2019/01/15
【イベントレポート】お城EXPO 2018:1日目 お城の祭典は今年も熱かった!
2018年12月22日(土)から24日(月・祝)の3連休、パシフィコ横浜 会議センターにお城好きの皆さんが詰めかけた「お城EXPO 2018」。冬の寒さを吹き飛ばす、熱狂の1年に一度のお城の祭典を、今年もレポートします。
3回目を迎えたお城EXPO。今年はどんなコンテンツが登場するのか!?
会場外には行列が。1時間以上前から並ぶ人も
今年も「お城EXPO」がはじまった。2016年から毎年この時期にパシフィコ横浜会議センターで開催されている、お城好きの祭典だ。
2018年は12月22日(土)から24日(月・祝)までの3日間。初日となる22日には、10時の開城を首を長くして待つ400人以上もの行列ができていた。一番先頭に並んでいた11歳の男の子と付き添いのお祖母ちゃんに声をかけると、なんと1時間以上も前から並んでいたとのこと! その気合いの入りように、大勢の人が今日という日を待ちわびていたことがうかがえる。
開城を待つ行列のそばでは武者所による寸劇が繰り広げられ、来城者はみな写真を撮っていた
「お城EXPO」の会場外には、バルーンで再建された古河城も
10時になると、お城EXPOの公式城番衆を務める「武者所」が、威勢の良い挨拶で開城を告げた。来城者は迷うことなくお目当てのブースへと向かっていく。さすがは朝早くから並んでいた来城者の皆さん、すでに1日のタイムスケジュールを決めていたのかもしれない。今年は過去最大となる80もの団体が出展し、中には時間が決まっているワークショップや厳選プログラムもある。見たいイベントをすべてめぐるためには、入口でのんびりしている暇はないのだ。
「お城EXPO」の開城を告げた武者所。入口では彼らと写真を撮ることもでき、撮影時の「しーろっ」というかけ声が響く
それにしても、自分が見たいイベントをあらかじめ決めて、スケジュールを詰め込んだり、時には時間が被っていて泣く泣くどちらかを諦めたり……という様子は、まるで音楽フェスのよう。皆さん急ぎ足ながら、その表情は何とも言えない高揚感に満ちていた。
過去最多の団体が参加した、何時間でもいられる「城めぐり観光情報ゾーン」
会場の中でも大きな面積を占めていたのが、3Fの「城めぐり観光情報ゾーン」。全国の地方自治体や企業がお城に関するさまざまな情報を発信するエリアで、今年は過去最多となる団体が参加した。
ブースが立ち並ぶ「城めぐり観光情報ゾーン」。どのブースも盛況で、まっすぐ歩けないほど
会場は、来城者に向けて各自治体が自分たちの城の魅力をPRするかけ声でとてもにぎやか。戦国武将隊やご当地キャラクターが通るとすぐに人が集まり、そこかしこで撮影大会がおこなわれていた。
そのブースの中でも、特に目立っていたのはVR体験ができるゾーン。凸版印刷株式会社や二戸市の九戸城など、VRを使って当時の城を知ることができ、その興味深い映像に人だかりが絶えなかった。
九戸城のVR体験は、現況とVR復元された当時の城を見比べることができた。VRで復元された城は「櫓や土塁の高さが体験できる」と好評
弘前市の弘前城では、珍しい「イカ型」隅石模型を展示。その他にも、城写真のパネル展示や甲冑の試着体験など、各自治体が趣向を凝らした展示は時間がいくらあっても足りないほど。自治体が配布する資料をたくさん抱えた50代の男性は「情報がありすぎて、次はどの城に行こうか迷ってしまいますね」と笑っていた。
「イカ型」の珍しい弘前城の隅石(模型)。大勢の人が興味深そうに見学していた
美濃金山城では、グッズを買うとオリジナルグッズの「日本山城100名城カード」がついてきた。会場限定で100枚すべて揃うスペシャルパックもあった
当日は限定で「ご城印」も配布。すぐに予定数が完売する人気アイテムだった
明石城のブースでは、グッズを購入してくれた人に1/100スケールのペーパークラフトを配布。ここまで作り上げるには7〜8時間もかかるそう
日本だけでなく、ウエールズ政府のブースやヨーロッパの名城のパネル展示も
「城めぐり観光情報ゾーン」の外にはステージも設置。ご当地キャラクターや歴ドル、おもてなし武将隊などが華やかなステージを繰り広げた。ヒント満載のクイズ大会など和気あいあいとした雰囲気に、通りがかった人たちが思わず足を止めていた。
稲沢市のキャラクター「いなッピー」によるステージ。大人も子どもも楽しめるジェスチャーゲームが開かれた
「関ヶ原女性武将隊 巴組」は、トークとプレゼントが当たるクイズ大会、ミニライブと盛りだくさんの内容でファンを盛り上げた
お城ジオラマや名城パネル展も、去年からさらにパワーアップ!
