2020/04/09
城の自由研究コンテスト 受賞者と保護者の方にアンケート!いつからやった?どうやった?城の自由研究
毎年、小学生・中学生を対象に(公財)日本城郭協会が募集している「城の自由研究コンテスト」。優秀作品は年末の「お城EXPO」に展示されるなど、お城ファンの間でも注目のコンテストです。今回は、2020年1月に表彰式が行われた第18回コンテストの受賞者と保護者の方にアンケートを実施。どのようにして作品をつくりあげていったのか伺いました! 今年は自分も挑戦してみたいという小学生・中学生の方は要チェック!!
第18回コンテストの表彰式レポートと入賞作品の紹介はこちら
自由研究をする上でのポイント
お城や歴史が好きだから、今年はお城をテーマとした自由研究にチャレンジしたい!と思っても、何から始めたらいい? 研究ってどうすればいいの? と思われるかもしれません。そこで最初に、「城の自由研究コンテスト」審査委員長の日本城郭協会理事・加藤理文先生による、自由研究をする上でのアドバイスをポイント別にご紹介します。
①テーマ設定
一番大切なのは、テーマ設定です。何に視点を当てて、まとめるかが大事です。過去の作品や参考書等にとらわれることなく、自分なりの着眼点を持ってテーマ設定しましょう。
②アンケートをとる場合
アンケート等をとる場合は、大変かもしれませんが、幅広い層からまんべんなく集めることです。アンケート結果が生かせるかどうかは分析次第です。目的を明確にして分析しましょう。
③まとめ方
焦点を絞って、徹底的に掘り下げると良い作品になります。その際、自分なりの考え、独創的な発想があれば、より人を引き付ける作品に仕上がります。
④作品は総合評価
作品は、レポート・模造紙・模型などをあわせた総合評価です。それぞれが個別作品として独立していることより、相互に補完し合っていることで評価は高くなります。なぜレポートだけでなく、模造紙が必要だったのか、模型が必要だったのか伝わるようにしましょう。
※研究はレポート(50ページ以内)・模造紙作品(3枚以内)・模型など単独での応募が可能。ただし模型はテーマに関するレポートを作成し添付する必要がある
テーマを思いついたきっかけは?
一番大切なのは“自分なりの着眼点を持った”「テーマ設定」。なんだかちょっと難しい気もしますね。受賞者の皆さんは、どのようなきっかけで「テーマ」を思いついたのでしょうか?
4年生から名古屋城について研究していたので。それの続きです。
⇒テーマ「尾張名古屋は城でもつ~名古屋城再建を考える~」
(4年生時のテーマ「「尾張名古屋は城でもつ」は本当か? これであなたも名古屋城博士」、5年生時のテーマ「 尾張名古屋城は石垣でもつ!!」)
夏休みに沖縄へ旅行することになり、旅行に行く前に、沖縄にはどんな城があるのだろうかとインターネットを使って調べた。調べていく中で、沖縄には世界遺産に登録されている城郭が五つもあることがわかった。狭い島国である沖縄に、これだけの数が登録されていることに興味を抱き、登録された理由と経緯を知りたくなったから
⇒テーマ「なぜ五つもの城(グスク)が世界遺産となり得たのか」
宮崎県の土の色と引っ越してきた東京の公園の土の色が違って、ツルツルだったこと。堀のツルツルと関係あるのか?と思ったこと
⇒テーマ「北条氏照の城は「縄張」がおもしろい!!~滝山城と八王子城を歩いて~」
現存天守などに行った時、ふと『なぜ狭間の高さ、大きさが違うのか。本当に射ることができるのか?』と疑問に思ったのが研究のきっかけです
⇒テーマ「矢狭間と弓矢~本当にこの狭間で射てるのか~」
学校の授業で、地域(鎌倉)について調べ、そこから探究してみようと思った。クラスメイトに身近なところから、歴史の面白さを知ってほしかった。
⇒テーマ「やはりあったぞ!!鎌倉城」
ぼくは丸岡城のように昔のままのすがたのお城や昔の人の暮らしなどがよく分かるお城が大好きです。このようなお城を昔のまま残して未来の人に見てもらいたいという願いからこのようなテーマにしました。
⇒テーマ「なぞを解き明かせ!未来に繋ぐ丸岡城」
真田丸好きがきっかけでした。テレビを観たことで、現地を調べてみたくなり、地元のウォークラリーに参加し、様々な資料を目にして、ますます調べてみたくなりました。
⇒テーマ「味原池は真田丸の三日月堀」
自分の住んでいる松山は、伊予の国と呼ばれているけれど、松山藩だったはずなのに、どうしてかなと思ったから。松山藩だったのか、伊予藩だったのか、お父さん、お母さんや、大人の人に聞いたけど、誰も知らなかったから
⇒テーマ「伊予八藩-お城とじんやあとをたずねる-」
上田城を見学し、隅欠しの遺構に興味を持ったから
⇒テーマ「上田城の鬼門除けと真田昌幸の作戦」
昨年の城の自由研究の受賞式の時、小和田先生が「鬼門」についてお話されたのが、この時やった研究に関係があったから気になり、調べようと思った
⇒テーマ「いざ行かん 大我のお城記パート2,お城と神社・鬼門へん」
日本中にたくさんのお城が様々存在するが、毎日目にする月にはお城がない。もし、まだお城がない月に、将来お城を建てるとしたら、どんな石垣をもつお城が良いのか不思議に思ったから
⇒テーマ「ムーンキャッスル」
訪れたお城などで感じた、ふとした疑問や興味から自分なりの研究が始まっていくんですね。お城に行った時や本を読んだ時、話を聞いた時に感じた疑問や興味をメモしておくとテーマのヒントになりそうです。
どうやって調べた?
