあって、すごかった!」(20代・女性)「厳選プログラムを全部見ました。知識だけじゃなく、新しい考え方にも出会えるのが魅力」(30代・男性)という熱心なお城ファンまで、それぞれに満喫した様子が伝わってきた。

中には、「昨日初めてお城EXPOのことを知って、急遽来城しました!」という男女お二人も。現存天守をよく訪れているそうで、「続日本100名城のことは初めて知りました」と嬉しそうだった。今後のお城めぐりがさらに充実したものになりそうだ。

「お城 EXPO」の魅力は、イベント期間中だけでなく、イベントで得た出会いや発見、交流をその後の城めぐりに活かせることにある。今回の発見を生かして、今年もよいお城ライフを!

お城EXPO2018、退城
 退城する参加者をお見送りしてくれたお城EXPO 城番衆 武者所のみなさん。ヴァイオリンによる「蛍の光」の生演奏も

最後に

城びとブースにも沢山の方に来ていただきました! 当日は、城びと会員の皆様にオリジナルグローブをプレゼント! よかったら、ぜひ山城めぐりに、お掃除に使ってくださいね★ 皆さまありがとうございました。


執筆・写真/かみゆ歴史編集部(小関裕香子・町田裕香・山岸夏紀)
「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。手がける主なジャンルは日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなど歴史全般。最近の編集制作物に『天皇〈125代〉の歴史』『マンガ面白いほどよくわかる!新選組』(西東社)、『さかのぼり現代史』『日本の信仰がわかる神社と神々』(朝日新聞出版)、『ニュースがわかる 図解東アジアの歴史』(SBビジュアル新書)、『ゼロからわかるケルト神話とアーサー王伝説』(イースト・プレス)など。

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