また、一昨年の初開催から高い人気を誇るのが「お城ジオラマ・お城模型展」だ。今回は、木製模型メーカー・株式会社ウッディ ジョーが制作した、同じ縮尺で作られた天守の模型を並べた「スケールを感じる」、二宮博志さん、結城七郎某さんによる中世の様々な城のジオラマ「興亡を感じる」、毎年好評な岐部博さんのジオラマに加えて香川元太郎さんのイラストを楽しめる「息吹を感じる」の3つのテーマで展示。来城者はその精巧さにため息を漏らしながら、夢中でシャッターを切っていた。
「スケールを感じる」コーナー。細部まで作りこまれた江戸城、大阪城、名古屋城などの大きさを一目で比較できた
「興亡を感じる」コーナーの増山城のジオラマ。城下町や道も記されているので、敵はどう攻めてきたのだろうか……と想像が膨らむ
「息吹を感じる」コーナー。美麗な鳥瞰図とリアルなジオラマとを見比べることで、より城を深く理解できる
5Fの一段と広い会場では、昨年に引き続き「日本100名城・続日本100名城パネル展」を開催。ずらりと並んだ200城のパネルは、いつ見ても圧巻。来城者は思い思いにずらりと並んだ城を眺め、「この間行ってきた城だ!」「この城って続100名城なんだ」とパネルを指さしながら会話が弾んでいるようだった。
合計200の城のパネルがずらり。訪れたことのある城の前で話し込む人達も見られた
昇太師匠と萩原さちこさんが乱入!『センゴク』トークショー
様々な展示がある中で目玉の一つとなっているのが、人気マンガ『センゴク』の著者・宮下英樹先生による15点の原画展「センゴク“大”原画展」だ。
もともとリアルな合戦や城の描写で知られる『センゴク』だが、大判のキャンバスに大胆な構図で描かれた原画に、来城者は「キャンバス画だけどマンガみたいな描き方をしているからか、圧倒された」(20代)と語るなど、その迫力に魅せられていた。
仙石権兵衛が山城攻めをするシーンを描いた1枚で、宮下先生にとって初めてのキャンバス画。戦いの熱気や怒号が伝わってくる
展示場内には『センゴク』全巻が用意されており、時間を忘れて読みふける人もいた
また、講談社と岐阜県可児市がコラボし、『センゴク』のスタンプラリーを実施。会場内の5か所でスタンプを集めて指定のブースでグッズを購入すると、抽選で「特製センゴク色紙」がプレゼントされる。このコラボの影響か、なんとこの日は午前中でグッズが売り切れてしまったという。
完成したスタンプラリーと抽選で当たった色紙。スタンプを版画のように色を重ねていくことで、美濃金山城が浮かび上がった
この日の14:30からは、宮下先生のトークショーも開催。「あの感動をもう一度、センゴク山城名場面」と題し、『センゴク』シリーズに登場する山城の中で読者アンケートにより人気の高かった山城の名場面を、ヤングマガジン編集部で『センゴク』の編集を担当している細谷祐介さんとともに振り返った。
かつては城=天守だと思っていたという宮下先生も、今や立派な城マニア。「(いくつもの砦が築かれた)賤ヶ岳はお城の見せ合い、まさにお城EXPOのようなんですよ」などと熱く語った
作品の誕生秘話や取材の仕方、マンガを描くときに意識していることなど貴重な話の数々に盛り上がる会場。すると、突如春風亭昇太師匠と萩原さちこさんが登場! 思わぬサプライズに、会場からは驚きの声が。
ここからは二人を交えて、会場の熱気はヒートアップ。人気投票で1位だった安土城について、宮下先生が「(天主が城の主体でなく)天主が城の一部でしかないのがかっこいい」と語ると、昇太師匠は「安土城の構造は寺院の城郭化と関係あるのでは」と持論を展開。萩原さんは『センゴク』内で描かれた安土城を見て、「石垣の勾配がまさに安土城! という感じですばらしい」と絶賛していた。
