美しい玉石垣を探して1泊2日の船&バス旅!甑島の里武家屋敷跡と下甑麓武家屋敷跡へ

離島のお城に行ってみませんか? 「離島」と聞くと、アクセスや島内の移動にハードルを感じる方も多いかもしれませんが、今回ご紹介する甑島(こしきしま)は鹿児島県のターミナル、鹿児島中央駅を出発して約2時間で上陸でき、島内はコミュニティバスでリーズナブルに移動ができるのが魅力。美しい玉石垣が積み上がる武家屋敷跡を目指して、離島の城旅に出かけてみませんか?

甑島列島ってどこにあるの? 

下甑麓武家屋敷跡、玉石垣
下甑麓武家屋敷跡の玉石垣を夕陽が照らす

甑島列島は、薩摩半島の西方約30kmの東シナ海に浮かび、上甑島・中甑島・下甑島の主に3島からなっています。鹿児島中央駅から、新幹線、シャトルバス、高速船を利用して約2時間で上陸することができます。アクセスが便利な一方、8000万年前の地層から形成された断崖や巨岩など、手つかずの自然にふれあうことができ、近年注目を浴びている離島です。

見どころはたくさんありますが、今回は「城びと」読者が気になりそうな上甑島の「里武家屋敷跡」と、下甑島の「下甑麓武家屋敷跡」を中心に紹介していきます。

バスに高速船…水戸岡鋭司さんのデザインが目白押し!

水戸岡鋭司、川内駅、川内港、こしきバス
川内駅と川内港を結ぶ「こしきバス」は水戸岡鋭司さんのデザイン

まずは鹿児島中央駅から川内(せんだい)駅へ。「川内」と聞いてピンと来る戦国通の読者もいらっしゃるかもしれません。川内駅付近には、九州平定の際に豊臣秀吉が本陣を置いた泰平寺があり、島津軍と講和が成立した歴史的な場所でもあります。時間があれば川内駅周辺の散策もおすすめですが、今回は甑島を目指します。

川内駅発のシャトルバス「こしきバス」はとてもクールな車体が印象的。九州新幹線800系「つばめ」や、クルーズトレイン「ななつ星 in九州」を手がけた水戸岡鋭司さんのデザインです。川内港ターミナルも、乗船する「高速船甑島」も水戸岡さんのデザイン。水戸岡さんのファンにはたまりませんね。

気分高まり川内港を出港。ここでひとつだけ注意があります。高速船ですので船体は小型で、フェリーに比べ揺れやすくなっています。事前に天候や波の状況を確認しておき、酔いやすい方は後方の席を選んでください。心配な方は、酔い止めを事前に飲んでおくのもおすすめです。

上甑島の里武家屋敷跡と亀城跡を散策

高速船甑島、川内港、甑島
川内港と甑島を結ぶ「高速船甑島」

約50分の船旅を経て上甑島の玄関口、里港に上陸です。大きな荷物はフェリー乗り場内の観光案内所に預けることもできます(有料、8時30分〜18時30分)。里港から歩いて約500mで、あっという間に里武家屋敷跡の入口。丸い石が積み上げられた玉石垣と生け垣が整然と並ぶ美しい町並みは、国土交通省が定めた「島の宝100景」にも選ばれています。江戸時代の郷士たちが生活していた名残が感じられます。

里武家屋敷跡
里港から徒歩約500mで里武家屋敷跡にたどり着く

里武家屋敷跡、玉石垣、算木積
里武家屋敷跡で見られる玉石垣と算木積の組合せ

里武家屋敷跡近くには丘があり、亀城跡として整備されています。鎌倉時代に、小川季直(すえなお)が築城しました。地頭として甑島に入り、13代370年間も亀城を本拠として治めました。亀城跡は一の段公園として整備され、本丸跡には「戦没者慰霊の塔」が立ち、展望あずま屋からは里麓や里港を一望できます。小川季直は、なんと武藏国多西郡小川郷(現在の東京都あきるの市)から移ってきています。遠路はるばる甑島まで渡ってきたのですね。
亀城跡から南方200mの丘には鶴城跡があり、2つの城を合わせて「鶴亀城」とも呼ばれています。亀城跡から鶴城跡が見えますが、特に整備されていません。

亀城跡、公演、展望台
亀城跡は公園として整備され展望台もある

<基本情報>
里武家屋敷跡
住所:鹿児島県薩摩川内市里町里
アクセス:里港から徒歩約10分

里港から長浜港 コミュニティバスで下甑麓武家屋敷跡へ

上甑島、フェリー、断崖、下甑島
上甑島(里港)から下甑島(長浜港)へフェリー移動中に見られる断崖

里港に戻り、高速船ではなく「フェリーニューこしき」に乗船し下甑島の長浜港へ。甑島の雄大な断崖を楽しみながら約1時間30分の船旅。甲板に出て、絶壁の断崖を目に焼きつけてください。

フェリーニューこしき、長浜港、串木野港、甑島
長浜港に着いた「フェリーニューこしき」。串木野港(鹿児島県串木野市)と甑島を結んでいる

下甑島に上陸。長浜港にも観光案内所があり、ここでも荷物が預けられます(有料、7時〜19時15分)。長浜港は島の北部に位置し、下甑麓武家屋敷跡は南部の手打(てうち)浜周辺にあります。この手打という地名、源平の合戦に敗れた平家の落人が流れ着き「ここは良い所だ」と、手を打ったことから名付けられたという伝説が残ります。

下甑島は南北に長く、移動にはコミュニティバスが大活躍します。島内のほぼ全域を走っており料金は150円均一。路線によって差はありますが、1日に5~7本運行されています。

