超入門! お城セミナー 第13回【構造】お城の入口を「虎口」って呼ぶのはなぜ?

初心者向けにお城の歴史・構造・鑑賞方法や、お城の用語など、ゼロからわかりやすく解説する「超入門!お城セミナー」。今回のテーマは虎口。城の出入口を守るために編み出された工夫とは?




杉山城、大手口、馬出郭
大手口から見た杉山城(埼玉県)の馬出郭

敵を侵入させないために発展を遂げた虎口

今回は、城の出入口である「虎口(こぐち)」のお話。

この虎口、昔は「小口」とも書かれていました。これは、「一度に多人数が城の出入口に侵入するのを防ぐには小さくする方がいいから、城の入口が小さくなった」という説に基づきます。字ヅラのインパクトが弱めだからか、近年ではあまり使われません。通常よく使用されるのは、同じ音でも強そうな字ヅラの「虎口」。こちらはもともと「最も激しい戦闘となる地点」を指す言葉だそう。ここから城の出入口が虎口と呼ばれるようになった、といわれます。確かに攻城戦では、城の出入口は敵が殺到して激戦になる所で、守備と攻撃の拠点でもあるため最も重要です。

一方、敵を入れたくないなら、いっそ侵入口となる虎口はない方がいいともいえます。実際、戦国時代前期までの山城跡には、調査しても虎口が見つからないことも多いとか。ではどうやって城に入ったのかというと、必要に応じてハシゴなどで出入りしたとみられています。

とはいえ、出撃口、味方兵の収容口、補給口、脱出口としても使用できる虎口は、やっぱりあった方が便利です。この矛盾をなんとかするために、虎口は城のパーツのなかで最も発展をみせた箇所だといいます。ではどんな種類の虎口があったのか、見てみましょう。

唐沢山城、喰違虎口、桝形空間、石垣
唐沢山城(栃木県)の喰違虎口。この先は枡形空間になっているのだが、石垣に阻まれて先を見通すことができなくなっている

城を守るために考えられたさまざまな虎口

まずは、「平虎口(ひらこぐち)(平入虎口)」。土塁や城壁に入口を配したシンプルなタイプで、攻撃側は虎口を突破するとそのまま城内へ直進が可能です。これでは守備側に不利ということで、虎口の奥に横一直線の土塁(蔀(しとみ))を築いたのが、「一文字土居(いちもんじどい)」。敵に突破されても、土塁によって進路と視界をさえぎることができます。

いやいやそれなら、突破される前に何とかできないか?と考えられたのが、「喰違虎口(くいちがいこぐち)」です。前後にずらした土塁や石垣に木戸や門を設置するタイプで、城に進入するためには方向転換が必要になります。守備側は、方向転換のため一旦足どめされた敵を、土塁や石垣から側面・背面攻撃できるというわけです。他に、曲輪と曲輪の高低差を利用して虎口までの進入路をスロープのようにした「坂虎口」もあり、これは山城に多かったようです。

要害山城、坂虎口
要害山城(山梨県)の主郭へとつながる坂虎口

さらに発展したタイプとして、防御力を高めるとともに味方の兵馬の出入りを見えにくくした「馬出(うまだし)」があります。堀を挟んで虎口の対岸に土塁で小さな区画を設けて、攻守の拠点にしたものです。また、殺到した敵を一網打尽にするために工夫されたのが「枡形虎口(ますがたこぐち)」です。土塁や壁・石垣で門の内か外を四角く囲って、守備側が四方から敵を攻撃することを可能にしました。この馬出と枡形虎口に関しては、またあらためてこの連載で取り上げる予定です。


執筆者/かみゆ
書籍や雑誌、ウェブ媒体の編集・執筆・制作を行う歴史コンテンツメーカー。

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