途中から春風亭昇太師匠と萩原さちこさんも加わり、会場は大盛り上がり。「実はボクがマンガ内に出てくるんですよ、これは嬉しかった!」と昇太師匠
「ワークショップ・セミナー」も大盛況
他のセミナーやトークショー、ワークショップも大盛況。どの講演もほぼ満員で、参加者は深く頷いたり、熱心にメモを取ったりしながら登壇者の話に耳を傾けていた。
小学2年生から中学3年生まで、城の自由研究コンテストで連続入賞した吉田実華さん。「資料をまとめるならクリアファイル、情報は新聞形式にしてまとめるのもおすすめ」と、具体的なアドバイスを話した
吉田さんの過去の自由研究も手に取ってみることができた。そのクオリティには、加藤理文先生も感心しきり
この日は「小・中学生城の自由研究コンテスト」で8年連続入賞した、岐阜県立岐阜高等学校の吉田実華さんが自由研究のポイントを解説した「信長の城研究について」や、WEBサイト「城びと」で連載中の「理文先生のお城がっこう」の特別版、「こども向け・初心者向けのお城めぐり講座 by 城びと お城がっこう」など、子どもが楽しめるセミナーも充実。「こども向け・初心者向けのお城めぐり講座 by 城びと お城がっこう」では、「城あるきの靴はインソールで大きさを調節し、足に合ったものを履こう」「小学5〜6年生が無理なく歩ける山城は比高100mほど」など、基本を押さえながら実戦的な内容で、すぐにでも城に行けそうな情報が満載だった。
「あじろ編みで小物入れをつくろう!」で、小物入れ作りに初挑戦する子
加藤先生の「こども向け・初心者向けのお城めぐり講座 by 城びと お城がっこう」は親子での参加が目立った
一風変わっていたのは、ラジオDJ・タレントのクリス・グレンさんと城マニアのアンドリュー・オートリーさんによる「外国人からみた日本のお城の魅力」。クリスさんの軽快なトークとともに語られるお城の魅力は、外国人ならではの視点がたくさん。「僕たちのハンデは言語。ストーリーがあって一つとして同じものがないお城の魅力を外国人に知ってもらうために、英語での発信を頑張ってほしい」と、インバウンドを意識した発言に、聴講者はあらためて多言語での案内の必要性を感じたようだった。
「外国人からみた日本のお城の魅力」。愛知県在住のクリスさんは、一番好きな城に名古屋城を挙げ、その魅力を熱く語った
観光情報ゾーンに厳選プログラム、セミナーと慌ただしくブースをまわっているうちに、あっという間に1日目が終了した。とても1日でまわりきれないボリュームに、2日目以降も来る人は多い様子。城好きの祭典は、まだはじまったばかりだ。
執筆・写真/かみゆ歴史編集部
「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。手がける主なジャンルは日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなど歴史全般。主な城関連の編集制作物に『日本の山城100名城』『超入門「山城」の見方・歩き方』(ともに洋泉社)、『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』『完全詳解 山城ガイド』(ともに学研プラス)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、『カラー図解 城の攻め方・つくり方』(宝島社)、「廃城をゆく」シリーズ(イカロス出版)など。