都道府県のお城シリーズ 【埼玉県のお城】関東をめぐる激戦地こその戦国の城!

「城びと」サイトにはたくさんのお城の情報をお寄せいただいています。お城初心者の方から、どこのお城にまず行けばいいの?という声をいただく機会がふえてきました。日本100名城、続日本100名城を中心に、各都道府県を代表するお城をご紹介します。今回は埼玉県編。「小江戸」川越のイメージが強いかと思いますが、かつては武蔵国とよばれ、足利家、上杉家、北条家、武田家など、有名大名たちがしのぎを削ったため、数多くの城跡が残ります。また、城めぐりをしていると古墳に出会えるのも埼玉県ならではの楽しみです。日本100名城と続日本100名城を中心に、埼玉県にある7城をご紹介します。※2018年7月18日初回公開



忍城、甲冑隊
人気の忍城おもてなし甲冑隊(メンバーは変更有り)

埼玉県にあるお城は?

埼玉県を代表する日本100名城といえば川越城(川越市)。蔵造りの町並みと共に、珍しい本丸御殿が見学できます。恋愛成就のスポットとして大人気の川越氷川神社へのお参りもお忘れなく。

戦国時代らしい城郭が味わえる日本100名城といえば鉢形城(寄居町)。北条家を代表する城郭です。鉢形城の最寄りになるのは寄居駅。JR八高線・秩父鉄道線・東武東上線が走ります。

この東武東上線沿線には訪ねてみたい城がほかにも残っています。武蔵嵐山駅からは続日本100名城の2つ杉山城と菅谷城(共に嵐山町)。

そして忘れてはいけないのが映画『のぼうの城』の舞台となった続日本100名城の忍城(行田市)。埼玉県北部、利根川を越えれば群馬県という位置にあります。

戦国時代の城郭から観光地としておなじみの川越まで、バラエティー豊かな埼玉の城めぐり。そして城めぐりをしていると古墳の存在にも気づかされます。『のぼうの城』で石田三成が布陣した丸墓山古墳をはじめ、数多くの古墳が城の近くにありますので、一緒に探訪されてみてはいかがでしょうか。

■川越城(日本100名城)

川越城、本丸御殿
川越城本丸御殿の内部には広間など6部屋が残る

江戸時代、江戸城を中心に「大手(表)」は小田原城、「搦手(裏)」は川越城といわれるほど重要視されました。そのため、徳川家の譜代大名が代々城主となり、「知恵伊豆」とよばれた松平信綱が藩主となると、城も城下町も拡張改修されました。「小江戸」とよばれる城下町の面影を今も色濃く残しています。日本では数少ない本丸御殿が現存し、内部は見学できます。蔵造りの町並みには食べ歩きしたくなるお店や、歴史感じる建築が楽しめるほか、思わず引き込まれるお菓子横丁もおすすめ。縁結びの神社として有名な川越氷川神社も訪ねたいですね。

所在地 :埼玉県川越市郭町2-13-1
アクセス:東武東上線・JR「川越」駅および西武新宿線「本川越」駅から東武バス「神明町車庫」行きで「札の辻」停留所下車、徒歩約8分
楽しみ方:資料館(川越城本丸御殿) 城下町散策 食べ歩き パワースポットめぐり


川越城、蔵造り、町並み
蔵造りの町並みが残り観光客でにぎわう

■鉢形城(日本100名城)

鉢形城、城郭、保存
鉢形城では土を活用した城郭が良好に保存されている

豊臣秀吉の小田原攻めの際に豊臣方の大軍に囲まれ、城主の北条氏邦が明け渡した後、廃城になりました。近年の発掘調査により、曲輪や土塁などが整備され、戦国時代の平山城として高い評価を得ています。スタンプ設置場所でもある鉢形城歴史館では、地形模型や復元された中世の櫓門の見学が可能。また、荒川と深沢川に挟まれた断崖絶壁の上に築かれており、「天然の要害」という言葉がぴったりな地形を楽しむこともできます。

所在地 :埼玉県大里郡寄居町鉢形2496-2
アクセス:JR八高線・秩父鉄道線・東武東上線「寄居」駅下車、徒歩約25分。
寄居駅からイーグルバス「和紙の里」行き「鉢形城歴史館前」停留所下車、徒歩約5分。
楽しみ方:城跡見学 資料館(鉢形城歴史館) 地形(河岸段丘)


鉢形城、水堀、荒川
天然の水堀代わりの荒川

■杉山城(続日本100名城)

杉山城、尾根
杉山城は狭い尾根を巧みに利用している

埼玉県北部の比企郡は「国指定史跡 比企郡城館群」として良質な城跡が複数残っています。東武東上線でアクセスがしやすく、武蔵嵐山駅から徒歩圏内に杉山城と菅谷城があります。共に続日本100名城ですので、ハイキングを楽しみながら一緒にめぐってはいかがでしょうか?