アンケートを通して見えてきたのが、お城や資料館などへ行く前に本などで事前に調べて、「聞くこと」「調べたいこと」を整理してから調査していること。また、学芸員さんにお話を伺ったり、お城を訪れている人にアンケートをとったりと、積極的にいろいろな人をまきこんで幅広い意見を引き出す積極性。小・中学生なのにスゴすぎです!!
名古屋城でのアンケート。コンクリート天守、木造天守等へのアンケート。松本城・熊本城での取材。アンケートの質問を考えてお願いすることと、アンケートの集計が大変でした。
①現地を訪れる前に、インターネットや本を使って対象とする城のことを調べる ②現地のガイドさんや学芸員さんに質問する内容をまとめる ③城めぐりのコースを決める(限られた時間でまわるために)④現地に行き、疑問に思っていたことの答えを探す。歴史資料館や博物館に行く。学芸員さんやガイドさんと話をする。工夫した点は、テーマに沿ってぶれずに研究を進めたことと、城に詳しくない人が読んでも理解できるようにわかりやすくまとめたこと。
現地に行く。本やテレビで調べる。アンケートをとる。学校の先生や学芸員の方にお話を聞く。とにかくいつもアンテナをはる。
図書館、博物館、お城に行って調べました。習い事とか宿題とかじゅくとか、やらないといけないことをすませないと、お父さん、お母さんがお城につれていってくれないので、じゅくや習い事や夏休みの宿題のあいまを見つけてお城に行くのが大変でした。特に陣屋はなかなか見つけにくいところにあったので。
お城・お寺・博物館・図書館へ行きました。上田城へは、2カ月で13回行きました。イラストを工夫しました。
市立図書館の貸し出しができない本を何冊も見せてもらいました。調べたいことが載っていそうな本を取り寄せたり、買って、じっくり読み返したりしました。現地(姫路城)に行って、調べたり、資料を見られる博物館に行って確かめたりしました。予想や仮説に基づいた実証実験の試行錯誤や、その結果からわかることの考察が大変でした。写真を使って、伝わりやすさを工夫しました。
模型や実験はどうやった?
入賞者の方たちのなかには、リアルな模型を作ったり、実験をしたりした人も・・・。模型作りや実験は、いったいどうやったのでしょう?
お城に行く。市役所の文化財課、郷土資料館の学芸員、ガイドさんにお話を聞く。図書館・博物館に行く。実際に公園で実験もしてみました。
本屋で本を購入。図書館に行く。お城へ行く。弓具店の方に話を聞く。弓道部の先輩に意見を聞く。実際に実寸大の狭間を作ってみましたが、不器用なので思った通りに製作できなくて、何回も作り直すなどとても苦戦しました。
丸岡城へ行ってお城についてガイドさんや学芸員さんに説明を受けたり、丸岡城に関係のある山城なども現地調査をしました。またいろいろなお城で、見学している人にアンケートをとりました。なるべく丸岡城に近づけられるようしっくいをぬったり、本物の木を使うなど工夫しました。特にこけらぶきを作る時は、一枚一枚ていねいに貼りました。
現地と関連するお城、地元の図書館や資料館に行って、資料を集めました。本もたくさん読みました。模型作りが大変でした。実際にはもう存在しないものなので、自分なりにイメージを持ってから、地形を細かく調べ、今の地図に置きかえて作りました。
どのくらい時間がかかった?
城の自由研究コンテストの締切は9月末。夏休みだけでは時間は足りないのでは?と思って聞いてみると、意外なことに7月に入ってから研究を始めたという声も何人か。おおむね、夏休みなどまとまった時間を使える時に集中して…という人が多かったです。
なかには、3年前の5月頃から始めて、コンテストには出品しているけれども「これからも調べるので未完成です」という人や、「構想は毎日(頭の中には常にあった)」という人も。確かに、研究に終わりはないですよね。
研究作品は学校に自由研究として出してるの?
自由研究というと、夏休みの宿題というイメージがありますよね。でも、コンテストの締切は実は学校が始まってから。受賞者の皆さんは、夏休みの宿題の自由研究に、城の自由研究を提出しているのでしょうか?
