2021/07/07
都道府県のお城シリーズ 【東京都のお城】皇居にお台場、渋谷まで!おでかけ先は城だらけ!?
「城びと」サイトにはたくさんのお城の情報をお寄せいただいています。お城初心者の方から、どこのお城にまず行けばいいの?という声をいただく機会がふえてきました。日本100名城、続日本100名城を中心に、各都道府県を代表するお城をご紹介します。今回は東京都編。東京にあるお城、というと皆さんはどこのお城を思い浮かべますか? 皇居以外にどこかお城ってあったっけ? なんて思われる方も多いかもしれません。でも実は、皇居以外にも、八王子城、滝山城・・・などなど。さらに、観光スポットのお台場や渋谷、神楽坂にもお城はあるんです!日本100名城、続日本100名城を中心に、東京にある7つのお城をご紹介します。※2018年7月10日初回公開
品川台場は東京湾を望む憩いのスポット
東京都にあるお城は?
東京でお城と言われると、天守閣が残っていないためにピンと来ないかも知れません。でも日ごろから実はお城を目にしている方は多いはず。その代表格が「皇居」として知られる江戸城(千代田区)です。「皇居ラン」を楽しまれている方もいらっしゃるかと思います。江戸時代には将軍の居城であった日本最大の城郭で、日本100名城にも選ばれています。
都内のもうひとつの100名城といえば、JR中央線で西へ移動すると八王子城(八王子市)があります。北条家ゆかりの城として、保存状態のいい遺構が残り、ハイキングにも人気です。
八王子城の近くには続日本100名城の滝山城(八王子市)があります。八王子城と同じ北条家ゆかりの城ですから、八王子城と比べてみると一層楽しめますよ。
続日本100名城といえばもうひとつ、意外に思われるかもしれませんが品川台場(港区)、いわゆる「お台場」ですね。「台場」は全国に数多く残りますが、品川台場はさすがに江戸を守るために造られただけあり広大な敷地に圧倒されます。
ほかにも、渋谷や神楽坂といった人気スポットにも城跡が残り、おでかけついでに城にふれられるのです!
■江戸城(日本100名城)
目を見張るような美しい石垣が揃う江戸城
豊臣秀吉の関東平定後、徳川家康が江戸を治めるようになりました。慶長8年(1603)に征夷大将軍になると、江戸城を本格的に近世城郭へと改築開始。2代将軍・秀忠、3代将軍・家光と、3代にわたって全国の大名を動員した天下普請によって築かれました。天守は3回建てられましたが、明暦3年(1657)に起こった江戸の大半が焼けた明暦大火で焼失してからは再建されていません。現存している天守台や一部の櫓から、徳川将軍家の威光を表す大城郭を偲ぶことができます。
城跡見学だけでなく、皇居東御苑では四季折々の花々や鳥たちが目を楽しませてくれますし、三の丸尚蔵館では季節ごとに企画展が開催されており、なんと無料で見学できます。天守台から見る東京のビル群の景色も新鮮ですよ。
所在地 :東京都千代田区千代田
アクセス:JR「東京」駅および東京メトロ千代田線「大手町」駅から徒歩約5分
楽しみ方:城跡見学 公園散策 四季の花
天守台から見る都内のビル群
■八王子城(日本100名城)
八王子城は整備が行き届き遺構を見学しやすい
天正18年(1590)、豊臣秀吉が関東制圧(小田原攻め)のために攻め、わずか1日で落城しました。元々は天正12年(1584)ごろから、北条氏康の次男・氏照によって築かれ、北条氏の支城の中では最大規模の山城でした。本丸を中心とした要害地区、麓にある居館地区、外郭の防御施設から構成。広大なハイキングコースをたどりながら、石垣や堀切、曲輪跡が見学できます。
所在地 :東京都八王子市元八王子町・下恩方町・西寺方町
