超入門! お城セミナー 第2回 【構造】「山城」と「近世城郭」の違いって何?

初心者向けにお城の歴史・構造・鑑賞方法や、お城の用語など、ゼロからわかりやすく解説する「超入門!お城セミナー」。日本のお城というと天守のあるお城を思い浮かべる人も多いかと思いますが、実は天守がないお城もあるのをご存知ですか? 今回は、お城の解説で当たり前のように出てくる「山城」と「近世城郭」について。日本のお城は大きく2種類に分けることができます!その違いとは?





自然の要塞「山城」と石垣で守られた「近世城郭」

お城のことを知ろうとするとよく目にする、「山城」と「近世城郭」という言葉。「つくりが違うんだろう」という想像はつくものの、具体的にどういうお城を指すのかいまいちわからない読者も多いのでは? 「山城」と「近世城郭」の違いをみていきましょう。

「山城」とは、その名のとおり山に築かれたお城のこと。自然の山を削り、掘り、盛り固めて、堀や土塁(区画や防御のための土手)、曲輪(区画された平坦地)などを造成したお城です。重要なのは、全体がほぼ「土」で築かれており、建物は木造の簡易なものだったため、遺構はほとんど残っていないことです。山城は、天下が統一される前、戦が日常的に起こっていた南北朝時代や戦国時代に爆発的な数が築かれ、「中世城郭」とも呼ばれます。

対して、織田信長の安土城以降、江戸時代にかけて築かれたのが、天守の建つ「近世城郭」(天守がなかったものもあります)。山城が土づくりであるのに対して、近世城郭の多くは石づくりです。高い石垣・広大な水堀・瓦葺きの建物などを備えています。山城とは違って、平地や低い丘に築かれているものも多いです。

近世城郭、権力、象徴、シンボル
近世城郭=権力の象徴と説明されるが、土の城もまたその土地のシンボルであり、城下へのアピールを目的とした(イラスト=香川元太郎)

「土づくり」から「石づくり」へ変貌した山城もある

日本全国の城跡は、なんと3〜4万といわれていますが、そのほとんどは山城です。一般的にお城として馴染みの深い天守のある近世城郭は、日本のお城の全体の数パーセント足らずの圧倒的少数派なのです。近世城郭も日本全国にたくさん残っている印象がありますが、いかに山城の数が膨大なのかがわかりますね。

「えっ!? でもこの前見た山城には石垣があったぞ!」と疑問に思う読者も多いでしょう。例えば、「天空の城」として有名になった竹田城(兵庫県朝来市)や、2016年NHK大河ドラマ『真田丸』のオープニングで使われた備中松山城(岡山県高梁市)など、石垣の山城もたくさんあります。でも、こうしたお城のほとんどは、土づくりだったものが近世に入ってから、石垣を積んで近世城郭へと改修された山城なのです。

つまり日本のお城の多くは、「山城(=中世城郭)」と「近世城郭」に大別することができますが、中には「近世城郭に生まれ変わった山城もある」と理解しておくとよいでしょう。ただし、北海道に残る「チャシ」や沖縄に残る「グスク」、中世以前に築かれた「古代山城」などは、「山城」と「近世城郭」の区分には含まれません。改めてこの連載で取り上げますので、楽しみにお待ちください。

備中松山城、天守、石垣、石垣群
天守を有する石垣づくりの山城・備中松山城。天然の岩と人口的な石垣が立体的に組み合わされた石垣群は圧巻


執筆者/かみゆ
書籍や雑誌、ウェブ媒体の編集・執筆・制作を行う歴史コンテンツメーカー。

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