まず、中学生の方は「小学校の時は、毎年校内の自由研究コンテストに出していたが、中学校ではそういった機会がないので出していない」というお話も。小学生の方は「間に合わなくて出していない…」という方から「間に合った一部(紙新聞のみ、模型のみ等)だけ提出した」という声も。もちろん「全部出した」という方もいらっしゃいました。間に合わなくて出していない人は、学校には何を自由研究で出したのだろう…と気になってしまいました(笑)。
来年は何をやってみたい?
受賞者の皆さんが、来年チャレンジしてみたいことも聞いてみました。具体的な内容も教えていただいたのですが、ネタバレになってしまうと申し訳ないので、ネタバレにならないものをご紹介! 今回の自由研究について、さらに広げたり深めてしてみたいという声もありました。
毎年、城めぐりをしながら疑問に思ったことを研究テーマにしているので、引き続き城めぐりをしていきたい。現地に行くと、必ず疑問に思うことが生まれる。
一つの城を掘り下げて研究したい。
まだ考え中です。
形を変えず、気持ちを全面に出した作品で上位を狙いたい。研究してみたいことは沢山あるので、みんなに“歴史” “城”を好きになってもらえるような作品を作りたい。
模型に挑戦したい!現地で実際に調べるようにしたい。
保護者のサポートについて知りたい
今回、アンケートをとる上で、とても気になったのが保護者の方のサポートについて。お城の自由研究は、お城に実際に訪れるなど保護者の方のサポートなくしては成り立たない部分もあります。実際のところ、どのようなサポートされているのでしょうか?
アンケート集計や分析に対してのアドバイス、文章の添削。
小学3・4年生の頃には、研究の進め方、まとめ方など、全体的に父親がしっかりサポートを行いました。小学5・6年生の頃は、子どもから相談されたことに対して父親が助言したり、母親が書き上げた文章のチェックを行いました。中学1年生では、書き上げた文章を城に詳しくない母親が読んで内容を理解できるか…というやり方でサポートしました。
毎年共通していることは、現地に連れて行くこと、話相手になること(子どもが「なぜ?」という疑問を抱いたことを見逃さない、相談にのる、共感する、こちらが感じた疑問を投げかけるなど)、レポートの印刷、製本、郵送です。
子どもが市役所の文化財課に電話するときは、マナー(聞き方や言葉づかいなど)を注意しました(電話で大人と話すことがあまりないので)。レポートや実験に使う材料を子どもが自由に発想して買えるように100円ショップに連れて行きました。また、お城めぐりに付き合って、写真を撮ってと言われたら撮影し、プリント希望があればプリントするなどサポートしました。図書館にない城の雑誌や歴史の書籍は、子どもを本屋に連れて行き、希望があれば大きい図書館に取り寄せる、城関係のテレビ番組が沢山あるので録画をしておいてあげるなどしました。
一番のサポートは、親が初めから「こうしたら、ああしたら」と口を出さないようにガマンすることです(笑)。子どものやり方は、ムダが多くて要領も悪くて「それは失敗するだろうな」と大人ならすぐわかる実験を始めてしまい、遠回りしている研究はハッキリ言って見ていると口を出してしまいたくなりますので、別の部屋などできるだけ親の視界に入らないようにしてレポートを書いてもらい、親が余計なアドバイスをしないようにしました。それが一番大変でした。
本屋さんや図書館に一緒に行く。お城に一緒に行く。インターネットの検索のサポート。
子どもの頭の中に出来上がっているものを、わかりやすく表現してあげること。「行きたい!」と言った場所に連れていってあげること。
現地調査のサポートやレポートの誤字を指摘。学術書を一緒に読みました。
お城や調べたい場所に一緒に行きました。模型作りの手伝いもしました。
お城や図書館、博物館に一緒に行く。写真を現像する。資料や本の読めない漢字を読む。文章表現・レイアウトについてのアドバイスをする。
お城へ車で2カ月に13回行きました。ほか、写真を現像するなど。
千葉から姫路市への現地調査を2日間行ったので、一緒について行ったり、宿泊先の手配をしたりしました。
他にも「部屋が土だらけの泥だらけになっていた!!」なんてエピソードも。
いかがでしょうか。自分も研究してみたい!と思った方も多いのでは? 「城の自由研究コンテスト」は毎年開催されていて、今年も夏に作品を募集予定です。お城好きな小学生・中学生の皆さま、今年の夏はぜひお城の自由研究にチャレンジしてみませんか?
また、コンテスト応募資格のない大人の方も、研究したくなったらぜひチャレンジしてみては? お城を訪れたり調べる楽しさが広がると思います。
執筆・撮影:城びと編集部
アンケート協力:鵜飼航さん、土橋優里さん、五十嵐智洋さん、五十嵐充輝さん、室伏好誠さん、津志田楽さん、大野遙真さん、森田康生さん、村口陽音さん、佐々木拓真さん、室伏大我さん、金子瑛さん、保護者のみなさま ありがとうございました!