2019/01/08
2019年オススメの城【復元・整備編】現代によみがえった遺構の威厳を体感せよ!
2019年がスタートしました。今年のお城めぐりの計画を立てている人もいらっしゃるのではないでしょうか。でも、お城に行きたいけど、どこに行こうか迷っているという人のために、2019年に訪れてほしい注目のお城を紹介! 今回は、熊本城の大天守公開や水戸城の大手門復元など、2019年に復元や復旧が完了する城を取り上げていきます。
【熊本城】地震被害からの復興が進む大天守を特別公開!
復旧工事中の熊本城天守。瓦が葺き直されたため、復旧前と比べて屋根が白く見える(熊本城総合事務所提供)
2016年4月に発生した熊本地震によって、重要文化財である櫓の倒壊、多数の石垣の崩落など甚大な被害に見舞われた熊本城。その復興の第一歩として、城のシンボルである大天守の特別公開がはじまります!
西南戦争で焼失し、1960年に外観復元された大天守は、地震で屋根瓦や石垣が崩落するという被害を受け、復旧工事のため周辺への立ち入りが禁止されていました。その天守の外観修復工事が2019年秋に完了。10月5日(土)から日曜・祝日限定ですが、天守閣前広場から天守の観覧が可能となります。
天守以外の建造物でも、重要文化財である長塀の復旧工事がはじまるなど、着実に復興へと歩みをすすめる熊本城へ1度訪れてみてください。
【鳥取城】擬宝珠橋が完成! 復元が進む大手登城路
完成直前の擬宝珠橋。発掘調査で見つかった往事の橋脚を保護するため、橋脚上にステンレスの梁を設け、その上に木造の橋を復元している
戦国時代に羽柴秀吉による過酷な兵糧攻めを受けた鳥取城(鳥取県)は、江戸時代に入ると鳥取藩32万石の居城として、近世城郭に改修されました。現在は建物こそ残っていませんが、全国唯一の遺構である巻石垣(復元)など貴重な石垣遺構が見られる城としてお城ファンの人気を集めています。
そんな鳥取城では、2016年から大手登城路を幕末期の姿に蘇らせるべく復元整備工事が進められており、2018年9月に大手橋である擬宝珠橋が完成。10月から一般公開がはじまっています。
擬宝珠橋の全長は36mで、これは復元橋として日本最長の長さとなるそうです。2019年は擬宝珠橋周辺で、2018年9月の台風で中止になった「鳥取お城まつり」の武者行列や橋と桜のライトアップなどのイベントも計画されています。また、鳥取城では、2023年の完成を目指して中ノ御門や太鼓御門でも復元に向けた発掘調査が進行中です。
【水戸城】御三家の権威を示す大手門が復元!
大手門の復元工事の様子。門は二重の櫓門で、幅約10間という大規模なものであった(水戸市教育委員会提供)
時代劇『水戸黄門』などで有名な、御三家・水戸藩の居城だった水戸城(茨城県)。廃城令後、天守代用櫓である二の丸御三階以外の建物は破却された上に、唯一残った御三階櫓も太平洋戦争中に焼失してしまったため、城を偲ぶ遺構は、移築現存する薬医門や戦災を免れた藩校・弘道館など、わずかしかありません。
水戸市では、城周辺の歴史的景観を取り戻すため、2014年から大手門、二の丸隅櫓の復元計画を進めてきました。復元は古写真などの史料や、発掘調査で得られた知見を元に往事の工法を用いて行われ、2019年秋には大手門が完成する予定となっています。
水戸市によると、大手門公開の際には記念イベントが予定されているそうです。日程などの詳細は、決まり次第市のHPや広報誌に掲載されるので、気になる人はチェックしてみてください。2020年には二の丸隅櫓も完成予定。二の丸隅櫓では、「一枚瓦城主」などの寄附金募集が2020年まで行われています。
【弘前城】新発見続々! 本丸石垣の調査成果を見に行こう
本丸石垣解体工事の様子。市は積極的に発掘調査の成果を発表する現地説明会を開いているので、石垣の調査状況を知りたい人は市のHPをチェックしてみよう(弘前市公園緑地課提供)
南部氏から独立し、弘前藩4万7000石の2代藩主となった津軽信枚(つがるのぶひら)が築いた弘前城(青森県)。江戸時代後期に造られた天守が現在も残る他、桜の名所でもあることから人気の観光スポットとなっています。
2015年、弘前城では本丸東側石垣の解体修理のため、現存天守が曳屋によって移動したことが話題となりました。天守の移動後、天守台を含む本丸東側では石垣解体作業が行われていましたが、2018年10月26日に解体が完了。工事と並行して進められている発掘調査では、元禄期に構築されたと考えられる井戸や排水遺構が検出され、市民やお城ファンの注目を集めました。
2019年以降は石垣を元通りに積み直す工事がはじまる予定で、解体工事と同様、積み直し工事も見学用展望デッキからの見学が可能となるそうです。積み直し工事中も発掘調査は継続し、出土品や新たな発見は本丸内に設けられた「石垣普請番屋」に展示されます。通常では見られない、石垣の内部を目にすることができる最後のチャンスです!
執筆・写真/かみゆ歴史編集部(小関裕香子)
ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。かみゆ歴史編集部として著書・制作物多数。