下甑麓武家屋敷跡、長浜港、コミュニティバス
長浜港からコミュニティバスで下甑麓武家屋敷跡へ向かう

長浜港停留所から約25分で手打港停留所へ。ここで降りると、「武家屋敷通り」の看板が見えてきます。入口に立つのは津口番所跡。江戸時代に海上の監視や取り締まりを行っていた場所で、宝永年間(1704〜1711)の建物を再現しています。

手打港停留所、
手打港停留所には「こしき・てうち海の駅」があり食事をしたりおみやげが購入できる

下甑麓武家屋敷通り、津口番所跡、
手打港停留所付近の下甑麓武家屋敷通り入口に立つ津口番所跡

津口番所跡から約700mにわたって、下甑麓武家屋敷通りが続きます。海岸の石を積んで整然と築かれた玉石垣は、海から吹く強風から屋敷を守るため。玉石垣ときれいに刈り込まれた植栽が見事に調和する下甑麓武家屋敷通りを進んでいくと、意外な出会いが。下甑島は歌手・森進一さんのお母さんの出身地ということもあり、「おふくろさん歌碑」があるのです。また、下甑郷土館(入場無料、9時〜16時30分、月・火曜休館)では、かつての郷士が着ていた陣羽織や、甑島特産の着物ビーダナシ、下甑島で生活したキリスト教宣教師の祭服など、下甑島の歴史や風土にふれられる展示が並んでいます。

下甑麓武家屋敷通り、おふくろさん歌碑
下甑麓武家屋敷通りに立つ「おふくろさん歌碑」。近づくと曲が流れる

甑島列島は、年間を通じて風が強いのが特徴。そのため風を流しやすい平屋で寄棟の家を建て、寄り添うように家々を密集させ、さらに周りを高い玉石垣と生け垣で囲っています。玉石垣はまさに、甑島の人々が自然と共存してきた証。そんな貴重な風景を目の当たりにできるのが、島旅ならではの醍醐味ですね。

下甑麓武家屋敷跡
下甑麓武家屋敷跡。元々は平家の落人が住みついたともいわれる。

<基本情報>
下甑麓武家屋敷跡
住所:鹿児島県薩摩川内市下甑町手打
アクセス:長浜港からコミュニティバスで約25分「手打港」停留所下車、徒歩約3分

甑島へのアクセスと島内移動のヒント

甑島への起点となるのは川内港。川内港まではJR川内駅からシャトルバスが出ています。川内駅までは九州新幹線で鹿児島中央駅から最速11分、博多駅から最速1時間14分ですので、鹿児島や福岡を起点にしてプランニングができます。上甑島または下甑島どちらかに絞るのであれば日帰りでも可能ですが、両島を回るのであれば1泊2日が現実的。宿は長浜港周辺に数軒あります(※上甑島で宿泊する場合には里港周辺に民宿やホテルがあります)。参考スケジュールは下記を参照ください。甑島は風が強いため玉石垣が発達した独特の武家屋敷が残っていますが、言い換えると風が強いので、船に乗る日の天気や波の状況には注意が必要です。

瀬尾観音三滝、甑島
瀬尾観音三滝など雄大な自然にふれられるのも甑島の魅力

島内の移動にはコミュニティバスが便利ですが、もちろんレンタカーもありますし、1人乗り電気自動車「コムス」(有料)も利用できます。今回は、里武家屋敷跡と下甑武家屋敷跡を中心に紹介しましたが、甑島内には「長目の浜」や「瀬尾観音三田滝」といった観光地のほか、「断崖クルーズ」や「ウミネコ餌付け体験」など、たくさんの楽しみ方があります。

かつて暮らした郷士と同じように、甑島の大自然と武家屋敷跡をじっくり味わってください。離島の城めぐりがやみつきになるかも知れませんよ。

<参考スケジュール>
川内駅8:00発
↓シャトルバス
川内港8:30着
川内港8:50発
↓高速船
里港(上甑島)9:40着
★里武家屋敷跡・亀城跡・鶴城跡
里港(上甑島)12:50発
↓フェリー
長浜港(下甑島)14:20着
長浜港停留所14:25発
↓コミュニティバス
手打港停留所14:50着
★下甑武家屋敷跡
手打港停留所17:30発
↓コミュニティバス
長浜港停留所17:49着
※下甑島泊
長浜港(下甑島)10:30発
↓高速船
川内港11:40着
川内港11:50発
↓シャトルバス
川内駅12:15着

<基本情報>
甑島商船株式会社
電話:高速船予約0996-41-5100、フェリー予約0996-32-6458
料金:高速船甑島片道3380円(川内港~里港・長浜港)、フェリーニューこしき片道1470円
(里港~長浜港 ※2等の場合)
※里港~長浜港は「高速船甑島」での移動も可能。
※串木野港から長浜港・里港を結ぶフェリーもあるが、その場合は2泊3日のプランニングになる。

上甑島観光案内所
住所:鹿児島県薩摩川内市里町里1619‐13
電話:09969-6-3930
時間:8時30分~18時30分
アクセス:里港ターミナル内

下甑島観光案内所
住所:鹿児島県薩摩川内市下甑町長浜913-4
電話:09969-5-1800
時間:7時~19時15分
アクセス:長浜港ターミナル内

執筆・写真/藪内成基(やぶうちしげき)
奈良県出身。30代の城愛好家。国内旅行業務取扱管理者。出版社にて旅行雑誌『ノジュール』などを編集。退職し九州の城下町に移住。観光PRやガイドの傍ら、「城と旅」をテーマに執筆・撮影。『地域人』(大正大学出版会)など。海外含め訪問城は500以上。知識ゼロで楽しめる城の情報発信を目指す。

※歴史的事実や城郭情報などは、各市町村など、自治体や城郭が発信している情報(パンフレット、自治体のWEBサイト等)を参考にしています

関連書籍・商品など