超入門! お城セミナー 第4回 【構造】「本丸」「主郭」「一の廓」の違いって何?

初心者向けにお城の歴史・構造・鑑賞方法や、お城の用語など、ゼロからわかりやすく解説する「超入門!お城セミナー」。今回のテーマは本丸。お城の本を読んでいると出てくる本丸、主郭、一の丸。これらの違い、分かりますか?





城の中心地にはさまざまな呼び方があった

城を構成するパーツのなかで、基本となる「曲輪」。「郭」や「廓」の漢字を充てていることも多いですね。すべて「くるわ」と読み、土塁や堀や石垣で囲って区画した、城内の平坦地のことです。城の内部は、地形や用途などに合わせて大きさや形がさまざまな曲輪で分けられています。例えば、山城では細長い尾根の先端は物見用の小さな曲輪になっていることが多いですし、広い場所が確保できる平地の近世城郭なら、兵を集めて待機させられる広大な曲輪があったりします。

では、城の案内マップや縄張図を見てみましょう。曲輪の名前がいろいろ書かれています。最も高い所や中心らしき所に書かれている名前は‥‥「本丸」「主郭」「一の廓」などさまざま。「一の丸」「詰丸」「本曲輪」「本城」「実城」なんて名前もあったりして、「どういう違いがあるの?」と混乱している読者も多いのでは?

観音寺城復元イラスト、巨石、石垣、曲輪、主郭
観音寺城復元イラスト。観音寺城は山頂からやや下がった場所が本丸と伝えられているが、周辺にも巨石を用いた石垣を持つ曲輪が連なっており、主郭がどこだったのかは定かではない(イラスト=香川元太郎)

これらの意味はほぼ同じで、城主の居どころや、城の中心となった最重要区画のことを指しています。石垣の近世城郭は「本丸」という呼び方が多く、現地の案内板などでもいちばん馴染み深い呼び名ですよね。この「○○丸」という呼び方は江戸時代以降に登場したようですが、その由来は、軍学上で「城は丸く作ることが理想」とされたから、という説があります。

篠山城、杉山城、坂戸城、津和野城
左上/篠山城(兵庫県篠山市)の本丸はかつて天守丸と呼ばれていた。右上/杉山城(埼玉県比企郡)の本郭。ただし、歴史上の呼称はいっさい記録がない。左下/坂戸城(新潟県南魚沼市)は山頂の主郭部分が実城と呼ばれていた。右下/津和野城(島根県鹿足郡)は津和野山の頂上部が本城と呼ばれていた

曲輪の呼び方はどのように決まるのか?

山城の場合はあまり記録が残っていないため、当時、曲輪の名前をどう呼んでいたのか不明な城がほとんどです。山城では、山頂部にあり中心的な役割を担ったであろう曲輪を「主郭」と呼ぶことが多いですが、便宜的に「Ⅰ郭」「Ⅱ郭」とローマ数字で表すこともあります。

城の構造をわかりやすくしてくれる曲輪の呼び名は、じつは統一したルールがあるわけではなく、昔から呼び慣わされてきた呼称だったり、明治以降に便宜的に付けられたものだったりさまざまなのです。城の中心となる曲輪も、「本丸」「主郭」「一の郭」とさまざまな呼び方がありますが、「そこが城の中心である(と考えられている)」という理解でよいでしょう。


執筆者/かみゆ
書籍や雑誌、ウェブ媒体の編集・執筆・制作を行う歴史コンテンツメーカー。

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