巧みな縄張りが残る杉山城は、小高い丘陵上に高低差を利用しながら約10の曲輪が階段状に配置されています。土塁や堀で造られた塁線は多く曲げられており、防御に適した工夫がわかります。最高峰の技術が駆使された、土づくりの城を味わってみてください。

所在地 :埼玉県比企郡嵐山町杉山
アクセス:東武東上線「武蔵嵐山」駅から徒歩約35分
楽しみ方:城跡見学 ハイキング 土の城


杉山城、菅谷館、東武東上線、武蔵嵐山駅
杉山城・菅谷館へのアクセスの起点となる東武東上線武蔵嵐山駅

■菅谷館(続日本100名城)

菅谷館、ニノ郭、曲輪群
菅谷館二ノ郭。うっそうとした木々の中に曲輪群がある

JR東武東上線武蔵嵐山駅を最寄りとするのは杉山城と同じですが、駅からの方向が逆となるので注意が必要です。鎌倉時代の有力御家人であった畠山重忠の居館と伝わり、鎌倉街道の要衝として栄えましたが、元久2年(1205)、執権北条氏に謀反の嫌疑をかけられ討たれました。戦国時代に拡大・改修整備がされた遺構が、後年の開発による破損をほとんど受けておらず、城の構造が大変よく分かる貴重な存在です。また、貴重といえば菅谷館付近は日本の国蝶・オオムラサキの出現スポット。隣接するオオムラサキの森では、例年6月中旬から8月下旬にかけて観察できますよ。

所在地 :埼玉県比企郡嵐山町菅谷
アクセス:東武東上線「武蔵嵐山」駅から徒歩約15分
楽しみ方:城跡見学 資料館(埼玉県立嵐山史跡の博物館) 自然(オオムラサキ)


菅谷館、オオムラサキ、観察
オオムラサキの観察スポットとしても知られる

■忍城(続日本100名城)

忍城、本丸跡、御三階櫓
忍城本丸跡に復興された御三階櫓

映画『のぼうの城』で一層有名になりました。成田氏が城主として、戦国時代には数々の侵攻を退け難攻不落の城として知られました。天正18年(1590)の小田原攻めでは、石田三成率いる大軍に水攻めをされるものの落城しませんでした。この成田氏の勇猛果敢な歴史を後世につたえるべく結成された「忍城おもてなし甲冑隊」のパフォーマンスも要チェック。演舞や記念撮影が楽しめます。

また、石田三成が陣を張った丸墓山古墳が、忍城から約3kmの距離ですのでぜひお訪ねください。日本最大級の円墳といわれますし、隣には銅剣の出土で教科書にも登場する稲荷山古墳もありますよ!

所在地 :埼玉県行田市本丸17-23(行田市郷土博物館)
アクセス:秩父鉄道「行田市」駅から徒歩約15分、JR高崎線「吹上」駅から朝日バス(前谷経由)で約15分「忍城」下車すぐ
楽しみ方:天守見学(模擬天守) 城下町散策 おもてなし甲冑隊


忍城、石田三成、丸墓山古墳
石田三成が布陣した丸墓山古墳

■小倉城 松山城(残る「比企郡城館群」も攻略!)

小倉城、嵐山渓谷、バーベキュー場
小倉城と菅谷館の間にある嵐山渓谷バーベキュー場

続日本100名城の杉山城、菅谷館と共に「比企郡城館群」として残る小倉城(ときがわ町・嵐山町・小川町)と松山城(埼玉県東松山市)もおすすめです。小倉城は、菅谷館からさらに西へ4kmほど歩いた場所にあります。杉山城とはますます距離が離れますので、無理は禁物です。付近には景勝地として有名な嵐山渓谷があります。渓谷近くにあり、自然地形を利用した山城です。

松山城は東武東上線東松山駅から東へ約2km、東松山駅から路線バス(川越観光自動車)も利用できます。丘陵に築かれた北武蔵地方屈指の平山城。古墳時代終末期の横穴墓群である吉見百穴(国指定史跡)とも近接しています。穴だらけのミステリアスな史跡。埼玉県の城めぐりをしいていると、古墳にもたくさん遭遇します。

松山城、吉見百穴
吉見百穴(左)と松山城跡(右)

執筆・写真/藪内成基(やぶうちしげき)
奈良県出身。30代の城愛好家。国内旅行業務取扱管理者。出版社にて旅行雑誌『ノジュール』などを編集。退職し九州の城下町に移住。観光PRやガイドの傍ら、「城と暮らし」をテーマに執筆・撮影。『地域人』(大正大学出版会)など。海外含め訪問城は500以上。知識ゼロで楽しめる城の情報発信を目指す。