超入門! お城セミナー 超入門! お城セミナー 第6回 | 【鑑賞】:よく聞く「縄張」って何のこと?

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江戸時代に幕府に届け出るために作成された「正保城絵図」(画像は掛川城)。城の構造=「縄張」が描かれている(国立公文書館蔵)

「縄張」とは城のグランドプランのこと

お城の本や解説を読んでいると、しばしば「縄張」「縄張り」という用語にぶつかります。なんとなく「城のつくりのことを指すのかな」と推測し、そのまま読み進めている人も多いはず。動物のテリトリーを示す「縄張」と意味は同じなの?と疑問に思っている人もいるでしょう。

日本人は古来、自分が所有する土地の周囲に縄を張って境界線を定め、所有権を示していました。このことが、「動物の縄張」とか「縄張意識」というときの「縄張」の語源です。土地がわかりやすい例ですが、所有権が及ぶ範囲、または主張や仲間意識が及ぶ範囲を指しています。

お城の「縄張」という場合、やや意味が異なります。城用語で「縄張」とは、城の設計のことを指します。本丸をどこに置くか、二の丸・三の丸などの曲輪はどう配置するか、防御のための堀や土塁はどうめぐらせるかなど、城の全体像の設計(=グランドプラン)が「縄張」です。モノや範囲ではなく、城を設計すること、そして城の構造そのものを意味しているわけです。

語源は城をつくる際、築城予定地に縄を張り、城の範囲や建物の位置を示したことに由来します。更地のあちこちに杭を立ててその間に縄を張り、「城の範囲はここからここまでだぞぉ」とか、「本丸はこの大きさにしよー」とかやっていたわけです。そうだとすると、由来となるイメージは一般用語の「縄張」とあまり変わらないですね。

縄張を楽しむためには山城に行くべし!

さて、「縄張」に近いお城用語に「縄張図」があります。縄張図とは、現状の遺構から曲輪や防御施設の配置を読みとり、城の構造をわかりやすく示した図面のこと。実際に城歩きをする際、縄張図を参照することで、遺構の位置や規模を確認することができます。

下記のような縄張図を描く技術が発達したのは明治以降のことで、1970年代頃から縄張図の作成が盛んになりました。目にしている縄張図はそんなに古いものではないのです。縄張図を手に入れるためには、それが掲載されている書籍を探すのが手っ取り早い。最近では、城の立て看板に縄張図が掲載されるケースも増えています。

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杉山城の縄張図。現在の城跡を調査して描かれている。はじめは難しく感じるが、実際の遺構と見比べながら歩くと見方がわかってくる(嵐山町教育委員会提供)

この縄張図、天守のあるような近世城郭に行くときよりも、山城や土の城を歩くときのほうが必要とされます。その理由は、近世城郭よりも山城のほうが遺構の位置や城の構造がわかりにくいからということもありますが、もっと本質的には、山城のほうが「縄張」がきちんと残っているからです。近世城郭では、公園にするために埋め立てられたりコンクリート化していたりして、城の設計・構造としての「縄張」は失われていることが多いです。一方で、山城は開発の手などが入っていない限り、「縄張」が完存されているのです。

つまり、「縄張=城の構造を楽しむためには山城に行くべし!」ということになります。とかく難しいと思われがちな山城ですが、次第に「縄張が見られる(分かる)」ようになり、「この城の縄張は技巧的だなぁ」「ここの縄張ってこの前見た●●城に似てるよね」なんて言葉が自然に口にでるようになったら、もうあなたはお城通です!(それまでに、おそらく10城以上の山城を制覇する必要がありますが)

なお、縄張図の見方については、連載「ナワバリスト西股さんと行く! ビギナー女子の山城歩き」で今後解説していきますので、こちらもご愛顧ください。また、「縄張」と「縄張り」というように、表記の違いを疑問に持たれる方もいますが、これはどちらが正解というわけではありません。このページでは「日本城郭検定統一用語集」を参考に、「縄張」を採用しました(『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』[学研プラス]より)。また一般用語のほうも、『広辞苑』では「縄張」と「り」は送っていませんでした。


執筆・写真/かみゆ歴史編集部
「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。手がける主なジャンルは日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなど歴史全般。主な城関連の編集制作物に『日本の山城100名城』『超入門「山城」の見方・歩き方』(ともに洋泉社)、『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』『完全詳解 山城ガイド』(ともに学研プラス)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、『カラー図解 城の攻め方・つくり方』(宝島社)、「廃城をゆく」シリーズ(イカロス出版)など。

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