アクセス:JR中央本線「高尾」駅北口から西東京バス約5分「霊園前」下車、徒歩約20分
※土・日曜、祝日はJR高尾駅北口1番バスのりばより、「八王子城跡」行きが運行
楽しみ方:城跡見学 ハイキング 資料館(八王子城跡ガイダンス施設)
山頂付近にある八王子神社
■滝山城(続日本100名城)
滝山城本丸と中の丸の間は巨大な堀切で遮断されていたとされる
八王子城と同様に、北条氏照が大改修をしたため北条氏の築城術が発揮されています。永禄12年(1569)に甲斐の武田信玄が2万の軍勢で侵攻したものの、2000の兵力で滝山城は持ちこたえたとされる堅城です。その後、氏照が八王子城に本拠を移したために滝山城は廃城となります。堀や土塁などの遺構が良好に残っていますし、ARアプリを使い約450年前の滝山城の姿を疑似体験しながら、散策を楽しむこともできます。八王子城の起点JR高尾駅とJR八王子駅はJRで10分以内の距離ですので、合わせて攻略するのがおすすめです。
所在地 :東京都八王子市高月町(都立滝山公園)
アクセス:京王電鉄京王線「京王八王子」駅またはJR中央線「八王子」駅から西東京バス「ひよどり山トンネル経由戸吹」行きで約19分「滝山城址下」下車、本丸まで徒歩約15分
楽しみ方:城跡見学 ハイキング ARアプリ
イラストを活用した分かりやすい案内板
■品川台場(続日本100名城)
品川台場の内部。鍋底状の凹地に陣屋や火薬庫が設けられていた
江戸時代後期、日本近海で外国船来航事件が頻発する危機感の中、嘉永6年(1853)のペリー艦隊来航を受けて造営工事が開始されました。伊豆韮山代官・江川英龍が担当し、江戸湾防衛のため12基の台場を築造する予定でした。1年3か月の間に6基のみが完成し、結果的に戦いの舞台になることはなく明治を迎えました。その内、第三台場が台場公園として整備。近代的なビル群がぐるりと見渡せます。
所在地 :東京都港区台場1(台場公園)
アクセス:ゆりかもめ東京臨海新交通臨海線「お台場海浜公園」駅から徒歩約15分、東京臨海高速鉄道りんかい線「東京テレポート」駅から徒歩約15分など
楽しみ方:砲台跡見学 公園散策
案内板を見ると砲台の姿が浮かび上がるよう
■世田谷城 渋谷城 牛込城(意外なところで発見!)
世田谷城跡の一部とされる豪徳寺には井伊家の家紋が点在
東京にはほかにも意外なところに城跡が残っています。井伊家の菩提寺であり「招き猫」発祥の地ともいわれる豪徳寺(東京都世田谷区)は、世田谷城の主要部だったとされ、隣接する世田谷城跡が整備されています。また、渋谷駅から徒歩約10分の金王八幡宮(東京都渋谷区)は、パワースポットとして知られ、テレビや映画でも取り上げられますが、実は渋谷城があった場所。
ほかにも観光スポットとしても、グルメどころとしても知られる神楽坂一帯には戦国時代に牛込城があったとされます。神楽坂下から城跡を感じながら神楽坂を上ると日本出版クラブ会館の近くに光照寺というお寺があり、「牛込城跡」の案内板があります(境内は撮影禁止)。よく待ち合わせに使われる毘沙門天の脇には「大手門通り」という通り名が今も残っています。虎ノ門や半蔵門といった江戸城ゆかりの地名もたくさん残りますし、意外なところで城跡に出合うかも知れません。おでかけの合間にも気軽に城にふれられるのが東京の魅力です。
渋谷のパワースポット金王八幡宮は渋谷氏の居館跡だったとされる
執筆・写真/藪内成基(やぶうちしげき)
奈良県出身。30代の城愛好家。国内旅行業務取扱管理者。出版社にて旅行雑誌『ノジュール』などを編集。退職し九州の城下町に移住。観光PRやガイドの傍ら、「城と暮らし」をテーマに執筆・撮影。『地域人』(大正大学出版会)など。海外含め訪問城は500以上。知識ゼロで楽しめる城の情報発信を目指す。