超入門! お城セミナー 超入門!お城セミナー 第21回 |【構造】城内にある三角や四角の小窓って何に使うの?

初心者向けにお城の歴史・構造・鑑賞方法や、お城の用語など、ゼロからわかりやすく解説する「超入門!お城セミナー」。今回は、城内で弓や鉄砲を使用する際に重要な防御設備、狭間の解説です。

カワイイけれど攻撃的!城を守る狭間

石垣で囲まれた近世城郭の土塀に開けられた色んな形の小窓。例えば姫路城の長い白壁にはまるでアート作品のように丸・三角・四角の小窓が並んでいます。今回は、あの小窓にどんな用途があるのか探ってみましょう。

姫路城三国堀、狭間
姫路城三国堀の塀に並ぶ狭間。大きさも形も様々なこの穴は、一体何に使われていたのだろうか?

ちょっとカワイイあの小窓は、城へ攻めてくる敵を壁の内側から狙い撃ちするために開けられた、「狭間(さま)」というれっきとした軍事設備なのです。

狭間は、2種類に大別されます。縦に長い長方形のものは矢を放つための「矢狭間」、このほかのものは鉄砲用の「鉄砲狭間」となります。さらに鉄砲狭間には円形の「丸狭間」、三角形の「鎬狭間(しのぎさま)」、正方形の「箱狭間」の3種類があります。この3つの形については、使い分けがあるのかどうかわかっていません。戦に明け暮れた戦国武将たちの精神を支えた「禅」の奥義は「○△□」で表わされることがありますが、この3つすべてが並ぶ姫路城(兵庫県)の城壁は、そんな意味が込められているという説もあるとか。

続いて、狭間の高さに注目。弓は立って射るもの、鉄砲は基本的に片膝を付いて撃つものですから、高さにも違いがあるようで、「立狭間(たちざま)」「居狭間(いざま)」という区別もあります。『賤ヶ岳合戦図屏風』の羽柴秀吉軍の陣城の塀には高さの違う狭間が描かれていて、上段からは鏃(やじり)が、下段からは銃身が突き出ています。鑑賞の機会があれば、ぜひ注目してみてください。

屋外の土塀の狭間は常時ポッカリと口を開けていますが、天守や櫓・門といった建物内に設けられた狭間は、内側に竹や木の枠が、外側には開閉式の木製蓋が取り付けられているものが多いようです。ほかに、金沢城(石川県)一の門の土塀や彦根城(滋賀県)天守のように、壁土を薄く塗って塞いだタイプもあり、外側からは見えないため「隠狭間(かくしさま)」と呼ばれます。外観の美しさへの配慮もあるようですが、敵への不意打ち効果はテキメン。何もないはずの壁がいきなり突き崩されたと思ったら、そこから銃口がニュッ・・・なんとも恐ろしい仕掛けです。また、建物の格子窓も狭間として使うことが想定されていたようです。

彦根城天守内部、狭間、漆喰
 彦根城天守内部から見た狭間。内側は板で、外側は漆喰で穴がふさがれているため、外からは狭間があることは分からない

大阪城千貫櫓、狭間、大手門
大阪城千貫櫓の狭間から大手門を見る。ここから銃や弓矢を放てば門へ殺到する敵を一網打尽にできる

お城で狭間を見つけたら、立ち入り禁止の場所でなければぜひ一兵卒の気分になってのぞいてみてください。開口部が広く、外側にいくほど狭くなっているのがよくわかると思います。これは「アガキ」という技法で、身を守りつつ視界を確保する工夫。このアガキの角度によって狙う箇所がある程度限定されるので、重要な地点に複数の狭間を向けて集中射撃!ということもできるというわけです。

石垣に造られた狭間「笠石銃眼」

またとても珍しい例として、江戸城(東京都)、大阪城(大阪府)、二条城(京都府)、岡山城(岡山県)だけにある「笠石銃眼(かさいしじゅうがん)」という狭間があります。これは土塀ではなく、その下に積まれた石垣の天端石(てんばいし/石垣のいちばん上の石)を加工して鉄砲狭間としたもの。古文書内では「さま石」と書かれていて、一般に「石狭間」とも呼ばれます。

江戸城平川門、塀、銃眼
江戸城平川門の塀。石垣最上段の石に銃眼が空けられているのが分かるだろうか…?

大阪城大手門、笠石銃眼、アガキ
大阪城大手門の内側から見た笠石銃眼。しっかりとアガキがつくられ、銃眼であることが一目瞭然だ

外側から見ると、土塀と石垣のつなぎ目に銃身が通る程度の小さな四角い穴があるだけ。遠くからだとほとんど確認できません。しかし、内側に回ると、雁木(石の階段)などで足場が確保され、通常の狭間と同じくアガキによって手前が広くなった銃を構えるスペースがあります。上にあげた城に行けばたくさんの実例があるので、ぜひ安全な場所で覗いてみて下さい。通常の狭間に比べて外側の開口部がとても狭く、銃を構えたらおそらく標的は見えません。狙い澄ましてヒットさせるというよりも、撃ちまくって弾丸を雨あられと降らせるようなイメージでしょう。

近世城郭ならたいてい見ることができ、視覚的に馴染みの深い狭間。あのアートのような小窓には城を守るための工夫が凝らされていたのです。色々な城の狭間をのぞいてみると築城者が何を守りたかったかが見えてくるかもしれませんね。


執筆者/かみゆ
書籍や雑誌、ウェブ媒体の編集・執筆・制作を行う歴史コンテンツメーカー。

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